文・高橋 超( TAKAHASHI, Susumu)

広島大学副学長
国立大学法人設立本部副本部長
 広島大学では、平成十三年四月に評議会の下に独立行政法人化対策会議を設置し、法人化に関する検討を進めてきました。
 法人化まであと一年となった本年四月からは、学長自らリーダーシップをとって法人化準備を進めることとし、国立大学法人設立準備会議に衣替えして検討を行い、九月末に『国立大学法人広島大学設立構想』をまとめました。この設立構想を法人化に向けて具体化するため、十月から国立大学法人設立準備会議を発展的に解消し、学長を本部長とした法人設立本部を設置して、法人化の準備を進めているところです。

大学運営の基本方針
 広島大学では、トップダウン型の組織運営を基本としながらも、従来の大学運営の基本であったボトムアップ型運営の長所も加味し、「知」の創造を促す機能が十二分に発揮できるような運営組織を構築していきます。
 各組織は、学長が定める大学全体の目標を土台として、それぞれの目標を定め、それに向かって進むとともに、大学全体の目標が達成されるように努力する必要があります。
 各組織ではリーダーの下で企画立案から実施まで自らが行いますが、実施結果に対する点検評価を行い、評価結果を組織活動の改善に結びつけなければなりません。この評価結果と改善状況は、学長の下で全学的な視点からさらに点検評価されることになります。
 新しい大学運営が有効に機能するためには、大学の構成員全員が大学運営のビジョンと基本的考え方、さらに大学全体及び各組織の運営に関する情報を共有することが重要です。このため、ITの活用はもとより、face-to-faceの情報伝達にも十分に配慮する必要があると考えています。
 新しい運営形態の下で、限りのある諸資源(人員、予算、施設など)を有効的に利活用し、自律的に教学及び経営の両面から大学運営を行う必要があります。今回は、紙面の関係から人員配分について述べることにします。
 教員を具体的にどのように配置するかは、各大学の裁量に委ねられます。教員の具体的な配分は、〈表〉の三区分を基本的な枠組みとし、中期目標・中期計画と連動した需要や必要性に応じて適切かつ柔軟に対応できる体制を整えます。この具体的配分を中期目標期間中に達成できるよう、教育研究組織の再編成と学内調整を行います。
 職員の配置についても、すべて大学の裁量に委ねられます。したがって、教学及び経営の両面にわたる新しい大学運営体制を整備し、それを円滑に行うためのサービス業務や教育研究支援業務を重視し、新しい大学運営に直接関与するという視点からの人員配置を行います。

<表> 教員定員配分の基本的枠組み

役員
 役員は、学長、理事及び監事です。
 学長は、教学・経営の両面にわたって法人及び大学の最高責任者としての職務を担うことになります。
 学長の任期は、四年とする案で現在検討中です。学長の選考は、学長選考会議を設け、そこで選考することになりますが、選考の過程では教職員の意向聴取を行うことを検討しています。
 理事は、国立大学法人広島大学には七名を上限として置くことができます。理事に副学長の肩書きを与えることは、大学の判断です。
 具体には、教育、研究、社会連携、情報、財務、人事・総務及び医療を担当する七名の理事を置き、全員を副学長とします。
 そのほかに、理事ではない副学長を置くことができることとし、当面は附属学校担当の副学長を一名置きます。この副学長は、後述する役員会の構成員ではありませんが、教育研究評議会のメンバーとなります。任期は、両者とも学長任期との関係で決定します。
 監事は、広島大学の業務を監査し、業務の効率的かつ合理的な運営を図るとともに、財務会計経理等の適正を期すことを主たる任務とします。監事は、文部科学大臣が任命します。任期は、二年です。

