退任ごあいさつ
原田 康夫









 本年五月二十日をもって、八年間の学長職を終えさせていただきました。皆様の御支援と御協力により、無事大任を終えることができましたことは、生涯最大の喜びであります。
 本当に皆様ありがとうございました。
 平成五年五月に学長就任の時、私は東広島市への統合移転の早期完了を決意し、これを宣言いたしました。
 おかげさまで、総合科学部移転の時には長靴で入らないと入れなかったキャンパスは、今、見事にパークユニバーシティーとしての形態を整え、四季折々の花が咲く美しいキャンパスへと変貌いたしました。
 あれだけ広々としたキャンパスでも、もう既に余地のない程、建物が建ち並びました。八年間の在任中に大きな建物だけ数えても、三十七の建物が広島大学全キャンパスに建ち、また、建ちつつあります。
 この間、大学構成員の皆さんだけでなく、文部省(現文部科学省)、その他の官庁、政治家の皆様、同窓会、財界及び地元自治体の皆様等々の御協力が得られ、統合移転という大事業に取り組みました。四半世紀にもわたる年月を費やした統合移転も、こうして一気に完成し、東広島キャンパスの整備も終わり、1,111本の桜も植えられ、文部省文教施設部より日本一整備されたキャンパスということで、文教施設部賞もいただきました。
 ハードの面はこれで日本一早く完了しましたが、ソフトである教職員の意識の改革のために、毎年二百人近くの先生方を対象に安浦のグリーンピアで、一泊二日の教養的教育研修会(FD)を行ってまいりました。これも五年間続き、先生方が一堂に会し、各学部入り交じっての研修会によく参加してくださり、当面する諸問題について、深夜に及ぶ討議を重ねてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいでございます。一方、職員の皆さんには、二年前より新たにSDを起こして職員としてのマネージメントと意識の改革について研修を深めてきているところであります。

5月17日 退任式にて
 このように、ハード、ソフト共に皆様と研究実施を重ねてきましたが、大学院重点化、部局化の波が押し寄せ、各学部の皆様に大変ご苦労をおかけしました。幸い、先端物質科学研究科に始まり、理学部、文学部、教育学部、工学部がこれを完了し、今、医歯薬系研究科、生物圏科学研究科の部局化構想が進んでいます。近い将来、広島大学は全ての分野を網羅する大学院研究科を有する大学院大学になるものと思います。
 その上、我が大学には最も大切な教養的教育の場である総合科学部があります。他大学では平成三年の大学設置基準大綱化の際に、全ての大学が教養部を解体いたしました。大学における最初の自由化が、このような形で全国国立大学で起こったことは、文部行政最大の過ちで、今、各大学とも、もう一度作るに作れず困っているところであります。総合科学部は今こそ教養的教育は我々にお任せあれと、誇りを持って本気で教育に専念していただきたいと思います。総合科学部で研究指向の先生はどの研究科に移られてもよく、五十五歳以上で教養的教育を情熱を持ってやろうという先生には総合科学部へ移ってもらい、独立行政法人となった暁には、この方々を対象に定年も延長できるシステムを作れば、教養的教育及び研究深化の大学として日本有数の大学、世界に発信できる大学、地域に開かれた大学として、世間の信用が得られるものと思います。
 来るべき独立行政法人に対しても、私は既に多くの手を打ってきました。特に、この度、先端物質科学研究科を中心としたプロジェクトが、文部科学省の科学研究費補助金の中核的研究拠点(COE)形成プログラムに認可されましたが、これは中四国の大学では初めてのことです。  また、株式会社サタケの佐竹覺代表より、広島大学支援財団(財団法人広島大学後援会)を作っていただき、また、今回創立五〇周年記念事業の一環として学士会館が竣工して、更に千席の規模を誇る講堂にも建設予算の半分に及ぶ寄附を佐竹利子代表より頂くことができました。これを「サタケメモリアルホール」と名付け、去る五月八日に起工式を行い、私の八年間の集大成ができたと思っております。
 最後に、改めて皆様に心から感謝申し上げますと共に、広島大学の更なる発展を心からお祈りして、私の退任のあいさつといたします。




広大フォーラム33期1号 目次に戻る