法人化後の広島大学の「ありたい姿」について、
牟田学長にその思いをインタビューしました。
―『中期目標・中期計画(素案)』は『広島大学の長期ビジョン』をベースにしているそうですが、具体的にご説明ください。


広島大学 牟田泰三
 六年間の中期目標は文部科学大臣が定めるものとなっているけれども、実際は我々が提案します。だから中期目標の素案をまずまとめ、そしてその中期目標を実施するための中期計画の素案もまとめて、九月末に文部科学省に出しました。
 書いたことについては、六年後に評価されて、我々はその責任をとらないといけないから、書いたことは確実に実現しなければなりません。大学によって考え方は違うと思いますけれども、我々の考え方は、文科省から中期目標・中期計画を書けと言われたから、その命令に従って書いて出したというだけにはしたくないということです。
 何よりもまず「大学自体がどうしたいのか」ということがあって、その大学自体のやりたいことの一環、すなわちロングスケールの我々の考え方の一環として、法人化後の姿、つまり最初の六年間の目標・計画を位置づけていくというふうにしたいと考えたわけなんですよ。だからロングスケールのビジョンがなければいけないのではないかということで、『長期ビジョン』を提示しました。
 大学というのは理念があれば動くというものではないから、十年後二十年後のことであってもいいから到達目標をはっきり定めて、そこに向かって走って行くという格好にならないといけないということで、学長に就任した頃から、「世界トップレベルの云々」ということをずっと言い続けてきたわけですよね。当初は「世界トップレベルの総合研究大学」と言ってたんですよ。ただよく考えてみたら、それだったらどこでも言えそうなことですよね。やっぱり我々の特色を出した上でということは必要だというので「特色ある」を付けたんです。もちろん特色とは何だと言われれば説明を要するんですが、その説明は別の機会にするとして、それで二年ぐらい前に「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」というのを言い始めたんです。
 この総合研究大学というのは、既に二〇〇〇年六月に出た広島大学のマスタープランの中に書いてあるんですね。僕自身も副学長としてマスタープラン部会のメンバーだったので、リサーチユニバーシティの日本語訳としての研究大学という意味で、強く主張させていただいて書くことになったんです。だからどうしてもそれは受け継いでいきたいと考え、総合研究大学というのを入れたんです。
 二年前ぐらいからそういう到達目標でやりましょうと言って皆さんにご理解いただきながらきて、昨年末に中期目標・中期計画に本格的に手を付け始めた時に、これは単なる六年間の目標を作れと言われたから作るのではなくて、長期的な考え方の一環としてやろうということになりました。到達目標そのものが長期のビジョンですから、到達目標に至る行動計画、ロードマップを作ろうということになって、それで出したのが長期ビジョンなんですよね。言葉として長期ビジョンと言うと、それそのものが到達目標のように見えるけれども、その中には行動計画まで全部書いてあるんです。
 そういうようにだんだん大学としての運営に対する考え方が固まってきたと僕は思っているんです。大学としての旗印である理念五原則(本誌、三頁参照)というのがしっかりあって、その旗印の下に目標がはっきり設定されていて、その目標に至るロードマップがちゃんと設定されたという意味で、今年一月の評議会に出した長期ビジョンで、一応我々の基本方針が確定したというふうに考えているんです。
 これは法人化があろうがなかろうがやる話ですよね。基本方針が一応きちんと定まっていて、その上で法人化にどう対処するかというと、もう自動的に我々の長期的な方針の下で法人化をこうやっていくんだというのは書けるということで出したのが中期目標・中期計画なんです。我々としてはちゃんとした論理があって、法人化に対しては、その論理の中できっちりと対処したつもりです。

