『低温の物性物理』
広島大学名誉教授
藤田 敏三 ほか著
講談社サイエンティフィク/2000年/3,800円
わたし達が生活している常温は、絶対温度で約三百度(K)です。固体に関する限り、この温度を一桁も上げるとたいてい融けたり蒸発したりして、ついには同じ物体とはいえなくなります。一方、温度を下げると、少なくとも外見は同じ物体のまま性質を変えていきます。しかも常温に比べて実に十桁以上低い温度が実現できるのです。この広い温度域でどんな物理現象が起きるか興味深いことです。低温では何らかの秩序が形成され、その秩序状態にはミクロな量子効果が反映されます。本書では、低温現象の中でも、超伝導・超流動・磁気秩序など特に面白い基本現象をとりあげて、その本質を物理学でどう捉えるかを教科書にまとめてみました。教科書は、独自の視点をもつとともに、必要な基本事項を欠いてはなりません。参考書や百科事典とちがって、詳しくなり過ぎてもよいとは言えません。先生が肉付けをする自由度を残しながら、新しい話題と視点をうまく提供することができたかどうか、気になっています。
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『世界の放射線被曝地調査』
原爆放射線医科学研究所 附属国際放射線情報センター助教授
高田 純 著
講談社・ブルーバックス/2002年/980円
マーシャル諸島は、戦前は日本の国際連盟委任統治領でした。戦後米国の水爆実験場となり、延べ六十六回、総出力は広島原爆の七千百発分もの爆発実験が実施されました。その結果、島の核汚染のみならず、島民たちに白血病、甲状腺ガンなどの甚大な健康被害がでました。旧ソ連も、シルクロードの北部の地で、核兵器の爆発実験を一九八九年まで繰り返し、数十万人が被曝しています。
海外のこうした大国の核兵器使用による小国ないし少数民族の被曝とその後の状態を、私たち日本人も知らないではすまされません。
本調査から、二十世紀に発生した核災害による住民の過去の危険な被曝の実相のみならず、核汚染からの回復、核災害からの復興の方向が、読者に理解されるはずです。
本書にはその他、核爆発現象、被曝のリスク、わが国の核燃料サイクル計画、万一の核災害時に自らできる放射線防護法を収録しました。それは、二十一世紀の視点から執筆したからです。
著者のホームページ
http://home.hiroshima-u.ac.jp/jtakada/
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『海上交通犯罪の研究 −海事刑法研究第一巻−』
法学部教授
甲斐 克則 著
成文堂/2001年/3,500円
日本は四面を海に囲まれた海洋国であり、海は、古来より海上交通や漁業等、生活の場として人々に活用されてきました。一方で、海を場とする犯罪も多く発生し、様々な海難事故も起きました。例えば、一九五五年の国鉄宇高連絡船第三宇高丸と紫雲丸との衝突事件(死者百六十六名、負傷者五十七名)、一九八八年の潜水艦なだしおと遊漁船第一富士丸衝突事件(死者二十九名、負傷者十六名)など。従来、刑事法学者の目は、あまり海に向かいませんでしたが、刑法理論も、海から眺め直すと、新たな発見が多いものです。本書は、海上交通犯罪に着眼して、これを刑法理論的観点から分析・検討した日本初の(おそらく世界でも初の)本格的研究書です。刊行後五か月で増刷となりました。
本書は、「序章」を受けて、第一章「海上交通事故と過失犯論」、第二章「船舶衝突事故と過失犯論」、第三章「船舶衝突事故と信頼の原則」、第四章「船舶転覆事故と過失犯論」、第五章「瀬渡し船の事故と過失犯論」、第六章「エンジン始動に伴う船舶事故と過失犯論」、第七章「艦船覆没・破壊罪の考察」、第八章「公海上の船舶覆没行為と刑法一二六条二項の適用」、そして「終章」から成っています。
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『心理学評論』
大学院教育学研究科教授
利島 保 編著
心理学評論刊行会/2001年/2,000円
「心理学評論」は京都大学文学研究科心理学講座が責任を持つ心理学研究専門レビュー誌です。ただし、本誌は、心理学研究のみならず学際的な研究の羅針盤となることを目的にしています。 ITを活用したバリアフリーによって障害者の心理的空間を広げるために本特集は、種々の障害者への支援技術の展開と現状を、心理学、失語症学、リハ工学、情報工学等の研究者達が紹介しています。専門学術雑誌とは言え、高等教育における情報保障に関心のある人に理解され、活用されるよう編集に工夫しています。注文は発行元にメールで依頼してください。
hyoron@psy.bun.kyoto-u.ac.jp
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