21世紀COEプログラムにおいて、広島大学からは「情報・電気・電子」と「人文科学」の2分野にそれぞれ1拠点が選定されました。


拠点リーダー・岩田 穆

(IWATA, Atsushi)
大学院先端物質科学研究科教授
ナノデバイス・システム研究センター長


 二十一世紀COEプログラムによる情報・電気・電子分野の研究教育拠点として、ナノデバイス・システム研究センターと先端物質科学研究科の三研究室の教官グループが提案した「テラビット情報ナノエレクトロニクス」が選ばれました。拠点の特色は、技術分野をシリコン集積システムに絞り、領域融合による新技術開拓とともに社会貢献も前面に出したことで、これが評価されたと考えております。
三次元集積システム(3Dカスタムスタックシステム)画像認識処理の各階層をチップ化して,無線や光通信技術を使って画像認識システムを実現する。
このCOEでは、これまでに達成した半導体分野の世界レベルの研究成果と人材・技術・設備などのリソースを活用して、情報エレクトロニクスの研究教育拠点を形成し、技術融合にチャレンジして革新的な集積システム基盤技術を開拓します。同時に先端の研究を通して年十人を目標にして、役に立つ博士研究者を育成します。
 将来十年以上、主流であり続けるシリコン集積エレクトロニクスを学問ならびに産業の両面から先導するためには、新しい集積技術と情報処理システム技術の融合研究が必要です。COEでは無線と光を使った半導体チップ間を通信する三次元集積技術と、生体情報処理や画像処理システム技術に関する学問領域と基盤技術を形成します。このために、世界の人材を結集して、国際的に認知された研究拠点を構築します。また、若手のCOE研究員を公募し、特に優秀な提案には研究費を用意して、研究推進の原動力として活躍してもらいます。博士課程学生には共同研究などで責任を分担させて実力を養い、経済的に支援して研究に没頭できる環境を作ります。
 将来、広い視野を持った産学のリーダーとなる人材が必須ですが、日本の博士課程学生の多くは、視野が狭すぎます。これには教官の指導力、教育システム、企業の受け入れ方など多くの課題がありますが、COEでは先端研究の実践を通じた実力養成と、複数指導教官制、ダブルメジャーの思想を実効あるものにして、視野が広く複眼的な思考ができる人材の育成に注力します。
 二十一世紀COEは大学法人への大学改革を推進する狙いも持っていますから、大学組織の再編、教育システムの改革などにも先導的・試行的に貢献したいと考えております。



拠点リーダー・有本 章

(ARIMOTO, Akira)
高等教育研究開発センター教授


 本プログラムは、採択された全分野103件の拠点のうち、高等教育研究では唯一の拠点となりました。まことに栄誉なことでありますとともに、責任の大きさを痛感しております。概略次のような取り組みを行います。第一は、グローバル化、知識社会化、IT化、市場化などの大きな社会変化に対応した大学・高等教育の構造転換の問題を考えることが、世界的な課題であると同時に日本的な課題であるとの問題設定から、産業社会型の近代大学から知識社会型の未来大学を中心に据え、二十一世紀型の高等教育システムを構築し、その質的保証を試みます。第二は、日本の大学が戦前はドイツモデル、戦後はアメリカモデルを移植したのをはじめ、欧米モデルを集積したデパートと化しているなかで、日本モデルの大学像の構築を追求します。第三に、方法論の上で従来優勢であった歴史=構造論に対して、知識の性格や機能を重視する知識論からのアプローチの有効性を探ります。第四に、社会への従属よりも社会への主導性を発揮する大学像の形成を追求します。
 具体的には、「大学組織編成の研究」によって、ガバナンス、管理運営、財政の問題を含め、大学間の連携、併合、統合などにかかわるシステム構築を問います。「研究システムの研究」によって、学問的生産性を向上させる条件・機能・構造などの問題を分析します。「FD・SD=教職員資質開発の研究」によって、今後の大学発展のカギを握る教員や職員の資質・能力・活力を高めるシステムを模索します。
 五年間の研究には14名のチームで取り組み、さらに学内・外からの協力を仰ぎます。今年は、予備調査、国内外の大学への訪問調査、資料収集、国際会議、センター所蔵資料のデータベース化などを手がけ、次年度以後は、内外の機関調査や大学教員・職員調査、有識者インタビュー、国際会議などを行う予定です。



広大フォーラム34期4号 目次に戻る