―広島大学の理念について、どうお考えですか。

 広島大学には理念と呼べるものが、「自由で平和な一つの大学」という建学の理念と、九五年に出した理念五原則、その二つぐらいだと思うんですよ。理念というのは、その大学の性格づけをするような、学生も含めて、その大学に所属する人達が侵すべからざるものとして掲げるようなもの、広島大学にとってはアイデンティティみたいなものなんだというふうに僕は位置づけているんです。
 その理念をしっかり抱えておけばいいのだけれども、それだけでは大学は動きませんので、具体的に発展する方向づけというのを置こう、それが到達目標なんです。長期ビジョンというのはその到達目標へ向っていくはしごで、具体的にそのはしごを一段一段登っていけば行けるよというのを示すと考えて、ステップという言い方を使っています。この理念・目標・ロードマップという考え方がわかっていただけないんじゃないかと思ったので、七月の評議会で『大学運営の基本方針』というのを出してご理解いただこうとしているんですよね。その基本方針と、今言った理念・目標・ロードマップという考え方は、ちゃんとした整合性があって、その枠組みの中で中期目標・中期計画は捉えたという仕組みになっているんです。

―大学のアイデンティティとおっしゃいましたが、もう少し説明していただけますか。

 ユニバーシティ・アイデンティティ(UI)戦略は非常に大事なことだと思っているんですよ。どうしてそんなことを考え始めたかを説明しましょう。二年ぐらい前なんですが、「広島大学の実力は」というようなことを考えていた時期があるんですよ。見ろ、我が大学は科研費獲得八位だとかね。それから論文数も八位だとか、特許取得率も六位だとか、なにやかや、要するにトップテン以内にみんな入っているぞということで、誇示するというか何と言うか、我が大学の実力を世界に知らしめようというような意気込みでいたわけです。
 ところがある日、「そうは言っても広大というのはあんまり知られてないよ」というようなことを人から聞いて、「そんなことはないでしょう、広島大学というのは世界に冠たるものだ」というつもりでいたんですが、例えば朝日新聞社発行の大学ランキングの本を見てみますと、確かに科研費とかなんとかというのは、トップテンの中なんですが、だんだん先を見ていくと、企業の役員の方々のアンケートの結果が載っていて四十何位、それから高校の先生方のアンケートの結果も三十何位、受験生によるアンケートは二十位より上に来るのはほとんどないんです。少なくとも知名度が低いのは間違いないんですね。
 それはなぜかというのを考えてみると、たぶん理由は二つあるんだと思います。第一は、企業の方へのアンケートというのは、ほとんど首都圏、関西圏の企業の役員の方にバラまいてやっているので、首都圏で知られている大学に比べると我々は不利な立場にあるということです。だから第一のポイントは単に知られていないということですね。そこは我々ももっと宣伝して、知ってもらう必要があって、これは短期的戦略だと僕は思ったんです。
 知られていない第二の理由ですが、企業の方というのは、大学を見る時は就職してきた学生の顔を通して見るわけですね。結局その学生の顔というのが背後に大学を背負っているわけで、そうすると新入社員の顔を見て、「お前どこの大学だ」、「早稲田」とか言った時に、パッとあるイメージが浮かんで、「なるほど早稲田か」というようになるでしょう。ところが、「どこだ」「広島」「ああ、そう」という感じなわけですね。それと、広大の卒業生というのは割合と目立たないんですよ、一般的に。目立たないけれども実際やらせてみると実力があるんですよね。企業の社長さんなんかと話していると、大概そういう反応が返ってくるんです。「広大の学生は地味で目立たない。でもやらせればやるよ」というそんな感じですよね。そうするとどうしても印象には残らないですよね。でもそれが悪いかどうかは別ですよ。広大の学生みたいに地味で目立たないということもこれは一つの特徴であって、そのことが悪いわけではない。それはそれでいいじゃない、何が悪い。だけども実力で目にもの見せなければいけない。「やらせればやるよ」ぐらいじゃ駄目で、「地味で目立たないけれどもやらすとすごいぞ、だから広大はいい」というふうにならないといけないと思うんです。それで我々は長期戦略として、卒業生が、単に学力だけではなく、人格も、あらゆる面を含めて「いかにも広大卒だ」と思われるように育てていかないといけないと考えたのです。
 短期的にはできるだけ知ってもらうための広報活動をやり、長期的には広大卒の学生が一目置かれるようにする。この二つをやろうと決めまして、その短期戦略のほうを椿先生(情報担当学長補佐・UIワーキング座長)にお願いしたんですよ。要するに、「広大ブランドはこんなんだよ」というのを皆に知ってもらうように広報活動をやろうということです。長期戦略のほうは、一年ぐらい前から教育の質的改革ということを言い続けてきていて、大学院も必要ですが、差し当たり学部の教育の質を高めましょうということで、今、特別委員会で教育改革の議論をしてもらっているところなんです。そういった両面作戦のうちの片方の作戦がUI戦略なのです。
 このUI戦略は、短期戦略なので一年以内ぐらいを目途にまとめていただきたいということで、昨年の暮れぐらいから本格的にやり始めてまもなくまとまるはずです(本号の特集を参照)。UI戦略の議論は、二つに分けたんです。一つは、過去から現在にわたって広大に染み付いている特徴のようなものをはっきりと定量的に判定して、広大とはこういう大学だというのをまとめること。でもただそれだけで今後闘っていこうとするにはちょっと弱いですよね。だから、それプラスこれから先広大はこういうブランドを確立すべきだという新しい部分ですね。そこを議論すること。この二つです。UI戦略は法人化があるから始めたというわけではなくて、この二年ぐらいずっとやってきた戦略の路線上にあることで、それがたまたま法人化の時期と一致しているということだと思います。法人化は外から来たものではあるけれども、我々の路線上では「ようこそいらっしゃい」という感じで、大学改革に乗せてやっていきましょうということです。