審議機関など
 役員会は、経営及び教学に関する大学運営上の重要事項について、学長の意思決定に先立って審議します。役員会は、原則として隔週で開催する予定です。
 経営協議会は、広島大学の経営に関する重要事項や方針等について審議する機関です。そのメンバーは、学長、学長の指名する理事等の学内委員及び学外委員です。経営協議会は、原則として年三回開催する予定です。
 教育研究評議会は、広島大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関です。そのメンバーは、学長、理事、副学長(附属学校担当)、部局長等から構成します。教育研究評議会は、原則として月一回の開催を考えています。
 教育研究組織の改編や中期目標・中期計画の策定においては、部局の意向を十分に反映させたものでなければなりません。また、教学等に関しての部局間の調整も必要となってくるため、部局長会議を設置します。
 全学委員会は、これまで教育研究活動の改善や充実、学生の就学上の指導や支援、施設等の利活用に関して、対応してきたところです。法人化後は、運営体制が大きく変わることから、原則として教育研究評議会と副学長の下におく副学長室が委員会に代わる機能を持つことになります。

部局など
 部局長は、当該部局の長期的な目標、中期目標・中期計画及び年度計画の立案と実行に関する権限と責任を有するとともに、当該部局の責任者として、教授会を掌理し、全学的管理運営体制の下で当該部局の業務に関する執行権を有することになり、権限と責任が拡大します。
 法人化後も、学校教育法に基づいて、部局には教授会をおき、部局運営を行うことになります。また、部局運営を効率的に行うため、新たに代議員会をおき、教授会から付託された事項や方針を審議し、代議員会の議決を教授会の議決とすることを考えています。
 なお、附属病院、附属図書館及び附属学校については、検討中です。
 全国・学内共同教育研究施設等の運営については、全学的な運営方針を踏まえつつ、各施設が主体的、自律的にその設置目的を効果的に達成する運営体制を構築する必要があります。各施設の担当副学長を決め、運営委員会による運営体制をとることが現実的であろうと考えています。

運営組織
 これまでと異なる点は、国立大学法人広島大学は、法人・大学の長である学長の下に役員会を置き、さらに経営協議会及び教育研究評議会という審議機関を設置し、法人と大学を一体的に運営していくということです。
 広島大学は、新たな意思決定システムの導入と教育研究支援の充実のため、従来の本部事務(事務局)及び部局等事務(部局事務室)による事務体制を見直し、教職員が一体となった大学運営組織を構築していきます。
 副学長は、それぞれ担当する業務の執行及び当該業務について、全学的視点から、企画立案―実施―点検評価―改善(Plan-Do-Check-Action)の権限と責任を有し、副学長室は、副学長が等しくこのような責任を果たし、教学・経営の最高責任者である学長の補佐としての任務を遂行することを支援する機能を持ちます。
 法人化後の教学及び経営の両面にわたる業務を実施する組織として、部・センターを設置します。各部・センターは、業務に対応して副学長が掌理します。設置する部・センターでは、現在の事務局の各部及び部局等の事務室(部)における業務を再編するとともに、新たな業務も入ってきます。また、部・センターは、関係する業務遂行に関わって、企画立案機能も有します。
 部・センターは、副学長が掌理する業務を実行する組織(実行の際の企画立案も含む)であり、副学長室は、全学的視点からの企画立案、さらには点検評価を行い、改善策等を策定する機能を持ちます。副学長の立場から見ると、室と掌理する部・センターは、一体的に運営するということになります。


<図> 副学長室・部・センター

ロードマップ
 平成十六年四月に国立大学法人広島大学を立ち上げ、中期目標・中期計画を達成するための諸体制の整備を図るためには、明確かつ具体的なロードマップを作成し、それに即した作業を行う必要があります。
 そのために、法人化時に必ず実施しなければならないこと(レベル1)、法人化後の円滑で効率的な運営のために実施しておいたほうがいいこと(レベル2)、法人化の機会を捉えて改革として実施しておいたほうがいいこと(レベル3)に分け、設立構想を具現化していきます。


広大フォーラム2003年12月号 目次に戻る