留学生の眼(96)

文・コトワ,タチアナ
( KOTOVA, Tatyana )
大学院社会科学研究科
国際社会論専攻
博士課程前期2年
(ロシア・ウラジオストク出身)




ゆかたまつりにて(筆者右端)
 ある日、留学生課から電話がかかってきました。理学部の院生がロシア語で書かれた数学の論文の翻訳を手伝う人を探しているようで、出来るかどうかという内容でした。日本人の院生が一所懸命にロシア語での論文を読もうとしているところに惹かれて、迷わずOKを出しました。数学のことだったので、文系の私はその意味は全く分からなかったのですが、その院生と二人で五時間以上も悪戦苦闘し、翻訳はなんとか完成しました。私が手伝ったところが役立ったかどうかは別として、私にとっては忘れられない経験でした。なぜなら、あの時私は自分の日本語の乏しさと未熟さを改めて痛感したからです。そこで、日本語の勉強の仕方、うまくなる秘訣について私の考えを述べたいと思います。

 日本語を勉強し始めてから九年ぐらい経ちました。そこで気づいたのは、あるレベルを達成すると、もっと上の段階へ進めなくなるということです。つまり、新聞や専門書が読め、会話の内容を理解し、テレビのニュースはもちろんのこと、「ダウン・タウン」というお笑い芸人が言っていることを九十%以上わかること以上のレベルへはなぜか進めなくなるのです。そこで、自分の日本語のレベルをどうやって上げられるのか、勉強の仕方のどこがだめなのかを考え始めました。
 まず、典型的なパターンから説明をしたいと思います。日本人の友達、先生と話しているときに、分からない単語があったとしても、全体的な意味が分かれば、その単語の意味を訊かない、メモも取らないというパターンが非常に多いです。新聞、専門書などで初めて見た言葉、漢字、それからテレビの番組の中で知らない言葉が出たときも同じです。こうした場面で自分がどのように行動するかが一番重要だと思います。会話の途中で訊くのが苦手な人もいますが、恥ずかしがらずに、粘り強く、今まで聞いたことのない言葉の意味を必ず訊きましょう!本やテレビの場合もそうです。ちょっと面倒くさいところもありますが、だらだらしないで辞書を引くのです!そして、辞書で引いた言葉のところに何かの印を鉛筆でつけてください。もし、次回同じ言葉を引くことになったら、その自分でつけた印を見て、「ああ〜、もう二回目だ〜」ということが分かります(二回目で終わらないのが普通なのでそのときにがっかりしないのがポイント!)。そして、その日一日でメモした言葉を寝る前に復習すれば、理想的な勉強の仕方になります。
 次は、日本人の友達を作って、その付き合いを深めることも不可欠です。「日本にいれば、自然に日本語がうまくなる」という考え方は、誤っていると思います。努力しないで外国語が身につくのは不可能に近い話なんです。だから、新しい友達を作り、その付き合いの中で日本語の勉強の助けを求めるのが重要です。たとえば、日常会話をしていても、間違った日本語をその友達にその場で直してもらいましょう。私は、「日本語、上手ですね」と言われたときも、それは自分の日本語がまだまだ未熟だったのだと考えています。なぜなら、日本人のように話せば、そんなことは言われないでしょうから。
 最後に、日本に来てから、日本のテレビにはまり、毎日のように見ていました。ニュース、映画、バラエティ、なんでも見ました。バラエティは結構日本語のスピードが速いので、一番苦労しました。テレビのおかげで日本語のボキャブラリーが増え、バラエティを見ることが楽しみの一つになりました。今一番気にいっている番組は、水曜日の「ミラクル・タイプ」です。笑いながら楽しく日本語を勉強できるのがこの番組の魅力的なところです。
 世界の中には、十ヶ国語も話せるという人がいます。しかし、それは「天才」の話であって、私たち一般の人はどうすればいいのでしょうか。答えは一つです。あきらめずに、努力を重ねながら、自分の日本語(英語、フランス語等)を磨くのです!さて、みなさん、今日は新しい言葉を何個覚えましたか〜?
(原文・日本語)



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