―『国立大学法人広島大学設立構想』が九月末に出されました。これについて、特に「ありたい姿」という言葉についての説明をお願いします。

 今回、法人化後、広島大学がどこへ向かおうとしているのかを構成員に説明するために設立構想案というのを出しました。この中でロードマップという言葉を使っていますが、これは僕がさっき言った長期ビジョンのロードマップとは完全に別物ですから、そこを混同しないようにしていただきたいと思います。構想案のほうではレベル1・2・3と言っていますし、長期ビジョンではステップ1・2・3という書き方をしています。
 構想案の中で「ありたい姿」という表現をよく使っていますが、これは目標そのものです。いろんな言い方をしているから、ちょっと誤解を招くかもしれませんが、一般に到達目標と言っているのは、「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」という大学全体の長期的な目標のことなんです。そこで「ありたい姿」と言っているのは、法人化後にこうあるべしという姿、つまり到達目標よりはかなり手前の話なんです。だから、本当は平成十六年四月にそうあって欲しいということなんですが、そしてそう思って準備してきたんだけれども、十六年四月にそれを一気にやろうとすると大混乱が起こる可能性があります。それで「ありたい姿」と言って、例えば十八年四月ぐらいまでちょっと先送りして、それに向けて十六年四月からはしごをかけて登っていこうと、そういう論理になっているんです。
 一方、長期ビジョンでは、ステップ1・2・3として全部で二十年ぐらいかけて到達目標としている「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」を目指そうとしているわけです。そして今回出した中期目標・中期計画の六年間は、その長期ビジョンで言えば、ステップ1からステップ2の間ぐらいまでということです。つまり、大学院講座化と学部教育の充実で、その次の研究科の再編ぐらいまでが引っ掛かるかなとご理解いただければいいと思います。確かに長期ビジョンと法人化の関係というのは分かりにくいと思うんですが、法人化はあくまで国から言われてやること、長期ビジョンの方は我々が自主的に決めてやろうとしていることです。だからまず我々が決めて長期的にやろうとしていることの中にステップ1・2・3というのがあって、その上に法人化の中期目標・中期計画を乗せると六年間ではこの辺までですよという話なんです。

―長期ビジョンの実現には二十年ぐらいかかるということですが、一方では学長には任期があるわけです。これはどのように考えたらいいのでしょうか。

 この長期ビジョンは、僕一人でやると言っているんじゃあなくて、広島大学が長期的にやるということです。広島大学が二十年後には世界トップレベルになっていて欲しいという夢があって、それに至るためにはこういうことをしなければならん、ああいうことをしなければならんというレールを敷いた、はしごを掛けたということです。僕自身は、はしごを三段ぐらい登って、次のもっと若い人たちがあと六段登る、その次の人たちがあと五段登るとかして、二十年後ぐらいに到達するということです。これから先の歴代の学長がこういう精神を理解して、目標を達成して欲しいと思います。

