中国地方の文化・芸術、学術・産業の分野で優れた功績をあげた人たちをたたえる「中国文化賞」(中国新聞社主催)の第59回受賞者として、広島鉄道病院院長で本学名誉教授の生田義和氏と株式会社サタケ代表で財団法人広島大学後援会理事長の佐竹利子氏が選ばれました。


第五十九回中国文化賞を受賞して
広島鉄道病院院長
広島大学名誉教授

生 田 義 和


 この度、栄えある中国文化賞を受賞いたしました。大変光栄なことであり、ご推挙いただいた方々に、またこれまでご指導いただいた方々に厚く御礼申し上げます。
 昭和四十年に広島大学大学院に入学し、世界的な手の外科医である津下健哉先生から与えられたテーマである「顕微鏡下の血管縫合の実験」の学位論文が一段落した後、ドイツとアメリカに留学しました。一年六ヶ月の滞在を終えて帰国し、初めての切断指の接着に成功したのが昭和四十七年で、その後、壊死した腕の筋肉を取り除いて大腿の筋肉を移植して指を動くようにする手術の考案や、血管縫合を利用して腹の皮膚を腕に移植する新しい手術の臨床応用などを積極的に行いました。
 これらの手術は、当時世界のあちこちで報告されましたが、私たちの手術も運良く世界で最初とか二、三番目であったことが国際的に評価されたように思います。また、日本を初めとしてヨーロッパやアジア諸国など世界のあちこちでの講習会で技術指導したことも教育の面で評価されたのかもしれません。
 切断手の接着手術に九時間近くかかった事も記憶にありますが、このような時間は苦労と感じたことは全くなく、怪我した手が元通りに使えるようになることや、先天的に指の数が少ない幼児などを手術して、使いやすい、見栄えの良い手を創り上げることで一生のお付き合いになり、患者さんの卒業とか結婚など人生の節目毎の会話につながると感激が一層深まります。
 広島大学に奉職したことで、多くの患者さんの治療にたずさわることが出来、また医学部学生の教育はもちろん、顕微鏡を使った手術手技の講習会を十五回以上開催し、昨年までに数人の外国人を含めて合計約六百人の外科医の教育にたずさわることが出来ましたことは、私にとりまして大変幸せなことでした。皆様のこれまでのご支援、ご指導ならびにご厚情に対しまして厚く御礼申し上げます。
 最後に、広島大学は今、「大学院医歯薬学総合研究科」を立ち上げ、来年度には二つの附属病院が統合され、そしていよいよ平成十六年には法人化されますが、広島大学の特徴を充分に生かして新しいブランドを創り上げていただきたいものです。大いに期待しております。



中国文化賞を受賞して
 株式会社サタケ代表
 財団法人広島大学後援会理事長
佐 竹 利 子


 この度、「穀類加工技術発展の業績と地域社会への貢献」が高く認められ、第五十九回中国文化賞を頂く栄誉に恵まれましたこと、大変光栄に存じております。また、この賞は私の祖父である創業者佐竹利市も昭和二十八年に「精穀機の改良研究」で受賞しており、二重の喜びでございます。
 お陰様で、私共サタケは、創業百七年を迎え、人類の三大主食である「米」「小麦」「トウモロコシ」中心に、栽培から収穫・加工、そして食卓に上るまで全てを提供する食品の総合企業として、製品は世界百四十カ国でご愛用頂いております。
 この様に長きにわたり、会社を発展させることが出来ましたのも、皆様のご支援のおかげでございまして、この場をお借り致しまして、改めて御礼申し上げます。
 この賞は、本来ならば、一昨年逝去致しました主人佐竹覚が頂戴すべき賞ではございますが、私が個人でというよりも、日頃お世話になっております皆様や社員と一緒に頂いたものと感じております。
 現在、広島大学に対しまして、私共は様々な形でご支援させて頂いております。その背景には、亡夫の「アメリカなどと比べ、物質的に資源の乏しい日本に必要な唯一の資源は、人間の頭脳である」という強い信念がございます。特に原田前学長には、この考えにご賛同頂き、その結果、当社創業百周年(一九九六年)を記念して、サタケ基金を提供することで、広島大学後援会の設立に協力させて頂きました。現在、設立から六期にわたり百八十四件の研究に助成が為されました。
 また、広島大学五十周年記念会館建設にあたりましては、私個人的に協力させて頂き、会館を「サタケメモリアルホール」と命名して頂きました。来年五月には千席の座席を持つ大ホールが完成披露される予定になっております。広く地域の皆さんにご利用頂けるよう、開放して頂くことを条件にしておりますので、地域の文化高揚に役立つものと期待しております。
 今後とも、微力ながら人材育成並びに地域貢献に力を注いで参りますので、どうぞ宜しくお願い申し上げるとともに、広島大学が「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」になりますよう願っております。


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