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課外活動は大学教育の一環です

文・狩野 充(Kanou,Mitsunori)
連絡調整会議実施案策定
ワーキング・グループ座長
平成12年度学生生活委員会委員長
文学部教授



 広島大学では、ここ二、三年来、「課外活動」について検討がなされています。平成十一年三月、課外活動団体部長・顧問教官会議が、まず「提言 課外活動の重要性とその活性化に向けて―『人間基礎力』を備えた学生の育成のために」を学長に提出しました。そこでは我々が社会の一員として生きていくために、忍耐力、意思伝達力、折衝力、協調性、決断力、適応力、行動力、リーダーシップなどの「人間基礎力」を具えることが必須であり、課外活動は人間基礎力の育成のために格好の教育的機会であるので、大学がその重要性を再認識し、それを大学教育の一環として位置づけ、課外活動の活性化のために組織的に取り組む必要があるといっています。そのために、
一.課外活動の準正課化を図ること
二.学生参加の促進を図ること
三.施設・組織の整備に努めること
四.部長・顧問教官の活動評価を行うこと
の四項目の具体的改革案を提起しています。
 平成十二年三月には、連絡調整会議の下に設置された課外活動に関するワーキング・グループが、この「提言」を受けて「広島大学課外活動に関するワーキング・グループの答申」を連絡調整会議へ提出しました。それは「T 学生以外の全大学構成員へのはたらきかけ、U 学生および学生団体へのはたらきかけ」に分けて働きかけの対象を示し、「提言」の内容をより具体化する方向で検討を進めています。課外活動活性化のための理念を広島大学の構成員全員が共有し、関係委員会の積極的な支持があって始めて、具体的な共通基準や規定づくりに着手しうること、関係部署間の調整の必要性があることを述べ、「課外活動は大学教育の一環である」という原則づくりから課外活動に対する全構成員の「共通認識と共通基準」の形成、「規定づくり」から「組織づくり」という方向を示し、諸事項について具体的な検討の第一歩を踏み出すようにと促しています。
 恰も好し、平成十二年六月には、文部省(当時)の「大学における学生生活の充実に関する調査研究会」が、「大学における学生生活の充実方策について(報告)―学生の立場に立った大学づくりを目指して―」を取りまとめました。それは、従来、正課教育を補完するものとして考えられてきた正課外教育の意義を捉え直し、そのあり方について積極的に見直す必要があることを強調しています。
 以上のような経緯を踏まえて、我々実施案策定ワーキング・グループでは、「答申」から具体的な一歩を踏み出すべく、「広島大学課外活動の活性化のための実施案」について、昨年来議論を積み重ねてきました。その結果、広島大学の教職員への働きかけとして、まず「課外活動に対する大学としての基本的な態度の確認と徹底」がなされねばならないこととなりました。広島大学では、平成十二年七月十八日に開かれた第四回評議会において「課外活動は大学教育の一環である」という主旨の確認がなされています。各部局にあっては、教授会等での評議会報告を通して、この主旨が周知されているはずですが、このたび、その周知の徹底及び教職員の課外活動に対する意識改革を図るために、『広大フォーラム』にこの一文を寄せることとなりました。広島大学の教職員は、上記の「人間基礎力」の涵養のためには、課外活動も必要であり、正課教育と同等に重視されねばならないという意識を持ち、自己改革をしなくてはなりません。課外活動は一部の学生の趣味、暇つぶし、学生時代の楽しき思い出作り等々のこれまでの意識をきれいに拭い去り、その意義や役割などを十分に理解して、学生が課外活動に参加することは、通常の授業と何ら異なることはないのであって、積極的に取り組まなくてはならないのだと、広島大学の教職員個々人は意識を変えなくてはならないと思います。



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