燃料電池用の燃料としての水素を大量に且つ安定して供給するには、現在の技術では天然ガスなどの炭化水素を改質するしか方法はありません。今までも、この水素をつくるための改質反応は金属を担体上に担持した触媒を用いて行われていますが、燃料電池用触媒としては、さらに安価で且つ高性能の触媒が必要で、このためには従来の触媒を抜本的に改良する必要があります。我々は(財)ひろしま産業振興機構から助成金の交付を受けて、広島県産業科学技術研究所で五年間のプロジェクト研究を行い、すぐれた触媒を開発するのに成功しました。開発した固相晶析法と名づけた方法で触媒を調製しますと、従来の方法に比べて金属粒子が著しく安定に高分散され、高い活性と耐久性とを示すようになります。例えば、安価なニッケルを用いて高価なロジウムやルテニウム並みの性能を引き出すことが可能です。また、さらに工夫をしますと活性金属を触媒粒子の表層にのみ担持したいわゆるEgg shell型の触媒の調製(図参照)、あるいは成型した各種の触媒担体の表層にのみ担持することにより、近年注目されているマイクロリアクターの製造にも利用できます。これらの成果は現在、企業に技術移転され、実用レベルでもその優れた性能が確認されつつあり、水素製造プロセスに実用化されようとしています。
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