先端物質科学研究科
チャレンジ精神を大切に!

先端物質科学研究科長 山西 正道

 今年も新しい大学院生を迎える時期になりました。先端物質科学研究科(以下、先端研と略称する)への入学、心より歓迎します。今、我が国は大きな変革の時にさしかかっています。大学も例外ではなく、否それ以上に大きな変革を迎えようとしています。幸い、先端研は平成十年に門出した新しい研究科なので、こうした変革に適合しうる教官陣で体制を整えた形になっているものと自負しています。二十一世紀の最重要分野である情報通信技術とバイオテクノロジーの基礎から応用までを有機的にカバーできるように教育・研究体制を打ち立てたつもりです。教官陣は、学生と一体になって新しいことにチャレンジしようとしています。具体例をあげれば、先端研には教授職とベンチャー企業の重役を兼務する教官や、博士後期課程の学生であって、なおかつ自身で設立したベンチャー企業の社長である学生さんもいます。この詳細は、この記事が印刷される頃には、先端研のホームページに掲載されているはずです。
 チャレンジ精神をもって勉強、研究に打ち込んでください。諸君の明るい未来のために。
21世紀の新入生諸君へ!

量子物質科学専攻長 横山 新

 量子論が誕生したのは、今から約百年前のことです。プランクが熱放射理論にエネルギー量子の概念を導入したのが始まりでした。それから一世紀の間に、量子論は固体物理学を発展させ、やがてトランジスタが発明され、集積回路が生まれました。半導体レーザやLSIなどの開発に、量子論は今や不可欠な理論です。
 ところで、最近のLSIの進歩には目覚しいものがあります。近い将来、自動通訳機が実現されるでしょう。人工知能LSIをもつロボットが、人間に代わって面倒な作業をしてくれる日も遠い未来ではなくなりました。
 しかし今、半導体の世界では、大きな変化が起きています。素子のサイズがものすごく小さくなった結果、電子の粒子としての性質よりも、波としての性質が強く現れる領域へとさしかかりつつあります。このような素子の開発には、新しい材料や微細加工技術の開発と同時に、ますます量子力学の重要性が増してくると思われます。
 人工知能、情報革命などによって、今、社会は大きく変わろうとしています。大学制度もここ数年の間に大きく変わります。百年後は、いったいどんな社会になっているのでしょうか。すばらしい社会を実現するために、大きな夢をもって、勉学に取り組むと同時に、よき友人を作り、悔いのない学生生活を送って欲しいと思います。

有意義な大学院生活を共に!

分子生命機能科学専攻長 西尾 尚道

 分子生命機能科学専攻への入学おめでとうございます。皆さんはこれまで狭い研究室で、時には廊下で、一年間卒業研究に励むとともに、久しぶりに猛烈に勉強して見事に入学されました。それぞれが大きな夢と希望を持っておられることと思います。  これから少なくとも二年間、講義と修論研究のバランスを取りながら有意義で実りのある大学院生活を送られると思いますが、どうぞ卒論の延長と思わないでください。学部授業では、体系化された基礎分野の知識を習得されたとはいえ、受け身であったと思います。大学院授業は、より高度で、必ずしも体系化されていない先端的なものがあります。主体的に積極的に参加されることを望んでいます。  研究面でも、卒論は結果の出やすいテーマが多いと思いますが、大学院では、結果を予測できないような未知のテーマ設定が多いと思います。その中で、時には挫折感を味わうこともありますが、壁を乗り越えた時の達成感も味わえます。その経験が真の実力となり、社会に出られるときの大きな自信と力になります。  十月からは待望の新研究棟での授業と研究開始となります。新しい器に新鮮な中味をそそぎ込もうではありませんか。



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