学長室にて(左から牟田学長、平野広報委員長、福岡副委員長)
 当然僕はそういうことを言ったからには、この大学がそうなるように仕向ける責任があるので、後継者養成、と言っても特定の人を養成という意味ではないですが、若手でこの大学を背負って立ってくれるような人達を多数養成する義務があると思っています。
 僕は大学でも企業でもそうだと思うんですけれども、そこのトップというものは、本来内部から育てるべきものだと思っているんですよ。そうでないと、今言ったような到達目標だの長期ビジョンだのというのを本当に理解してもらえないと思うんです。広大の中にせめて十年ぐらいいて、それで大学のトップが何をやっているかを始終見て、学長補佐だの、副学長だのを若い時代に経験して、そして大学運営の勘をつかんだような人で、かつ能力がある人が引き継いでくれるべきだと僕は思うんです。
 企業だって長期的に繁栄している企業は皆そうやっているんですよ。外から呼ぶ場合というのは、大体危ない時で、発展を続けている時は中からいい人が出て、引き継いでいくものなんです。そういう仕組みを僕は作りたいと思っているんです。だからそこまで考えた上での長期ビジョンであって、僕がいる間にここまでやるというような短絡的な事は考えていないということなんです。

―法人化以後は、意思決定について、これまでのボトムアップ型ではなく、トップダウン型になると言われています。学長は「ビジョン共有型」という言葉を使っておられますが…

 ビジョン共有と言う時、学長と一部の人が考えている事を一気に全員共有するというのは、なかなか難しいんです。現在はITの時代だからEメールもあるし、ホームページもあるし、そんなのを使えば一気にできるじゃないかと言ってもなかなか難しいんですよ。そうするとまず大事なのは戦略会議メンバーぐらいが本格的にビジョンを共有しないといけないんですよね。それはかなりできていると思います。そこからどう拡げていくかでしょうね。その点はいろいろ工夫を要するところだと思っています。
 トップダウンがやりやすくなったぞと、命令一下みんな動かしていくというようなことは僕はやりたくないと思っているんです。これは僕の感性の問題ですからね。僕は純粋にトップダウンというのは、たぶん駄目だと思っているんですよ。だって自分がダウンの方だと思ったらすぐ分かるじゃないですか。トップはやりやすいですよ。あれやれ、これやれと言っていればどんどん動くわけですからね。ですが、やっぱり現場で働いている人がトップが言っていることを理解して、それはそうだ俺達がやらなきゃと言ってやるのと、言われたから何か分からないけれども嫌々やるというのとは全然違いますよね。だから現場の人がビジョンを完全に理解して、自分達のものとしてやるというやり方はないかと思っているんですよ。それが七月に『大学運営の基本方針』を出した理由なんです。

―法人化後の内部運営についてお尋ねします。人的・物的資源の全学管理はどうして必要なのでしょうか。

 僕は、この人的・物的・財的資源の全学管理というのを、法人化したらどうしても強化しなければならないと思っているんですよ。後では対応がしにくいですから。ただ、どうやるかなんですがね。先ずもって、運営費交付金がどうなるか未だにわかりません。これは例えばの話ですけれども、十六年度はお金が前年度の実績の百%来るとしますよね。でも十七年度については例えば一%減っているとか、五%減っているとか、結果的に起こり得ることですよね。そういう一%ないし五%減っている原因はわからないんですよ。だってお金が五百五十億とか、六百億とか来るだけの話ですからね。
 そうすると、例えば定員枠を何学部には何名とか固定化していて、人件費がこれだけ減ったから各学部は一名ずつの定員減ですよとか、そうはいかないですよね。だからその時に対応しやすいという意味では、全学管理しておいたほうがいいんです。ここまでは容易に想像できる客観的事実です。
 でも、僕は、そういう受け取り方はしないほうがいいと思っているんです。要するに状況はこんなに暗いぞと、だから我々は対応するために全学管理しないといけないんだという言い方をしたら、夢も希望もないじゃないですか。そうすると構想案の「はじめに」に書いた精神に反するんですよ。僕にはそれはできないんですよね。ではどうするのかというと、定員削減だ何だということがあって、対応するためには弾力的な運営が必要なんだけれども、それは主たる理由ではなくて、むしろ全学管理で弾力的運営をやることで、新しい事業ができるということが主たる理由なんだと。事実そうなんですよね。
 とにかく夢をまず見て、それに向かって皆で協力しあってやりましょうという精神でやるんであって、夢も希望もないから、みんな我慢しなさいというやり方はしないというのがまず基本方針なわけです。
 それから、そうは言っても、改革には痛みを伴うのも事実です。でも、夢や希望を与えるためだからと言って、ブルドーザーを使ったみたいにバリバリ進めて、けが人が出てもやむを得ないというわけにはいかないでしょう。だから、一度に変えるのではなくて、可能な限り連続的につながるように移行期を設け、みんなで工夫もして痛みも分かち合いながら、夢に向かって前進したいと思うわけです。それで二、三年経ってみると人員が何人か減っていたとかということもあるでしょうが、これは仕方がないことです。そういうやり方をしたいと思っているのです。

