Student Project

Challenge!青春
 
私の留学体験記
 現在、広大には、世界60か国以上から800人近くの留学生が在籍しています。その一方で、広大から海外へ留学する人は、まだまだ少ないようです。今回は、異文化を身体で学んできた4名に学生広報スタッフがインタビューをして、それぞれの体験をまとめました。留学を考えている人には一歩踏み出すきっかけになれば、そうでない人にもその経験談の中から何か伝わるものがあれば、と思います。


町 田 智 規 さん
工学部第二類情報工学課程卒業、現在自動車メーカー勤務
留学先:アメリカ・Brandon College他(2002年 7 月から半年間、私費留学)

「人生を変えた留学」
グランドキャニオンでのキャンプ中、散歩をしながら見る景色は最高でした。
 僕はすごく英語が苦手で、三年生の時にこの英語嫌いをどうにかしなければと思って一か月アメリカにホームステイをしたんですよ。その時に自分の中では科目の一つでしかなかった英語が、コミュニケーションの道具として使われていることに気付いて英語が好きになったんです。それから長期留学を考えるようになりましたね。それで偶然生協でトレックアメリカ(アメリカ横断の旅)のパンフレットを見つけて、これは面白そうだと思って行くことに決めたんです。
 まず初めの三か月はサンフランシスコの語学学校に通って、そこの寮に住んでいました。その後、車で各国から来た若者十三人と四十日間のアメリカ横断の旅に参加したんです。憧れだったグランドキャニオンに行き、セブンマイルブリッジを渡り、ディズニーランドで遊び、ブロードウェイでライオンキングを見たりと、アメリカの名所という名所をまわることが出来て、本当に楽しい旅でした。中でもメキシコ湾で見た夕日と朝日は今でも頭の中に鮮明に焼きついてますね。横断後はフロリダ州のフォートローダーデールという所で、二か月間語学学校に通っていました。その時にバハマやペルーにも旅行したりしましたね。生活水準や文化が全く異なる国を旅したことで自分が受けた影響は、思いのほか大きかったと思います。
 僕は留学して以来、いろんな事に対して見方や考え方が変わったり、有り難さに気付くようになりました。日本の素晴らしさとか、友達の大切さとか、白いご飯が食べられることの幸せとか。それに言いたいことが言えるようになったり、自分の中にあるいろんな可能性に気付くようにもなったんです。やはり英語が使えると仕事にも幅が出てくるんですよ。あんなに英語が苦手だったのに、今では海外で会社の事業に携わることが僕の夢なんです。留学って本当に生き方変えますよね。だから皆さんも迷っていることや、不安に思っている事なども、とりあえず何でもやってみたらいいと思います。意外と出来ない事なんて無いですよ!
記事:吉本麻衣子(総合科学部二年)


矢 田 晴 香 さん
総合科学部3年
留学先:中国・北京語言大学(2002年8月から1年間、私費留学)

「学びたいことがあったら恥を捨てて学ぼう」
SARSの時は学校が閉鎖され友人ともフェンス越しでしか会えませんでした。この時はフェンス越しにバドミントンをしました。(左から2人目が矢田さん)
 高校の時は外国語大学に行って英語の勉強をしようと考えていたんです。でも高校の先生に、総合大学に行って視野を広げるのもいいんじゃない?といわれ、広大にしました。総科で英語の勉強もできると思って。中国語は第二外国語として始めました。二年生になる時、これからは中国語が使えるといい、と思い中国語を専攻することにしました。留学のきっかけは、同じ中国語専攻の子がみんな留学するからってことで。私って結構適当主義者なんです。でも、これまでに経験していないこと、ふれていないものが人生にはいっぱいあるでしょう。ふれた瞬間に夢中になるかもしれない。だからあんまり堅くならない方がいいのかな。これからも中国語とは別の「何か」に虜になるかもしれないし。留学してカルチャーショックを受けたけど、それは楽しいことだと思いました。だからいろんなことに挑戦したいと今は思っています。その中で今までふれたことのない「何か」にふれられると思うから。
 留学して思ったのは、恥ずかしさは捨てた方がいいということ。中国人は本当に自己主張が強い。一緒に学んだ各国からの留学生も目的意識をしっかり持っていて、私が元気をもらうくらい彼らはとてもいきいきしていたんです。日本人は変に気を使うところがあるけど、分からないことがあったら、どうしようかな、と思う前に質問など行動にでる。周りの人はひくかもしれないけどそんなことは考えなくてよいと思います。
 一番心に残っているのはSARSのこと。本当に非常事態でした。帰るためのチケットも買ったけど、前日になってキャンセルしました。心配してくれる人たちの「帰ってこい」という言葉をつらい気持ちで断ったのは、中国で勉強するそのチャンスを逃したくなかったから。すごく悩んだけど、やっぱり中国語を勉強するなら中国にいるのが一番だと思ったんです。半ば楽しんでたところもあったかな。夢はまだ堅くは決まっていないけど、今は中国語を使える仕事に就きたい。いきいきした中国人が好きだから、一生つきあっていきたいと思います。
記事:上岡紗野香(総合科学部二年)


