留学生の眼(82)




日本のいいところ

文・ 陸 恵梅 (ルウ・フィメイ)
医学系研究科 博士課程三年
(上海市出身)



 私は日本に来て今年でもう四年です。日本の医学は世界をリードしています。私は中国で医学部を卒業したので、日本で医療技術を勉強して医学博士を取るのが私の夢でした。一九九九年四月にやっと医学系研究科に入学しました。毎日とても忙しいのですが、楽しく仕事をしています。
 この四年間でいろいろな日本人と交流ができました。その中で一番印象深かったことは、日本人は非常に親切だということです。これは多くの外国人が想像していた日本人のイメージとは異なっていました。私が経験した多くの出来事のうち、いくつかをここに紹介します。
 昨年夏のある日、私と主人が友達を送って家に帰る途中、狭い道で、後輪が道端の畑に滑り落ちました。雨が降ったばかりの畑は、水がいっぱい溜っていました。エンジンを何回かけても、友達を数人集めて押してもらっても、車はびくともしませんでした。その時は気持ちがいらいらして、どうしようかと困っていた時に、タクシーが一台通りかかりました。タクシーの運転手は私たちから事情を聞きながら、自分の車のトランクから道具を取り出し、私たちの車とタクシーを繋げて、私たちの車を引っ張り上げてくれました。そして、運転手は何も言わずに去っていきました。私と主人は、タクシーが見えなくなるまで見送り、自分の車に戻りました。日本人はなんて親切なのだろうと心から感動しました。
 また、日本は非常に住みやすい国だと思います。私が一番感じることは交通機関の便利さです。日本で新幹線や、特急、在来線などの交通手段を使って、出かけるのはほんとに便利です。私の友達は西条(広島県東広島市)に住んでいますが、毎日西条から岡山へ通勤していました。はじめて聞いた時はびっくりしました。中国ではそんなに遠いと、一週間一回の通勤でも難しく、毎日の通勤はまずできないだろうと思います。
 電車やバスは、時刻表通り正確に来ますし、出かける時に時刻表を持っていけば、乗り換えも簡単です。「青春18切符」を買って、時刻表を持って、広島から東京まで三千円で行けると友達から聞きました。それは私にとっては驚くべきことであり、大変素晴らしいことだと思いました。中国でそんなに正確に電車や、バスが来ることはありません。ですから遠くへ行きたいときに、途中で乗り換えが必要な場合にはホテルに泊まらなければなりません。もちろん急ぐときには飛行機に乗るしかありません。それは日本と比べたら非常に不便です。今、中国は国内の交通状態を変えなければならないと考えていて、北京から上海まで高速道路を建設する予定です。いろいろな所に高速道路を建設して、数年後には中国の交通は日本と同様に便利になると私たちは期待しています。
 日本では商品の包装も素晴らしいと思います。百円程度の安い物から、数万円もする物まで全部綺麗に包装して、お土産なら、もっと綺麗にしてくれます。消費者に対し便利さを考えてくれています。例えば、ほとんどの商品ははさみを使わなくても開けられます。時々開け口のない商品を手にし、よく見ると、日本製ではありませんでした。中国では、お土産を買うのが非常に難しいのです。たしかに良い物はたくさんあるのですが、いい包装のお土産はなかなか見つかりません。
 日本人は仕事に夢中で、毎日朝早くから夜遅くまで、土曜や日曜でも休まず、仕事をしています。この理由を日本人の友達に聞いたら、別に仕事が好きなだけですと答えてくれました。他の事より、仕事が一番重要だと考えている日本人は多いようです。よく考えてみると、これは日本の土地が狭くて、資源が少なくても(中国と比べて)、日本が急速に発展した要因の一つだと思いました。中国と日本は地理的には近いのですが、経済的には中国はまだ発展途上国です。日本のような先進国になるために、日本の長所を見習って、努力していかなければなりません。私自身も留学中に学んだあらゆる知識や技術を活用して、母国の人たちに医療面で貢献するとともに研究のレベル向上に役立つことができればと思っています。
 最後に、日本人は優しい環境を作ることが一番大切だと感じているようです。日本の町は綺麗です。木や花などをどこでも目にすることができます。ほとんど住宅の庭の中にも木や季節の花を植えています。日本は緑が豊かで、四季折々の変化が素晴らしい国です。自然は一度壊れたら、元に戻すには大変な時間や労力がかかります。自然はお金で買うことはできません。中国でも一人ひとりが、美しい自然を大切に守り育てていかなければならないと思います。



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