自ら学び、自らの道を探し出して!

広島大学長 原田 康夫


 皆さん、ご入学おめでとうございます。二十一世紀初の入学生である皆さんは、一人ひとりが二十一世紀をデザインすることになります。言い換えれば、それぞれが歴史を創りだす歴史上の人物となるということです。これまで歴史は、ごく一部の限られた支配者層によって形づくられ、個人は時の流れのなかに埋められてきました。しかし、個人の時代が始まり、これからはすべての人が時代の主人公となるのではないかと思います。即ち、IT革命後の高度情報社会にあっては、個人の発信する情報が瞬時に世界を駆け巡り、その意識が共有され集合体となった時、社会を動かす力となるのです。
 これまでの皆さんは、与えられた知識を記憶することに多くの時間を費やしてこられたと思いますが、これからの広島大学での生活では、自分が何を求め何をすべきであるかを自らに問う時間が与えられています。大学で自ら学び、自らの道を探しだすことが、これからの長い道のりを乗り越え、悔いのない人生を全うするための礎となるでしょう。
 皆さんの中には、これまでただ受験という目標に向かっていたために、必ずしも希望する道に向かっていないのではないかと不安を持っている人があるかも知れません。しかし皆さん、まだ大丈夫です。少し時間がかかるかもしれませんが、大学生活のうちに、じっくりと自らの道を求め、目標を立てるのです。そのために広島大学では、自らの視野を広げよく考え、物事を判断する能力を養うための教養的教育を充実し、提供しています。
 また、今世紀は異文化融合の世紀となります。深く異文化に接するためには、外国語を意欲的に学び、それをマスターすることが不可欠となるでしょう。広島大学には六十カ国から来た約八百名の留学生がいます。彼らとの交流によって異文化についての理解を深め、真の国際交流を実践することができます。すでにヨーロッパではEU連合が始まり、通貨の統一が進みつつあります。「戦争のない世界と世紀」の理念の基に、現在の加盟十五カ国が最終的にはヨーロッパ全体に及ぶことが期待されています。EU連合の次はアジア連合の時代となるでしょう。そのためにも、欧米の言語だけではなくアジアの言語を学び、近隣諸国の事情を直接理解することが大切です。
 また、広島大学は、二十一世紀が必要とする高度専門職業人や研究者の養成のために大学院を整備充実しています。広い視野に立って物事を考え、氾濫する情報に惑わされることなく、的確に判断する力を養い、専門性を高め、高度職業人や研究者となることも目指していただきたいと思います。
 何がしたいのか目標が定まれば、その方向に向かって志を高く持ち、地球大ロマン主義ともいうべき気宇壮大な夢を胸に抱き、自信をもって我が道を進んでください。そして、人類のため世界のために役立つ個人となるべく、自らを律し努力を続けていくことができれば、それこそが地球を守り世界平和に資する二十一世紀人としての責務をはたすことになると思うのです。
 皆さんの広島大学入学を心から歓迎し、私のお祝いの言葉といたします。誠におめでとうございます。
 
 



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