広島大学の社会連携
〜地域からの提案課題を大学の資金で研究〜
大学情報サービス室

地域貢献研究
 広島大学では、地域から募集した研究課題を、学内の研究者が大学の資金を使って研究するという「地域貢献研究」を、平成十四年度から実施しています。
 地域から提案いただく課題は、地域社会が解決を迫られている共通性の高い課題であることとしており、中四国地域に在住の方であれば、個人、団体(自治体、NPO、企業など)を問わず応募していただけます。

地域からの課題募集と学内公募
 地域からの課題募集は年二回行っており、これまで三回で計八十三件の研究課題の提案をいただきました。応募の内訳は、個人十九件、自治体五十件、団体・企業十四件となっています。
 応募のあった研究課題はすべて、学内千七百人の研究者に示されて、関心のある課題に関する研究プロジェクトが公募されます。一つの課題に対して複数の研究が提案されることもありますし、複数の課題をまとめて一つの研究が提案されることもあります。
 応募のあった研究プロジェクトは、学内の審査委員会がテーマの重要性や実施可能性などを審査し、採択するプロジェクトを決定します。これまで、二十件の研究を採択しており、研究費の合計は三、五六〇万円となっています。

大学の資金で研究
 この研究費は、広島大学の教員が外部から獲得した研究費の一定額を拠出し、全学的な研究推進などを図るために積み立てたものです。このように、大学が自前の資金を使って地域からの提案課題の研究を行うというのは全国的にも珍しい取り組みです。

地域貢献研究採択研究課題一覧
研究課題名 代表者所属部局






 

広島県立総合体育館体力測定データ分析 教育学研究科
児童・生徒を対象とした自然・科学体験活動プログラムの教育的効果の効果システム開発 教育学研究科
学校との連携を考慮したエコミュージアムづくり 教育学研究科
広島地域経済の発展戦略とR.D.V(研究・開発・創業)機能強化のための政策研究 経済学部
バイオディーゼル燃料の性状とエンジン燃焼・排気特性の関連解明 工学研究科
カキ養殖技術改良による廣島湾の底質改善 生物圏科学研究科
広島県における生鮮食料品卸売流通の再編と中央卸売市場の存立意義 生物圏科学研究科






 

企業と障害者作業所の相互の発展に寄与しうる協働可能性を探るための研究 総合科学部
黒瀬川水質改善のための流域自然内部循環の評価とその効率的利用に関する研究 総合科学部
生物相による黒瀬川の水質浄化に関する研究 総合科学部
呉市における地域特有の生涯学習プログラム開発に関する調査研究 教育学研究科
少子高齢化に伴う地域社会の変貌と自治体政策の対応 法学部
中山間地域における農業復興と住民参加型農業公社運営の課題 生物圏科学研究科
腸管培養細胞を利用したノーウォークウイルス不活化判定法の開発 生物圏科学研究科
地域内未利用有用資源の循環・活用型社会システムの構築に向けて 生物圏科学研究科
広島市感潮河川のヘドロのメタン発酵処理法の開発 先端物質科学研究科
高齢者の生きがい、健康を保障する社会を構築するための、バイオ技術導入の試み 原爆放射線医科学研究所




 

瀬戸内圏の果樹農家をイノシシ被害から守りつつ人間社会とイノシシとの共存を図る
ことは可能か
生物圏科学研究科
附属瀬戸内圏フィールド
科学教育研究センター
原爆文化を中心とした広島原爆資料の目録作成と電子化の研究 平和科学研究センター
広島湾のアサリ漁場の保全に関する調査研究
〜特にナルトビエイの食害に関して
生物圏科学研究科
合計20件 研究費合計35,600千円

地域との連携で新たな可能性
 このように、地域からの提案課題を大学の独自資金で研究することにより、これまで光が当たることのなかった地域の課題を掘り起こし、地域において大学が果たすことのできる新たな可能性を開拓したいと考えています。

課題提案者も研究に参加
 採択された研究プロジェクトには、大学から研究費が配分されて研究が始まりますが、研究課題の提案者に、大学の研究者と一緒に研究に参加していただく例もあります。例えば、障害のある人の作業所の新たな社会的役割の意義付けと企業等との相互発展システムについての研究では、地域で長年にわたってボランティア活動等に携わってきた提案者と、総合科学部、医学部、教育学部などの教員がチームを組んで、研究に取り組んでいます。
 このような新しい形の研究から、これまでにない実践的な研究成果が生まれるのではないかと期待しています。

広島大学の社会連携
 広島大学では、社会との連携により、地域と大学双方の活性化をめざしています。この「広島大学の社会連携」では、各種の取り組みをご紹介しています。


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