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電子ジャーナルってなに?
附属図書館 http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/



 今、図書館のホームページを覗いてみると、情報検索の欄に「電子ジャーナル」という文字を見つけることができるでしょう。この文字をクリックすると、大量の電子ジャーナルの世界への扉が開きます。
 さて、この「電子ジャーナル」ってなんでしょうね。
 約十数年前に、学術雑誌の出版界では、製作過程での電子化が急速に進展し、原稿の作成から投稿、査読・審査、製版、印刷等各段階での電子化により、雑誌そのものが電子化された「電子ジャーナル」が実現しました。一次情報である論文本体もデータベース化され、当初は、「ADONIS('91)」や「UMI('97)」などが、主要な雑誌をCD-ROMに梱包したシステムを商用化しました。本学附属図書館でも、一九九九年十月からしばらくの間、図書館に設置したEESサーバーで電子ジャーナルを提供してきました。現在は、通信技術の発達により大容量の情報が高速で通信できるようになったことから、世界中の出版社がインターネットで提供するようになりました。

電子ジャーナルの特徴

  1. 速報性=冊子体が発行される前のプレプリントの段階で見ることができ、研究世界の動向をいち早く知ることができます。
  2. 検索機能=論文の著者名、論題中の言葉、あるいは抄録中の言葉をキーワードとして検索することができます。
  3. 引用文献リンク=ある論文の引用文献から、その抄録及び全文へ辿りつくことができます。さらに、引用文献のそのまた引用文献へと限りなく辿っていくことができます。但し、いつのまにか自分がいる世界がわからなくなったり、目が回ることにもなりかねません。
  4. アラート機能=検索キーを登録しておくと、次回発行分から条件にマッチした最新の論文を通知してくれるサービスです。
  5. 時間や場所に制約されないで、いつでもどこでも利用できます。
  6. 配架・所蔵のスペースが不要です。

 などが大きな利点としてあげられます。非常に便利なものですが、逆に、大きな問題点もあります。

  1. 購読価格の問題=電子ジャーナルの価格は、無料型、冊子体購読者は無料型、冊子体+追加料金型、単独価格型、出版社毎の過去数年間の冊子体購読実績に一定率の料金を追加したパッケージ型等のバリエーションがあります。大部分の大手出版社は購読実績主義のパッケージ型を採用しています。
  2. アクセス保証の問題=購読を中止した途端にアクセス権が消滅し、電子ジャーナルを閲覧出来なくなります。
  3. アーカイブの問題=冊子体であれば、購読中止してもバックナンバーは手元に残りますが、電子ジャーナルでは何も残りません。
  4. ネットワーク環境の問題=ネットワークの通信技術は日進月歩ですが、まだレスポンスの遅さにイライラすることが多々あります。この問題は、ミラーサーバーを国内に設置することで、改善が期待されます。

これからの電子ジャーナル

 出版社毎、雑誌毎で異なるインターフェースを持つ電子ジャーナルが、EBSCO等のようなポータルサイトでは、クロスレファレンス機能により一度に検索・利用出来るようになります。さらに二次情報データベースと一次情報データベースがダイレクトに結びつき、研究者にとって情報の検索と入手が一度に可能になります。

広島大学の現状

 附属図書館では、一九九七年のIOP(英国物理学会)の電子ジャーナル導入を初めとして、可能な限り導入してきました。今や、附属図書館ホームページからアクセスできる電子ジャーナルは三千タイトルを越え、世界の主要な雑誌をほとんど網羅しています。

利用の方法

  1. 附属図書館ホームページの「電子ジャーナル」をクリックします。表示された「電子ジャーナルの利用について(学内限定)」のページにある著作権の尊重、利用規約の尊重等『利用の前に』の注意事項を必ず読んでください。
  2. タイトル順リストから直接電子ジャーナルを閲覧できます。 B出版社INDEXから出版社別に電子ジャーナルを閲覧できます。各出版社毎の特徴が説明してあり、各社とも先に記したような特徴を備えています。





    おわりに

     今、広島大学の構成員はだれもが電子ジャーナルを利用することができます。一見、無料で利用できるものと思われがちです。しかし、それは、図書館や、どこかの講座で冊子体の雑誌を買っていたり、全学共通経費により電子ジャーナルの利用料を負担しているからです。また、電子ジャーナル利用料の多くの場合は、本学の過去数年間の冊子体購読実績に基づいて算出された出版社毎のパッケージで設定されるという特徴をもっています。そのため、冊子体購読を止め冊子体購読料が少なくなると、反比例的に電子ジャーナルの利用料金が増加するしくみになっています。三千タイトルの大部分に適用されますので、本学での電子ジャーナルの利用提供を維持するためには、冊子体の購読中止が困難な状況になっています。広島大学附属図書館は、国立大学図書館協議会の一員としてコンソーシアム(図書館の連合体)を形成し、そのスケールメリットを生かして出版社と価格等の交渉をすることで、少しでも安価で有利な条件で購読できるよう努力しています。  「電子ジャーナル」は、本学の教育・研究に不可欠な学術情報基盤の一つです。図書館では、可能な限り導入・整備を進める方針です。



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