自著を語る

『歯科医院で使う薬の安心マニュアル』

著者/土肥敏博・池田正弘・小島碩蔵(編者)
(B5版,168ページ)
4,000円(本体)
1999年/医歯薬出版


薬と情報

 病院や保険薬局で薬を受け取るときに、薬の効能書きが一緒に手渡される。一九九七年薬剤師法が改正され、患者への服薬指導が制度化されて薬に関する情報提供は格段に進歩した。しかし、膨大な情報をいかに適切に提供するか、医療現場の対応はまだまだこれからである。薬物を正しく使用したにもかかわらず副作用、有害作用の発生件数は驚くほど多い。カナダでの調査では、薬の副作用による死者数は心臓病や脳血管障害による死者数に匹敵すると報告されている。情報の不足は適切な薬物療法を妨げ、副作用の兆候を見逃すことにつながる。かといって、過剰な情報は不安と混乱を招くことになる。有効な薬物療法のためには、投薬サイドと患者間のきめ細かい情報のやりとりが必要である。本書はそのような要望に少しでも寄与できればと編纂された。

構成
 第一編では、薬本来の効果だけでなく、副作用がおこるメカニズム、その兆候、予防、起こったときの対応などについて簡潔にまとめた。また、薬と飲食物の相互作用など日常生活とのかかわりについても述べた。第二編では実際に使用されている薬を網羅し、用途、使用法、注意点が一目瞭然となるようにした。第三編では、高齢者の約八○%が慢性疾患を有している現状をふまえ、疾患別に解説した。第四〜五編では小児および妊婦への投薬における悩ましい問題についての対応を記した。巻末に、薬の簡単な説明文をコピーして渡せる付録を設けた。
 歯科医師がチェアーサイドに置き、診療の合間に短時間で確認できる内容である。同時に患者にも情報提供できるよう難解な学術用語は避け、一口コラムではトピックスなどをふんだんに取り入れ、読み物としても面白いものとした。
 幸いにも本書は刊行以来現場で使用されており、また国外で翻訳され、多少なりとも役立っているのは幸甚である。




プロフィール
(どひ・としひろ)
☆一九四四年和歌山県那賀郡貴志川町生まれ
☆一九六七年大阪大学薬学部応用薬学専攻修士課程修了(薬学博士)
☆一九九一年広島大学歯学部教授
☆専門分野:歯科薬理学。特に神経薬理学、炎症薬理学
☆著書:『歯科薬理学 第四版』(共編著、一九九七、医歯薬出版)、『先端医療シリーズ 歯科医学二 歯周病』(共著、先端医療技術研究所、二○○○)、『Platelet-Activating Factor and Related Lipid Mediators 2 Roles in Health and Disease』(共著、Plenum Press NY、一九九六)他
☆趣味:マラソン、トライアスロン



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