文・中山 修一
(NAKAYAMA, Shuichi)
平和科学研究センター長
大学院国際協力研究科教授

平和メッセージ発信事業
 核兵器の被害を体験したヒロシマは、核兵器のない平和な世界を実現するための「平和メッセージ」を発信する責務を負っています。これは「平和を希求する精神」を理念に謳う広島大学に課せられた重要な使命でもあります。平和メッセージ発信事業は、この使命を実現するため広島大学の地域貢献特別支援事業の一環として平成十四年度より始まりました。この事業は、広島の大学・自治体・地域住民が、平和科学の教育研究を有機的な協力の下に推進し、地域が協働して広島から世界へ平和メッセージを発信することを目的とするものです。
 この目的を実現すべく、広島県、広島市、東広島市の協力の下に「ひろしま平和科学コンソーシアム」(委員長:中山修一広島大学平和科学研究センター長、国際協力研究科教授)を結成しました。ひろしま平和科学コンソーシアムは、平和科学の教育・研究と平和メッセージ発信のための有機的な協力体制を整え、広島県内の平和科学に関連する組織を結集し、情報交換や共同研究を通じて連携を深め、広島から世界へ平和に関するメッセージを長期的に発信するための協力のシステムです。
 ひろしま平和科学コンソーシアムの活動は始まったばかりですが、次のような事業を柱として展開していく予定です。また、世界への平和メッセージの発信という目的のため、講義・出版・ホームページといった事業はできるだけ日本語と英語双方で発信することを目指しています。

(一)講演会、シンポジウムなどの開催
 昨年度は、広島大学学術顧問小和田恆先生による特別講義を開催しました。今年度も同様の講演会、自治体向け平和科学セミナー、シンポジウムなどの開催を予定しています。

(二)平和科学に関する公開講座、講義などの実施
 「ひろしま学」とも呼ぶべき講義の学生、留学生、一般市民向けの開設、平和科学の教科書作りなどを予定しています。今年度は東千田キャンパスで行われる総合科目「ヒロシマ学」を事業の一環として一般市民が聴講できるようにしました。

(三)出版によるメッセージの発信
 昨年度は原爆放射線医科学研究所の協力のもとに、カザフスタン・セミパラチンスクの被曝者百数十名の証言を含む『カザフスタン共和国セミパラチンスク被曝実態調査報告書』を出版し、学内外に配布しました。今年度も、前述小和田先生の特別講義『冷戦後の世界と日本外交』を出版したのをはじめ、出版によるメッセージ発信を行います。

(四)ホームページによる平和メッセージの発信と交信
 昨年度末、ひろしま平和科学コンソーシアムのホームページを立ち上げました。このウェブサイトでは、ひろしま平和科学コンソーシアムの活動状況をお知らせするとともに、広く学生・市民の方々に参加していただけるような企画を考えています。
 まず、先に掲げた出版物は、すべて掲載しています。さらに、「平和講座」として、わかりやすい平和科学の入門・案内、などを充実させていく予定です。
 また今年度から、市民・学生の方々に参加してもらうプロジェクトも始動させる予定です。例えば「ヒロシマの平和思想」、「ヒロシマ庶民の物語」、「核廃絶に向けたヒロシマからの提案」、「平和構築に向けたヒロシマからの提案」などをテーマに、アイディアを自由に投稿していただきます。
 コンソーシアムのウェブサイトには英語版も作成中です。多くの情報を英語で読めるだけでなく、英語でもメッセージを投稿できますので、英語でなら言いたいことが言える!という留学生の方でも参加しやすくなっています。
 このサイトは、「平和メッセージ発信事業」に積極的に参加して、貢献してもらうためのものです。まずは是非、コンソーシアムのホームページ(http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/cons/)にアクセスしてみてください。

 平和メッセージ発信事業は生まれたばかりです。事業の趣旨に鑑み、皆様方の御支援を是非ともお願いいたします。



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