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「模擬裁判で学んだこと」
文・古浦 佐和・藤井 聖子
(Koura, Sawa) (Fujii, Seiko)
法学部四年

証拠の衣服を提出する検察官



 昨年十一月四日、私たち刑法ゼミにとっての一大イベントが開催されました。年に一度の大学祭で行われる「模擬裁判」。例年は「陪審制度」により行われていましたが、今回は初めて「裁判員制度」を導入して行われることになりました。「裁判員制度」は、二〇〇一年六月に司法制度審議会が提唱したもので、一定の刑事裁判について国民が参加して裁判官と一緒に審理を行う制度です。
 私たちは、夏休み前から脚本作りを始め、ポスター制作・キャスティング・セリフ合わせ・演技と、先生や先輩方に指導をうけながら手探りで準備を始めました。なにしろ模擬裁判自体初めての経験のうえに、ゼミの仲間で協力して何かをするのも初めてでした。スタートが例年より出遅れてしまったことに気づいた時は、「本当に本番を迎えることができるのか」と、ひたすら不安でした。しかし、準備の過程において、普段のゼミでは、なかなか話のできなかった仲間同士にも、友情が生まれて、就職活動で忙しい先輩方も積極的に参加協力してくださり、みんなで集まって練習することがなにより楽しみになっていました。


検察官による証人喚問
(裁判官席の右陪席が古浦、左陪席が藤井)



 過去の模擬裁判のビデオを参考にしたり、実際の裁判を傍聴しに行ったりして、何度も脚本を修正し、やっとのことで迎えた本番。「鏡海岸殺人事件」という題で、殺人か傷害致死かが争点でした。百八十名程の参加者が見守るなか、検察官も弁護人も証人も、そして被告人も、練習以上に役を演じていたように思います。裁判員の方も、熱心に参加していただきました。もちろん、実際まだまだ未熟なところだらけで、たくさんの指摘や批判をもらったけれど、私たちは、とにかくひとつのことを、ゼミの仲間でやり遂げたという満足感でいっぱいでした。こんな経験は机をはさんで討論するだけのゼミではなかなか味わえないでしょう。私たちの大学生活における大きな思い出となり、その後のゼミの雰囲気は以前に比べて、とても良くなったことはいうまでもありません。

広大フォーラム33期6号 目次に戻る