発明・特許紹介

地球環境にやさしい
  プラスチック材料の開発
文・白浜 博幸
 (SHIRAHAMA, Hiroyuki)
地域共同研究センター助教授

  我々の生活を便利で快適なものにするため、いろいろな分野で高分子(プラスチック)材料が使用されています。例えば、自動車、飲料容器・食品用包装材(ペットボトル・ラップ等)、建築材料、家電製品などの分野です。しかし、これら材料がいったん廃棄される段階になりますと、種々の環境汚染を引き起こしています。一例として、焼却処理におけるダイオキシンなどの有毒ガス、地球温暖化の原因となる炭酸ガスの多量発生が挙げられるでしょう。
 このような地球環境の汚染防止策として現在、プラスチック材料のリサイクルが盛んに行なわれています。ペットボトルから繊維製品への再生などがその良い例です。一方、廃棄されても自然環境中で分解される、いわゆる生分解性プラスチック材料を開発して使用することも、これら環境汚染防止の有力な手段となり得ます。
 生分解性プラスチックとして今後その普及が最も期待されていますのは、ポリ乳酸(ポリラクチド、PLA)系の高分子です。その理由として、乳酸は我々の身体の中にも存在し、これから合成されるPLAは生体適合性に優れている点です。また、より重要なこととして、我々の目指す資源循環型社会の構築に適した材料であるからです。すなわち、乳酸は自然界に多く存在する植物のデンプン(正確にはブドウ糖)から乳酸発酵で作られ、その高分子であるPLAは自然環境中で分解され乳酸となり、これを微生物が自分の体内で代謝し最終的には炭酸ガスと水になります。そして、植物がそれら炭酸ガスと水から光合成によりデンプンを作るというサイクルです。
 生分解性プラスチックはこのように地球環境にやさしいだけではなく、医療用の縫合糸や骨折用固定化材にも使用可能です。その際、前述した生体適合性に優れるという点がポイントになります。医療用に用いる利点としては、傷や骨折が治癒した時点で生体内分解・吸収されるから、再手術の必要がなくなり、それは患者・医者の両方に好都合であるのです。
 まだ価格が高く生産量は多くありませんが、近い将来いろいろな分野で使用され、普及することは間違いないと思われます。

公 開 番 号:2002―234934
発明の名称:反応性官能基を有する生分解性重合体
出 願 人:科学技術振興事業団
発 明 者:白浜博幸、安田 源、馬場榮一



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