発明・特許紹介

微生物にポリリン酸を蓄積させる方法


ポリリン酸を蓄積する微生物。黄色く光るポリリン酸を
微生物の体一杯に蓄積する。
(科学技術振興事業団さきがけ研究21の中で得られた成果)
文・黒田 章夫
(KURODA, Akio)
大学院先端物質科学研究科
細胞構造機能学講座助教授


 リンはDNAやリン脂質の構成成分であり、すべての生物の中に含まれる元素です。従ってリンは肥料の中に必ず含まれ、人類の食料生産にとってなくてはならない資源です。しかし、そのもとになるリン鉱石は数十年で枯渇するのではないかとも言われています。日本はこのリン資源を百パーセント輸入して使っています。一方、リンが環境に垂れ流されると、富栄養化という現象を引き起こして、赤潮やアオコの発生を引き起こしています。それを抑えるために活性汚泥という微生物の集団を使い、下水の有機物を分解させるのと同時にリンの除去を行っています。従って、この微生物によるリン吸収能力を強化する事が出来れば、河川湖沼の富栄養化は防止できるわけです。また、そこからリンを回収することができればリンのリサイクルに貢献できます。本発明は微生物に突然変異を施し、リン酸の塊であるポリリン酸を蓄積するように変化したものを簡単に選抜する方法に加え、更に遺伝子操作を行うことによって、高度にポリリン酸を蓄積させる技術です。この技術は、リン除去による富栄養化防止の効果だけでなく、貴重リン資源の有効利用やリサイクルにも貢献できると考えています。

〈現在特許出願中〉
出 願 番 号:特願二〇〇二―一一一二八一
発明の名称:ポリリン酸を蓄積する変異種の取得方法、及び取得した変異種の利用
出 願 人:科学技術振興事業団
発 明 者:黒田章夫、大竹久夫




広大フォーラム34期3号 目次に戻る