特集

  UI(ユニバシティー・アイデンティティ)とは何か


文・匹田 篤

(HIKITA, Atsushi)
大学情報サービス室助手

CIとは
 日本でCIという言葉が一般に使われるようになったのは、80年代後半のちょうどバブルの時期と重なると思います。CIというのはコーポレート・アイデンティティの頭文字をとったもので、この時期には多くの企業が、社名をカタカナやアルファベットに変更したり、ロゴやトレードマークを競って新しいものにしていきました。こういったものを一新することで、企業のイメージアップが図られたのです。果たしてその効果は、ということですが、やはり効果は高かったといえます。社会では一般消費者とは関わりのない、業種の方が多いものです。しかしCIによって、いわば目立たないけれども社会の一端を支えているような企業の知名度が上がり、また旧来からの古いイメージの企業がイメージチェンジをおこない、そこにブランドが形成されていったのです。
 いまでも見た目の変化はとても重要です。自治体や公共施設、交通機関など、不特定多数の人々が利用するところでも見た目のデザインの統一は重要です。それらはビジュアル・アイデンティティ(VI)と呼ばれています。

CIからDIへ
 しかし、ロゴやトレードマークといった、表面的な変化だけでは、その効果はなかなか長続きするものではありません。やはり外面を変えるだけではなく、内面を磨かなければいけません。そこで、経営戦略や事業戦略といったものを策定し、構成員が一つの方向性に向かって頑張るような仕組みづくりが注目されるようになりました。90年代には各企業は、自社を取り巻くビジネス環境を調査したり、戦略情報システムなどといった社内の情報化を進めていったのです。
 これにより、企業にとっての顧客の満足度や企業の競争力の向上、業務の効率化や合理化が図られています。その際、企業にとってはこれからの大きなテーマや、重点的な分野を明確にし、組織を再編成することが、とても効果的です。これらは企業ドメインの構築と呼ばれます。いわばドメイン・アイデンティティ(DI)というところです。近年におけるCIは、図のようにVIとDIが包含された総合的なものとなってきています。

大学の取り組み
 大学もイメージが大切な組織です。新しい学部を創設することで、大学のイメージアップを図るケースや、大学や学部の名称を変更することで、時代や社会のニーズにあった大学を目指す取り組みは、これまでも数多くおこなわれてきました。これらは受験生への人気を高めるという効果もあり、企業にも好意的に受けとめられたようです。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスや立命館アジア太平洋大学は、そのよい例です。
 また、大学のシンボルマークを変えたり、キャッチフレーズをつくる大学もあります。大学は企業と違い、構成員の大半が四年間で変わってしまうところです。学生や教職員が一体感を持って、一つの場を共有するためには、なにかしらの方向性が必要だと思います。

全学UIの必要性と課題
 国立大学はいま、他の大学との差別化・個性化が課題となっています。企業がCIを必要としていたのと同じ状況に立たされています。アイデンティティを再確認し、広島大学のイメージに共通の方向性を持たせることで、広島大学はいま以上に魅力と個性を発揮することが期待されます。
 しかしながら、全学の意見を統一させることは容易ではありません。また、昔ながらのイメージからの脱却には、抵抗感を覚える人も少なくありません。このような課題を克服し、大学の個性=ユニバーシティ・アイデンティティを策定することで、広島大学はより魅力的なものとなることでしょう。

プロフィール
1993年
1993〜2000年

2001年


専門分野:
上智大学理工学研究科物理学専攻修了
株式会社三菱総合研究所研究員
(地域情報化、メディアデザイン)
広島大学大学情報
サービス室助手

情報政策、メディアリテラシー

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