―法人化後は大学間競争が激しくなると予想されますが、それにはどのように臨めばいいのでしょうか。

 とにかく競争社会の中にいるのだから、競争で生き残り、勝ち残っていかなければならないという大原則はあるけれども、その中で、内部的な対応として緩和策があるはずだと僕は思います。要するに、競争と共存とを併用する方法が何かあるはずだといろいろ考えるんですよ。競争社会の中で勝ち残っていくためには、広大として強い部分をより強くしていかないといけないですよね。それで打ち勝っていく必要があるんですよ。
 ただ長い目で見た時には、広大の中の強い部分を強くするのはいいんだけれども、それだけでいったら、他を切り捨てることになるでしょう。これは長続きはしないと思うんですよ。だって強い部分が永遠に強いとは限らないわけですし、世の中の情勢は変わるわけですから。ある時がきたら強い部分と思っていたものが、もうスポットライトを浴びなくなってくると、他の強い部分が必要になってくるんです。その時にみんな切り捨ててしまっているともう何も無いんですよ。そうしたらもう広大全体が潰れるしかないでしょう。
 だから僕は強い部分を一本でなくて、三本でも五本でもいいですから育てていきますが、そうでないところも切り捨てません。今はスポットライトを浴びているところが羨ましいでしょう。それは我慢してくださいよ。でもひょっとすると、将来あなた方がそうかもしれないんだから予算措置はします。だからしかるべく努力をちゃんと続けてください。それでその分野での競争には打ち勝ってください、というやり方が僕は必要だと思うんですよ。

―学生にとって、法人化はどういう意味をもっているのでしょうか。

 学生諸君にとって法人化はどういう意味があるかという根本的なところに立ち返って考えると、僕はこういうことだと思いますよ。国立大学を国の機関から切り離して、法人格を持たせ、予算措置は運営費交付金という形でやるようにしたというのが法人化のポイントでしょう。そこから判断すると、より民営に近づいたということですよね。ということは、国立大学法人はこれまでの国立大学に比べるとより経営に敏感になったと言ってもいいわけです。これまで国立大学でいた時の我々の学生に対する感覚はどうだったかというと、どっちかと言うと、教えてあげる弟子だという感覚でしょう。だから卒業生に対する見方も、我々が作った製品だというような見方をしていたわけですよ。
 法人化した後というのは、経営にセンシティブになるわけです。そうして学生とはなんだということをよく考え直してみると、これは大事なお客様なんですよ。要するに顧客なんですよね。企業に例えて言えば買物に来てくれるお客さんなわけですね。そして我々は教育という商品を学生さんという顧客に売って生計を立てている立場でしょう。そういう観点がよりはっきりしてきたわけですね。そうするといい企業はどうするかというと、お客様本意で顧客第一、お客様は神様ですと言って顧客を大事にして経営する。だから我々もより学生諸君を大事にして、学生の立場から見て、広大が使いやすいものになっているかどうか、学生諸君が満足して出ていってくれるかどうか、そういう見方に変わると思います。ここが一番大事なところだろうと思っているんです。

―長時間ありがとうございました。
<聞き手>
 広報委員会委員長  平野敏彦
   同  副委員長 福岡正人


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