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教養的教育・総合科目
「職業選択と自己実現」
を通して考える
進路・就職問題
文・田中 秀利
(Tanaka, Hidetoshi)
学生就職センター教授
学生就職センターが開設された平成十年から開講している通称・就職講義は今年度から「職業選択と自己実現」と名称を変更しました。前期受講者は東広島・東千田の両地区で二一〇名(昨年比倍増)で八割が二年生です。早期に生き方や職業観を考え、学生生活を充実しようとする学生が増加しています。
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一 授業と進路・就職問題の関連は?
卒業後の進路には、学問・研究の継続、企業就職、公務員・教員、資格試験による職業への就職が考えられます。生き方や価値観が多様化し、職業の選択は個性化しています。企業も生き残りを賭けて、必要な人材を必要な時期に厳選採用し、労働市場の流動化も加速しています。
「就職問題」は、企業への就職に留まりません。大学の独立行政法人化や公務員制度改革の動きを見ても、初等〜高等教育の教職や国家・地方公務員も、変化・競争の中で自分の生き方を問うことが求められています。
授業ではこうした状況の中で、今、学生がなすべきことは何か、を考えます。
二 授業の主題は?
自分の人生を決めるのは誰でもない自分自身。だったら自分でデザインしよう――これが主題です。構成は (1)自己探求 (2)外部環境としての社会や企業の探索、(3)それらを織り込んだ物語づくり、です(シラバス参照)。
採用試験で「五年後、十年後の姿」を問う企業が目立ちます。環境が不透明なのになぜ自分が描けるのかと疑問を呈する人は環境に生きる人。環境を生きると考えたらどうでしょうか。すると、生きる自分が起点になり、何ができるか、何がしたいか、どんな人生にしたいか―それをどんな形で表現するのか、と問い始めます。職業選択は表現のひとつの形。会社選びも、生き方の表現です。企業も、自分の生き方が語れる学生を求めています。
三 授業の進め方は?
講義と演習で構成し、「自問自答」と「他者との比較学習」で自己理解を深めます 。「自己理解をしっかりして就職活動に臨め」―多くの先輩も、後輩へこうアドバイスしています。
他者と比較しながら、自分の相対的位置や強み・弱みを知ることも、競争原理が働く状況では欠かせません。
現実吟味をし、直面するショックを乗り越えるのは、極めて辛いプロセスです。これが克服できると、自信に溢れた自己表現が可能になります。
四 社会や企業は何を求めているか?
様々な表現が見られますが、整理すると、専門性、論理的思考力、コミュニケーション能力といえるでしょう。専門性は専攻で異なり、その他は、「頭と心の働き」といえます。これらにビジョンや意欲が加わり、総合的な問題・課題解決能力として発揮されることになります。平たく言えば、「たくましく生きる力」です。どの世代、どの職業でも共通に求められています。
五 学生生活充実のためには?
学生生活も生き方の表現です。その中に、価値観や発揮された能力・潜在的能力が表れます。多くの企業が、何に打ち込んだか、なぜか、何を学んだか、と問うのはそれらを知るためです。
行動が伴わないビジョンは単なる夢。ビジョンもなくただ動くのは時間の浪費。進路はどうするのか、どんな形で職業につくのか、どう生きたいのか。本分である勉学を軸に、多様な事柄を、どう織り成すか。―そう自らに問いつつ、目標を立て、早期に着手しましょう。行動する自分の姿が確認できると、学生生活は一段と充実するでしょう。
六 最後にひとこと
家族や友人に語れる「自分」があるか。その自分を表現し伝えることができるか。授業やゼミで「頭と心」が働いているか。――そう問うところから始めることをおすすめします。
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