『デンチャー ライニング』
浜田泰三,村田比呂司 著
6,200円(本体)
2001年/デンタルダイヤモンド社

 義歯床の材料は昔から木床、プラスチック床、金属床と変化はあれ、いずれも硬質でしたが、ここ十年の目覚ましい進歩は軟質の義歯床用材料の開発です。もっともISOでもその規格を現在制定中であるくらいですから、製品の数は多く、どれが一番よいのか判断に困るほどです。日本はこの分野ではISO規格の基準となるラウンドロビンテストを我々が担当したり、国内メーカーの製品開発も世界をリードしているといえます。しかしこの軟質材料に対しての受け入れには国民性が反映していて国によって差が大きいようです。このような背景のもと、ちょうど十年前に「義歯の裏装」を単行本として出版して以来、この十年間の進歩を詳しく収録しました。基礎編では、いまだ不明のこともありますが、主にレオロジー的観点から材料の評価を加え、臨床編ではいろいろな応用症例を網羅しました。さらにユーザーの便を考え、現在入手可能な製品群を分類して、一覧表としました。 
(はまだ・たいぞう  歯学部教授)
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『国際環境法』
水上千之,西井正弘,
臼杵知史 編著
3,000円(本体)
2001年/有信堂高文社

 私がこの本の出版を考えたのは、今から四〜五年前のことです。当時、地球環境問題はますます重要な問題になっていました。しかし、国際環境法の分野についてのまとまった本が日本にはなかったため、そうした本の必要性を感じていた私は、西井正弘氏(京都大学)、臼杵知史氏(北海道大学。現在、明治学院大学)と相談し、『国際環境法』と題する本を出すことにしました。同時に、出版社の有信堂に話をもちかけ、承諾を得ました。執筆陣には、西井、臼杵両氏を通じて、高村ゆかり氏(静岡大学)、加藤信行氏(北海学園大学)、道垣内正人氏(東京大学)、石橋可奈美氏(香川大学)、中川淳司氏(東京大学)に入ってもらいました。これらの諸氏の積極的協力でできあがったこの本は、国際環境法の分野での数少ないまとまった本であり、この分野での研究の今後の発展に寄与することを期待しています。
(みずかみ・ちゆき  法学部教授)
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『20世紀の建築思想 −キューブからカオスへ』
杉本俊多 著
2,800円(本体)
1998年/鹿島出版会

 二十世紀は過去となり、早々に二十世紀の建築の形とその思想の歴史を論理的に整理したのがこの本です。私は近代の建築が約百二十年の周期をもって、ある一定のロジックで変化していると主張してきました。建築の形は単純さと複雑さの間を行き来しており、二十世紀には抽象的なキューブからカオス的な形へと変遷しました。そして今はちょうどカオスから単純さへという逆転が起こる位相にあります。現代の世界の先端にある建築は、一方に巨大な装飾品のような複雑な形を見せ、他方で白い立方体のガラス箱となり、両極化しているのをご存知でしょうか。
 一見、単なる流行のようでも、そこには実はかなり奥深い人間の心理現象ないしバイオリズムのようなものが隠されています。また私はこの現象が決して建築だけのものではないと思っており、このところ「複雑系」の科学が世界を席巻したことにも、同じ背景があると思っています。
(すぎもと・としまさ  大学院工学研究科教授)
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『ロシア経済史研究』
冨岡庄一 著
7,000円(本体)
1998年/有斐閣
 本書は二十年余りにわたる研究をまとめたものです。研究を始めた頃は、「ソ連」の時代で、「ロシア」と言えば帝政ロシアを意味することが多いでした。拙著の「ロシア」も、帝政期を対象としています。「ソ連」の時代に、一九一七年の社会主義革命によって否定された帝政期の経済や政治を研究する場合、矛盾・問題点を専ら摘出することに主な力点が置かれているという印象を、当時の私は持ちました。そこで、十九世紀後半〜二十世紀初頭のロシア経済が、様々な問題(時期によって異なるであろう)を抱えつつも、実際にどのように機能していたのかについて、できるだけ客観的・体系的に把握したいと思って、この間、研究を続けてきました。筆者の構想は、どれだけ果たし得たでしょうか。最終的には読者の判断を待たねばなりません。
(とみおか・しょういち  経済学部教授)


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