加 地 博 文 さん
大学院文学研究科博士課程前期2年
留学先:イギリス・オックスフォード大学(2002年9月から1年間、大学間協定に基づく交換留学)

「経験そのものが今の自信に」
歴史あるオックスフォードの建物内での1枚。その日開かれたクリスマスディナーに友人と参加し素敵な時間を過ごしました。(左端が加地さん)
 実は、留学に対して、最初から強い情熱を抱いていたわけじゃないんです。英文学専攻だったので、興味はありましたが。でも、自分の将来について悩んだ時期があり、もっとじっくり考えたいな、と思い、一年間海外で過ごすことに決めました。
 留学当初は、山がなく、見渡す限り平野が続くという地理的な違いに、違和感を抱いたんです。でも、それを含めて、イギリスの文化に慣れ親しむ中で、研究内容(二十世紀初頭の詩文学)の詩を読んでも、情景を思い浮かべられるまでになりました。言葉が現実味を帯びてきた、そんな感じですかね。
 様々な人に出会えた事も、いい経験でした。寮生活を送る中で出会った、異なる出身国、専門知識を持つ友人のおかげで、他国を身近に感じ、より現実的に捉えるようになったんです。中でも、共同部屋で生活したイスラエル出身の友達とは、とても親しくなりました。よく料理してもらったり、精神面でも支えられたり、かけがえのない友達です。
 海外で生活した経験そのものが、僕の自信になりました。将来への道筋も、一通りではなく、多角的に考えるようになりましたね。焦らなくても、今を大切にしていれば、自ずと見えてくるんじゃないか、って思うんです。交換留学制度を利用したので、勉強漬けにならず、イギリスでの生活自体を楽しむゆとりがあったのも大きかったでしょうね。今回は(財)日本国際教育協会の奨学金を受けながらの短期留学でしたが、次は、正規留学しようと思っています。
 何か特別な目的がある人も、ない人も、留学したいという思いが少しでもあるなら、とりあえず行ってみて下さい。悩んでいるなんて、損ですよ。「勢い」っていうのもありだと思います。やってみないとわからないことはたくさんありますから。現地に行けば、また違う答えが見えてくることもあると思うんです。
記事:丸一 真実(総合科学部一年)


中 矢 礼 美 さん
大学院教育学研究科博士課程後期修了、現在、本学留学生センター講師
留学先:インドネシア・バンドン教育大学(1995年8月から1年間、アジア諸国等派遣留学生(文部省))

「得られたものは頑張り抜いたという自信」
調査地では先生や生徒の家に泊めてもらっていました。その生活の中で現地に対する理解もより深まりました。(中央が中矢さん)
 私は文部省から奨学金を得て、平成七年度アジア諸国等派遣留学生として、博士課程一年の時に留学していました。しかし、調査などに費用がかさむためバイトをして、ある程度自分でもお金をためてから留学しました。インドネシアを留学先として決めたのは、インドネシアにおける教育と、インドネシアが開発と伝統文化保全との間で葛藤している点に興味を持ったからです。バンドンでは、日本のように住宅斡旋をしているところがなかったので、貸部屋をしているところを一軒一軒探し回って最終的には間借りすることにしました。私の場合は現地調査を行うための留学だったので、大学では授業をとりませんでした。一年の半分はバンドンを離れ、離島やジャングルに囲まれたところにある学校まで調査してまわりました。一番苦労したのは、知らない土地で身の安全を確保することでしたね。信頼できる人を見つけて良い関係を築くのは大変でした。論文の材料となる実際の調査では、朝六時半から始まる小学校の授業から夕方七時半に終了する中学校の授業まで、十一時間学校の授業を聞いて、授業中生徒たちがどんな仕草をしたかを観察し、先生や生徒の発言をテープから文字に起こす、という作業の連続でした。また、調査の一環として現地の人に民族舞踊を習っていたことも思い出深いですね。きっかけは、神聖な民族舞踊を生活の糧として、観光のために資源化している人たちに興味を持ったからです。日本人観光客の前で踊ったこともありましたよ。
 インドネシアでの日々は毎日が濃厚でした。もちろん、良い論文を完成させることに必死でしたし、いろんな場所、人に出会うようにしていたので、常に新しいものへの挑戦でした。留学中は大変なことも多かったですが、頑張り抜いた、という自信を得ることができました。
 留学を考えている人に対するアドバイスとしては、しっかりとした目標を持つべきだ、ということです。留学さえすれば自分が変わるのでは、という人がいますが、自分自身がしっかりとアンテナを張っていなければ、変わることはできません。留学前から語学力をつけたり、視野を広げるためにしっかりと勉強しておくことが大事だと思います。
記事:夫津木芳美(総合科学部二年)

 「Student Project」は、学生広報スタッフが記者として主体的に企画・取材等を行って学生の活動などを紹介するとともに、取材を通して記者自身が感じたことを読者に伝えていくページです。このページに関するご意見、ご感想をkoho@hiroshima-u.ac.jpまでお寄せください。


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