発明・特許紹介


背高あわだち草の知恵をもらった太陽光発電

文・馬場 榮一
(Baba, Eiichi)
大学情報サービス室 教授



螺旋状に配置した太陽電池パネル
(写真/イームル工業株式会社提供)
発明の名称: 太陽光エネルギー吸収装置
発明権者: 馬場榮一、(株)西日本流体技研
特許番号: 特願平〇八―二八一四九八




 秋口には、生物生産学部の農場周辺に黄色い花の背高あわだち草が繁茂します。その勢いの強さに関心を持ち、近寄って観察してみました。葉っぱが中心の茎の周りに、見事に螺旋状に下から上に配列し、上下の葉が重なり合わないようにして、太陽光を精一杯吸収しているではありませんか。所狭しと群生するこの植物のたくましい光合成の知恵にヒントを得ました。土地の狭い我が国の事情に合った、太陽光エネルギー吸収手段となると考えました。従来は、太陽電池などの太陽光エネルギー吸収装置は、屋根に固定され、季節や時間と共に変化する太陽光照射に対して必ずしも最大限にエネルギーを吸収しているものではありません。屋根の上では高温になりやすく、発電効率が低下します。また、大きな電力を得るためには広い面積も必要とします。
そこで、省スペースで、太陽光をより多く吸収するように、吸収装置を立体的に、しかも螺旋状に下から上に配置することにしました。太陽電池パネルの発電効率を一%上げるにも、メーカーでは、莫大な研究開発費を投じています。ところが、配置を平面から立体にすることで、設置面積あたりの発電量を数十%向上することができます。このアイデアは、太陽電池に限らず、直接に太陽光を光ファイバーで集めて、室内照明に使う場合にも利用できます。この発明の実現には、色々な分野の研究が残されています。写真は設置面積を一定にして、平面配置に比べ二・五倍のパネルを立体配置し、約三十%の発電量増加を達成した例を示しています。


広大フォーラム33期4号 目次に戻る