平成十三年三月二十四日、午後三時二十八分ごろ発生した芸予地震(M6・4(気象庁))は、西日本の広い範囲に強い揺れをもたらし、広島県南西部では最大震度6弱に達する地域もありました。この地震は、南海トラフから沈み込むフィリピン海プレート(スラブ)の地下六十nの内部で、東西方向の引っ張りの力によって南北方向の断層が西にすべり下がるように動いたため発生した正断層型の地震と考えられており、日本列島周辺で数多く発生する活断層起源の内陸直下型の地震や海溝沿いに発生するプレート境界型の巨大地震とは異なるタイプの地震でした。
この地震が発生した瀬戸内海中西部は、歴史時代に大きな地震が繰り返し発生した場所で、近年でも一九○五年の「芸予地震」(M7・2)や一九四九年のM6・2の地震が起こっており、専門家の間ではいつ大きな地震が起こってもおかしくないと考えられていました。
今回の地震は、一九○五年の「芸予地震」より規模が少し小さく、震源地域が東にずれていたため、広島市や呉市での被害が、防災関係者の被害想定を大きく下回ったことは不幸中の幸いであったと言えます。
(大学院文学研究科教授 中田 高)
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