文・黒 瀬 基 郎

( KUROSE, Motoo )
広島大学附属東雲中学校長


歓迎会に臨む東雲の生徒たち
 2003年夏、附属東雲中学校では生徒七名をアメリカの姉妹校(ノース・カロライナ州の州都ローリーにあるエクスプローリス・ミドル・スクール(EMS))に送る交流計画を実施しました。この計画は米日財団によるグローバル・パートナーシップ・スクール・プロジェクト(GPSP)に2000年から本校が参加したことに端を発しています。両校の交流はこれまで教員の交流と教科活動の中での生徒間によるE-Mailや手紙の交換を中心に行われてきましたが、2002年に正式な協定書を交わし姉妹校提携が実現しました。こうして中学校生徒の国際感覚を磨くための交流拠点ができました。
 本校では、これからの国際化の波に堂々と立ち向かうことのできる人間を育てるには、多感で吸収力の旺盛な中学時代にできるだけ多くの子どもたちが外国の空気や人間や文化に直接触れる機会を作ることが学校教育の使命のひとつであるとの考えにより、姉妹校関係の究極の姿である生徒の直接交流を実現することにしました。そこで、この企画と本年八月に本校生徒をEMSへ送りたい旨を打診したところ、さっそく積極的な賛同と受け入れの意志が返ってきました。その後は、主としてE-Mailで具体的な問題を次々と解決し、八月二十三日の出発にこぎつけました。
 多くの先生方や保護者の見送る中、生徒七名(二年生四名、三年生三名)、教員四名(校長、教官二名、広大教官(GPSPのメンバー))は広島駅を出発し、延々十八時間を要してローリーに到着。滞在七日のうち四日をEMSでの学校生活とホームステイ(生徒)で過ごしました。期間中、生徒はもっぱら配属された各クラスで授業に臨み、東雲中の教官二名は授業に立ち日本文化(カリグラフィー、ラジオ体操、大縄飛びなど)を伝えるなど、非常に有意義な交流がなされました。
 EMSの先生方やホストファミリーの東雲中学の生徒評は、「英語が上手」「とてもユニーク」「ものおじしない」と高く、また東雲中の生徒たちの感想はそろって「ものすごく楽しい」「もっと永くいたい」と満足そのものでした。
 EMSは博物館立の公立中学校、独創的なカリキュラム、数年ごとの評価にさらされるチャータースクールなど、国立大学の附属教育実践機関である本校が学ぶべきものをたくさんもった学校であり、末永くいい関係を継続したいと思っています。EMSの先生方やホストファミリーのこれ以上ない心のこもったもてなしに感激しながら、三十日、日本への帰途につきました。
 この計画は来年六月にEMSからの生徒や先生を我々が受け入れることによって完全なスタートが切られることになるでしょう。


エクスプローリス
生徒交流会に参加して
文・神岡 舞

( KAMIOKA, Mai )
附属東雲中学校3年

 私は8年間アメリカに住んでいました。その頃は友達と普通に会話できる程度の語学力が身についていましたが、帰国後は英語を日常で話す機会がなく、どんどん忘れていっています。今回の交流に参加を希望したのは、英語を生かせる機会であると同時に、アメリカの事を思い出す良い機会であると思ったからです。
 実際行ってみると懐かしいものが沢山あり、英語だけの世界にはワクワクしました。エクスプローリスで地元の生徒と学校生活を過ごしましたが、学校の様子は、授業や服装など、やはり日本とはだいぶ違っていました。ホームステイでは、家の広さに驚くと共に、食事の時間帯などに生活の違いをとても感じました。
 私はこの交流でかなり英語を生かせたのではないかと満足しています。会話の中で色々思い出したり、文化を学んだり、思い出もできました。ホテルや店でやり取りがうまくいかなかったり食べ物が口に合わなかったりと大変な事もありましたが、東雲中の代表として7人で意義のある交流ができました。中学校生活最後の夏休みにこのように貴重な経験をさせて頂いた事に感謝しています。今回学んだ事を今後に生かして行こうと思います。


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