公務員
 今年の公務員採用試験では、広島大学全体として国家T種十一名、国家U種百二十六名が合格(既卒者を含む)しました。一方、教員を除いた地方公務員採用試験結果についても、かなりの合格者がでているとみられます。そこで、今年の公務員採用試験に合格された六名の皆さんに、六名の後輩たちから質問をしてもらいました。
座談会の風景
司会(広報委員):それでは先ず皆さんにこれだけは後輩諸君に是非言っておきたいことを披露して下さい。
A:自分の志望分野では、参考書も、情報、資料もありませんでした。大事なことは、できるだけ早い時期に自分の志望する職種・分野を決めることです。(出)
A:地方公務員試験には失敗しました。国家公務員試験の場合には、試験区分によって勉強の仕方が変わってきます。だから自分はどの区分で受けるか、受験科目は何か、難易度はどうか等に基づいて、受験の準備をする必要があります。(須)
A:国家公務員試験では、合格後の採用を決定づけるのは面接試験だと思います。そこでは自分の意見をきちんと相手に伝え、且つ相手のいうことに耳を傾けることが大事です。(足)
A:学部三年生の時に、神戸で阪神・淡路大震災にあった時に全国から多くの方々がボランテイアで駆け付けて下さり、自分も彼等の道案内をしました。その時、将来は自分も大勢の人々の役に立てる仕事につこうと思い国家公務員になろうと決心しました。(森)
A:面接試験の時にも自分に自信を持って頑張ることと、更に日頃から自分を高める努力をすることが必要です。(中)
A:自分の所属する学部の性格上、専門職で受験するにはハンデイが大きいので、行政職で受けました。(遠)
司会:それでは後輩の皆さんから質問をどうぞ。

 −国家公務員試験と地方公務員試験では、勉強の仕方が違うのですか?

A:一般教養試験はそれ程違いませんが、専門職ではかなり違ってくるので、それに向けた準備が必要です。分野・区分が同じであれば、国家・地方の両方の試験を受けた方がよいと思います。(足)
A:行政職なら試験科目はほぼ同じです。(中)
A:一般的には、地方公務員の方が広く浅く勉強した方がよいと思います。専門職の方は国家公務員の方がかなり難しいです。後者の合格者をみると、大学院生の方が多いことは、このことを裏付けるかもしれません。(須)
 −当初製造業を志望していましたが、公務員に変更しようとすれば、時期的にはいつ頃がよいですか?

A:普段から新聞をよく読むなどして幅広い知識を身につけていれば、三月から準備しても間に合います。長い時間かけてだらだらやるよりは、集中して勉強した方がよいと思います。(森)
A:年明けには、本格的に勉強を開始した方がいいでしょう。重要なことは、”何故公務員なのか?””公務員になって何をやりたいか?”をよく考えておくことです。十一月ぐらいから始め、集中して、能率よくやることがいいと思います。(足)
A:勉強を始める時期はそれ程重要ではありません。大切なことは、専門性を高め、論理的に考え且つ意見を述べることができるようにしておくことです。自分の場合には、学部時代に培った知識・勉強が大いに役立ったと思います。(須)

 −公務員試験をめざしてまだ日が浅いのですが、どうやって情報を集めたらよいのですか?

A:国家公務員の場合には、例えば人事院が作成した「中国地方の官庁ガイド」、各省庁の作成したパンフレットとか、地方公務員の場合にも同様の資料があります。大学の学生就職センターにもいろいろ用意されています。(中)

 −特に技術系公務員の場合、情報量が少ないのでどうやって集めるのですか?

A:学生就職センターなどで、過去問を調べたり、各官庁のホームページの検索などにより、自分の希望する分野・部署にどのような人(先輩であろうとなかろうと)がいるかみつけて、その人に連絡を取ったらいいと思います。(須)

 −面接試験では、どのような点に注意すべきですか?

A:自己PRや志望理由も大切ですが、それは五分程度で終わってしまいます。重要なのは、その後のいわば”雑談”で、面接官はここでのやりとりを通して、その人間をよく見ていると思います。そのためにも日頃から新聞や本をよく読むなどして幅広い知識・教養を身につけておくことが大切です。(森)
A:きちんとした話のやり取りができるかどうかが重要です。”圧迫面接”というのがよくあって、これは、例えばhあなたの場合なら必ずしもうちにこなくてもよいのでは?””よそを受けた方がよいのでは?”というものです。これに対しても即対応できないといけません。(足)
A:自分の言葉で志望理由・動機を述べることが重要です。また、提出する書類に趣味など(私の場合は和太鼓)面接官の目を引くようなことを書いておくのも得策です。(中)

 −自分は今公務員試験を受けるかどうか迷っています。仮に採用された場合、自分には不本意な部署に回されることはないのですか?

A:地方公務員の行政職だと、いろいろな部署に回されます。(中)
A:官庁の作成したパンフレットやホームページを見たり、官庁訪問で直接聞いてみたらどうでしょうか。(須)

司会:今日は公務員採用試験に合格した皆さんからいろいろ有益でかつ激励づけるお話を伺うことができました。これから公務員を目指そうとする後に続く皆さんにとっても、就職指導にあたる教職員にとっても得ることが多々あったことと思います。今から準備を始めたら充分間に合うという熱いメッセージのもと、皆さん是非頑張って下さい。本日は、誠にありがとうございました。
座談会に出席した公務員試験合格者: 質問に答えていただいた学生の皆さん
遠藤雅也さん(総4、沼津市役所行政)
中村晴香さん(文4、国家U種行政中国[海難審判庁])
足立文玄さん(工研M2、国家T種理工T[国土交通省])
須藤祥一さん(理研M2、国家T種理工W[財務省税関])
出口実歩さん(生物圏研M2、広島県林業)
森井一成さん(理研D3、国家U種物理)

写真:左より中村さん、森井さん、出口さん、遠藤さん、須藤さん、足立さん
県庁の執務風景
『求められる学生像』
広島県人事委員会事務局長
新 井 卓 夫
(1969年 政経学部卒)
<写真:県庁の執務風景

 21世紀の開始とともに、これまでの国、地方を通ずる行政の組織・制度の在り方、行政と国民との関係等を抜本的に見直し、新たな行政システムが構築されつつあります。今後は地方分権も進み、地方自治体が自らの責任と判断で個性を生かした政策を立案し、実行していくこととなります。
 このため、公務員についても、多様な能力をもつ色々なタイプの人材を必要とするとともに、急速な社会変化に対応するために、迅速な意思決定と強固な実行力が求められます。今までの役所は、住民からの税金を使って仕事をしている関係から、失敗を恐れるがため、とかく前例踏襲の事なかれ主義になりがちでした。
 しかし、これからの公務員は、従来の枠組みにとらわれず、既存のシステムを積極的に壊していくだけの気概が是非とも必要です。こうした柔軟な思考と失敗を恐れないタフな精神力をもつ人こそが、今の公務員には求められていると考えます。

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