国際協力
 国際協力分野の仕事は大変多様です。ここでは、ODAとNGOの現場で働くお二人のOBとOGから、メッセージをいただきました。この他に、広島大学のお隣にあり、日ごろから親しくさせていただいている、JICA中国センター所長の駒沢さんからも、国際協力の第一線で働くにあたっての心構えを寄稿していただきました。将来この分野で貢献したいという高い志と情熱に燃える皆さん、これらのアドバイスを是非参考にしてください。

モロッコのプロジェクトを訪ねて
『JICAに就職しての印象は・・・』

国際協力事業団鉱工業開発協力部二課
岩瀬 誠
(2000年 国際協力研究科 博士課程前期修了)

 私は、経済学部から大学院国際協力研究科(IDEC)に進学し、2000年4月から国際協力事業団(JICA)で働いています。就職活動は順風満帆とはいきませんでしたが、様々な場面で大学院で得た経験と知識の手ごたえは感じることが出来たような気がします。
 就職前は少し固いイメージのあったJICAでしたが、一年半が経った今の印象はのびのびと仕事が出来、風通しのいい明るい職場というのが率直な感じです。仕事では世界の国を訪れる機会が度々あって、現場で汗を流しながら取り組んでいる専門家と現地の人々との話に耳を傾けては色々と教えられ、新しい世界に心躍らせる毎日が続いています。  国際協力の仕事を志す人にとって、入り口は様々なところにあります。JICAでも、職員以外に専門性を活かした専門員・ジュニア専門員や、現場に根付いた仕事を目指す青年海外協力隊など、様々な機会が用意されていて、培ってきた経験を活かす場は多様です。そのような人々に恵まれた職場の中でこれからも頑張っていこうと思っています。
写真:モロッコのプロジェクトを訪ねて(署名式にて)(正面からみて、後列左端)

筆者
『NGOで働くにあたって』

外務省専門調査員/教育協力NGOネットワーク事務局
宮川 めぐみ
(2000年 国際協力研究科 博士課程前期修了)

 現在、国際協力の中心的役割を担う一アクターとしてNGOへの期待は高まっており、日本のNGOは政府機関や国際機関からのプロジェクトにおける連携の呼び声への対応に追われる状況です。
 NGOは、スタッフの多くが一般企業・政府機関・国際機関等、NGO以外での実務経験を有しているのが特徴的です(実務能力と専門性が一般的な応募要件)。私もその例外ではなく、企業等での勤務→大学院という道筋をたどり、今に至っています。私は、元々この分野の仕事を目指していましたが、まずは援助国としての日本を支えている産業界のノウハウや社会構造、また”いわゆる”一般的世論を形成する人達を知っておく必要があると考え、企業等に就職し、平行して勉強も続けてきました。その経験と人脈は、国際協力という応用力と機動力を求められる仕事や、就職の上で役立っています。
 国際協力に適性のある人はというと、他の人より経済的に裕福な暮しや、自分自身の国際舞台での活躍を目的・目標とする人(事態を余計に悪化させます!)ではなく、社会問題に幅広く敏感で、その構造的な原因を鋭く読み取れ、その上で誠実に主体的に、でも影に徹して仕事を完遂できる人のようです。
写真:国連大学における国際シンポジウムでファシリテーターをする筆者(向かって左側)

『国際協力分野は成長産業』

JICA中国国際センター所長
駒沢 彰夫

 グローバルな問題に対して、専門性をもって国際協力に携わる人材が、今すぐにでも求められています。
 急激な情報化・多様化が進む世界で、国や国際機関のみならず、企業やNGOにおいてもグローバル化に対応する人材こそ必要です。
 しかし、それなりの専門性、語学力、経験などを修得するには、あせらずに”まずは国際的な修業から”と考える方が早道なようです。
 一つのステップとしては、青年海外協力隊員として「南の視点」を養うことをすすめますが、それ以外にも留学、NGO活動などを通して協力の現場を踏んでみて下さい。
 志をもって理念を追求する経験は、将来どの様な仕事に進もうと、必ず役立ちます。
 第一には健康、第二にバランス感覚、そして何より自己のアイデンティティをもって、道を切り拓いて行く広大生に期待しています。

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