工学部
精神的な自立を目指して

工学部長 佐々木 博司

 工学部入学おめでとうございます。これまでの努力やご家族からの経済的・精神的援助のたまものと思います。入学の喜びを十分に噛みしめるとともに、周囲への感謝の念を忘れないようにしてください。
 大学は自発的に学ぶ場所ですから、高校までと違って自分である程度どのように勉強するか計画を立てる必要があります。チューターがいろいろと相談に乗ってはくれますが、手取り足取りは面倒を見てくれません。分からないことは、自分から積極的に尋ねて対処する態度が必要です。
 希望に燃えて入学して一カ月過ぎた頃、いわゆる五月病になる学生がでてきます。入学後の生活環境の劇的な変化などの要因もあるでしょうが、最大の原因は、激しい受験競争の下で大学への合格自体が目的となってしまい、入学後の目標がはっきりしていないことにあります。
 本来、大学は勉強するための場所です。当然、工学部に入学した大多数の人は将来高度専門技術者に、また一部の人は研究者として身を立てようと志していると思います。これからの四年間、大学で何を学ぶかを真剣に考えて、実りある学生生活を送ってくださるよう切望します。熟慮の上、適性がないと悟ったら、転学部、転類などの制度を利用して、別の道へ進むことも必要です。
 日本はエネルギー資源も鉱物資源もなく、一億二千万人という人口が唯一の資源です。日本の生きる道は、競争力のある高度な工業製品を開発、製作し続けることであり、工学部の卒業生の善し悪しが日本の将来を左右すると言っても過言ではありません。各自、それぞれの専門分野の基礎力を十分養成して立派な技術者になるとともに、他分野の人たちとも積極的に交流できる精神構造になって欲しいと思います。
 受験生活を乗り切って入学したいま、色々なことにチャレンジしてください。不可能を可能にするのが若者の特権です。これからの大学生活において、しっかり勉強するとともに、良い友達をたくさん作り、人間としての幅を広げるよう努力してもらうことを切に望みます。

自分であることの「価値」

平成十三年三月第四類建築学課程卒業 柿本 晋太朗


筆者右から2人目
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから、この広島大学において自由な学生生活が始まることになります。勉強も十割、遊ぶことも十割の割合で、これからの四年間を存分に楽しんでください。その楽しい四年間が卒業後も続くかどうかは、大学生活の過ごし方次第です。ここでは、数えきれないほど、多くの人と出会うことができます。その四年間を費やして、心から「親友」と呼べるべき人を見つけてください。その人たちが自分を新しい方向に導いてくれるはずです。しかし、導かれるには自分自身が誰かを導けるほど、または導けないまでも、その人の人生に多少の影響を与えられるだけの存在でなければなりません。どのようにしたら、自分に人を導けるだけの「価値」が発現するかを求めてください。大学を卒業するときに、自分の周りにどれだけの「親友」がいるのかが、四年間の学生生活の「価値」に相応するはずです。
自由な時間

第三類化学工学課程四年 黒瀬 啓介

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 この四月から広島大学の大学生として新しい人生を歩み始めるわけですが、大学は高校や中学とは違い、本当に自由な時間が多いです。この自由な時間には、二つの意味があると思います。一つは、大学生の生活における時間が自由であることで、もう一つは、人生の道を選択できる時間が自由にあるということだと思います。普通は前者の方が先行しがちですが、後者の方の自由な時間について皆さん各個人で考えてみてはどうでしょうか。四年間という本当に短い期間を、何も考えずに過ごしてしまうのはもったいないと思います。だからこそ、自分にとっての時間を大切に過ごすことが重要なことだと思います。
 この四年間が皆さんにとって、実りのある時間になることを願います。




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