国公私「トップ30」
広島大学副学長 山西 正道
平成十三年六月、文部科学省より法人化に向かっての大学(国立大学)の構造改革の方針(俗にいう遠山プラン)が提示されました。その方針は、(一)国立大学の再編・統合(二)民間的発想の経営手法の導入(三)第三者評価による競争原理の導入、の三本の柱からなっています。このうち第三の柱を具体化するものとして、”国公私「トップ30」を世界水準に育成する”ことが謳われています。当初の表現では、国公私立を通じて、上位30大学を選定し、これらの大学に重点的に資金配分をした上で、”世界最高水準の大学を育成する計画”と見受けられました。その後、八月末に文部科学省から提示された案では、以下に示すような十分野に分け、各分野に該当する各大学の大学院博士課程専攻(あるいは複数専攻を組み合わせたもの)を審査して、トップ30として位置付けることとなりました。その際、全体計画、分野構成、評価の視点、経費の使途に関して、原案が提示されましたが、大学改革連絡会での討議および予算折衝の結果を踏まえて、その後、原案にはかなりの修正が加えられました。この間、広島大学として「トップ30選定に関する要望と質問」をまとめ、九月二十六日には直接文部科学省に出向いて大学の意向を伝え、選定に当たっての疑問点を質問しました。この件に関しては、部局長会議ならびに評議会で要望、質問と答えの内容を報告しましたので、教職員の皆様は既に御存知の事と思います。その後、さらに変更・修正が加えられ、十一月十六日に現時点で最新と考えられる案が我々の手に入りました。ただし、内容に関しては今後も流動的であると受けとめる必要があります。
以下、最新のプログラム案の概要を示します。
「世界最高水準の大学づくりプログラム」の骨格(案)
一 全体計画(予算額の確定により変更もあり得る)
学問分野を十分野に分け、第一段階として、二年計画で十分野をカバー。初年度は五分野を対象とし、各分野十〜三十件(平均二十件)程度(年間一〜五億円程度の支援)を選定。対象機関には、五年間継続して経費を配分。(二年目に中間評価を行い、一部入替え。五年度に事後評価。六年目に入替え。)第一段階の実施状況も踏まえながら、第二段階では分野の区分見直しや経費の充実等を検討。平成十四年度予定予算額、二一一億円。
二 分野構成
人文、社会科学から自然科学までの学問分野を下記の十分野に構成。分野をまたがるものについても適切な配慮。申請に当たっては、各大学がどの分野での審査を希望するかを申告。一大学から(複合的な専攻の場合は一専攻から)複数の分野に申請することも可。一つの申請が複数の分野にまたがることも可。一大学から同一分野に複数専攻等を組み合わせて申請することも、複数の申請をすることも可。
※細分野は各分野構成のイメージのために例示しているものであり、これらに限定する趣旨ではありません。(細分野の例示もさらに検討。)
分 野 | 細 分 野(例示) |
---|---|
生命科学 | バイオサイエンス、生物学、医用工学・生体工学、農学、薬学 等 |
医学系 | 医学、歯学、看護学、保健学 等 |
数学、物理学 | 数学、物理学 等 |
化学、地球科学 | 化学、地球科学 等 |
情報・電気・電子 | 情報科学、電気通信工学 等 |
機械・材料 | 機械工学、システム工学、材料科学、金属工学、繊維工学 等 |
土木・建築、 その他工学 |
土木工学、建築工学、プロセス工学 等 |
人文科学 | 文学、史学、哲学、心理学、教育学、演劇、語学、芸術 等 |
社会科学 | 法学、政治学、経済学、経営学、社会学、総合政策 等 |
学際・その他 | 環境科学、生活科学、エネルギー科学、国際関係 等 |
三 評価の視点
(一)教育研究活動実績についての客観的な評価指標(二)当該大学の将来構想及びその実現のための計画(本経費の措置により、どのように世界最高水準の成果を目指すのか等)が考えられます。
客観的な評価指標として考えられるものの例(※分野によって異なるものであり、具体的には、新たに組織される審査委員会において検討。)は、研究成果の発表状況及びその水準、所属する教員の研究水準、教員等の流動性、競争的資金等の獲得状況、産業界や地方公共団体等との連携、学生に対する教育の状況、大学全体の運営及び教育活性化の状況。
(注)一.評価に当たっては、以下も活用。(1)大学評価・学位授与機構が調査・収集したデータ等や評価手法に関する研究成果。(2)民間機関等が行う評価結果。(3)国内外のレフェリーによる評価や専攻修了者の意見等。
(注)二.組織としての過去の実績のみでなく、将来の発展可能性についても評価できるよう配慮。
(注)三.評価基準及び評価結果は公開。
四 経費の使途
評価に基づいて選定された専攻等に、当該組織の計画に基づき、必要な教育研究費や人件費、設備費などをできるだけ使途を限定せずに重点的に措置(年度当たり一〜五億円程度)されます。使途として、例えば、世界トップレベルの研究者の招聘に要する経費、大学院博士課程の学生の教育に必要な経費、最先端研究を推進するために必要な設備の購入等に要する経費などが考えられます。
五 審査スケジュール
平成十四年一月各大学に公募要項の提示、平成十四年三月各大学からの申請締切、平成十四年四月審査委員会発足、平成十四年七月頃採択専攻の決定、配分。
以上に述べた「トップ30」に、広島大学の専攻がいくつ採用されるかは、今後の当大学の発展にとって極めて重要な意味を持っております。可能な限り多くの専攻が採用されることを念頭において、現在、評価委員会と大学運営戦略会議におかれた研究計画ワーキング・グループの共同作業の形で教育研究活動の実績調査を実施中です。今後、調査結果をもとにして、「トップ30」候補専攻(あるいは複数専攻を組み合わせたもの)の選定作業に入る予定にしております。