広島地方に住む者として、赤潮による養殖カキの被害を聞く度に、胸が痛みます。地場産業の発展を支援している地域共同研究センターの先生達にとっては、なおさら辛いことです。
赤潮発生のニュースを聞いていた先生達のある日の会話です。
B先生が、「赤潮の中でも大きな被害を与えるのは、ヘテロカプサなどの鞭毛藻類なんだよね。その鞭毛藻類の強い競争相手が珪藻類で、珪藻類を大量に発生させることができれば、赤潮の発生が抑えられるんだ。珪藻類には浮遊性のものと付着性のものがいて、付着性の珪藻類は新しい面に付着する性質があるんだ」と言いました。
それを聞いたM先生が、「じゃあ、新しい面をどんどんつくる方法を考えたら良いのですね。…こんな方法はどうでしょう。海にいる微生物によって分解するプラスチック(生分解性プラスチック)を珪藻類の付着板にし、珪藻類が増殖して付着板に一杯になる頃、付着板が分解して剥がれ、新しい面が出るようにしたら、どんどん珪藻類を発生させられますよ」と答えました。
「そりゃあ、グッド・アイディア!でも、そんなにうまい生分解性プラスチックができるだろうか」と、B先生が疑問を投げかけました。
その時丁度部屋に入ってきた生分解性プラスチックの研究をしているS先生が、「それは十分可能ですよ」と言いました。
三人のこの会話がベースとなって、この特許がつくられました。珪藻類は水中食物連鎖の大元であり、珪藻類の増殖は魚介類の増殖にもつながります。