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歯学研究科歯学系専攻の 平成13年度

大学院教育研究拠点形成支援経費について

文・丹根 一夫
(Tanne,Kazuo)
大学院歯学研究科長

 歯学研究科歯学系専攻は、かねてより大学院教育研究拠点形成支援経費の申請を行ってきましたが、今年七月に実施された文部科学省の選定委員会の議を経て、八月に文部科学省高等教育局大学課より、平成十三年度の配分対象となる専攻としての内示を受けました。本件に関しては、すでに九月十一日の部局長会議で牟田学長から報告されたところですが、正式に経費の示達(全体で九千七百万円)がありましたので、フォーラムであらためて報告させていただきます。
 本経費は、文部科学省の施策として平成十二年度から始められたもので、広島大学では初めてのことです。また、関連する歯科医学分野では、平成十二年度に東京医科歯科大学医歯学総合研究科口腔機能構築学専攻がこれに選ばれており、当該研究分野では全国で二番目の快挙となりました。さらにこの経費は、現在、大きな話題となっています「トップ30」の予算に移行すると言われていますので、今回、選定された意味の大きさをかみしめるとともに、次なる選定にも入れるようにさらに努力を重ねていく所存です。
 歯学研究科では、ここ二〜三年様々な改組・改革に取り組み、教育面では、平成十二年度の研究科改組(歯学系一専攻への改組)に合わせて、すべての教官の授業科目とその内容を見直し、これをシラバスの形にして学生に提示しました。また、専門分野の教育に先行して生命倫理学、基礎生物学、医療統計学など将来の教育者・研究者に必須となる前専門的知識を修得させるとともに、特定の分野に偏重する傾向のあった専門教育内容を、より幅広いものにするために、複数教官による講義・実習を積極的に実施させることにより、多面的教育指導体制を確立しました。さらに、一般学生に加えて、社会人やおおむね六十歳前後の方を積極的に受け入れるための、昼夜開講教育コース(フェニックス入試)を設定し、歯科医療人や社会の要求に合わせたリカレント教育を推進し、地域の高等教育機関としての使命を果たす努力を重ねてきました。
 一方、研究面では、専攻の下にある五分野ごとに、学生の研究課題に応じた研究体制を形成し、さらに、講座を越えた戦略的研究プロジェクトを随時募集し、研究体制の確立・整備に努めてきました。また、平成七年度より教官、大学院生の研究発表実績を業績年報の形で毎年調査・公表するとともに、すべての教官を対象とした任期制を制定し、各指導教官ならびに学生の意識改革を促してきました。このような活動の成果として、本研究科教官の科学研究費補助金の採択率や論文生産係数は、他の歯科医学研究機関と比べ、極めて優れた実績を残せるようになりました。学生に対しては、在学中に優れた研究実績を上げた者を、リサーチアシスタント(RA)に任用する制度を設け、さらなる実績の向上に資するよう取り組み、加えて、学部同窓会の支援を仰ぎ、若手研究者、特に大学院生について先進的研究を推進することを目的として、優れた研究業績を挙げた者に学術奨励賞を与える制度を設けています。
 これらの一連の改組・改革の取り組みの結果、本研究科の学生数はここ数年定員を充足し、本年度は研究科設置以来、最大の三十八名(定員三十名)の学生を受け入れました。最近の傾向として、論文博士にかわって課程博士が大部分を占めるようになり、ほとんどの学生が所定の年限で学位を授与されていることが特筆されます。
 このような多面的な実績が評価されて、今回の選定があったものと考えています。また、これらの成果はすべての教官のこれまでの努力が結実したことによるものであり、今後さらなる精進に努めたいと思います。

歯学部中央研究室に設置の大型機器
写真:歯学部中央研究室に設置の大型機器 (バイオマテリアル表面解析システムの一部)

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