五十年史編集室だより(22)

スポーツ王国広島と広島大学



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 硬式野球部が二十年ぶりに明治神宮大会へ進み初勝利をあげたことは、前号の本誌でも伝えられたところです。新入学読者のなかには是非野球部へ入ろうと心に決めている人もいることでしょう。今回はスポーツと広島大学との関係を点描します。

第40回フェニックス駅伝
(平成14年12月3日)
代表的なスポーツ
 広島大学の前身校は、それぞれが代表的なスポーツを持っていました。二、三例をあげると、広島師範学校は、明治期の花形スポーツであったボート競技で一九〇六(明治三十九)年に、広島スポーツ界初の全国優勝を果たしました。広島高等学校は、赤シャツをトレードマークにしたサッカー部の活躍が全国に知られていました。広島高等学校、広島工業専門学校、広島高等師範学校は三高専定期戦を盛んに行いました。これらは広島をスポーツ王国と呼ばせる素地を形成しました。
 広島大学の代表的スポーツをひとつあげるとすれば、体育会の主催するフェニックス駅伝の名があがることでしょう。この駅伝は体育会が発足した一九六三年から開催されており、昨年で四十回を数えています。当初は東千田町の広島大学と宮島との間の往復約四十キロを「学長杯争奪フェニックス駅伝」と題して始められました。時代とともにコースは変わりましたが、学内外を問わず参加できることや、真剣な競走を楽しんだり、仮装して走って楽しむといった柔軟な運営方針の伝統は、現在に伝えられています。

スポーツの振興と指導者の存在
 スポーツの振興における指導者の必要性は誰もが認めるものでしょう。広島県がスポーツ王国と呼ばれていたのは、この指導者の存在が大きく影響していました。東京高等師範学校出身の広島師範学校教師、河津彦四郎氏は「広島県におけるスポーツ界の開祖」とされる人でした。彼は自身がスポーツ万能の選手として知られる一方で、教え子を通じて広島県内のスポーツ普及に尽力し、広島体育協会を結成しました。
第3回フェニックス駅伝
(昭和51年3月)
 広島高等師範学校には杉浦卯三教授がいました。杉浦教授は大正後期からの二十年間の在職中に、陸上競技、バレーボール、バスケットボール、中国駅伝の創始者として広島のスポーツ界に貢献しました。このため「広島地方の近代スポーツの育ての親」と位置づけられています。
 草創期の近代スポーツ普及には高等師範学校が中心的役割を果たしました。授業科目に体操があったことや、外国人教師による指導の存在、そして卒業生が教員となって生徒を指導したことが最大の要因でした。
 現在の広島大学にも各競技の専門家が多くいます。専門家のなかにはテレビでの競技解説や、全日本選手のコーチとして著名な人もいます。また卒業生には教員としてスポーツに関わり、例えば甲子園で活躍する人もいます。高みに登って目立つ人がいるという事は、それを支える裾野も広いことを示すと思われます。そのような人材を大学として有効に活かし、学外に適切に宣伝すれば、今後のスポーツ界の振興にも一層役立ちそうです。

体育会がめざすもの
 体育活動の向上と、会員相互の親睦を計ることを目的に結成された体育会は、今年で創立四十周年を迎えます。
 後に初代総合科学部長となる今堀誠二教授は、体育会の発足に際して、オックスブリッジのレガッタが全国民の血を湧かす大事業であることに思いを馳せました。体育会初代会長の皇至道学長は「体育会といえば、とかく選手が中心になって、一般学生は傍観者となり勝ちであるから、選手よりもむしろ一般学生に、運動や体育に対する関心をもってもらいたかった」と回顧しています。どちらも大学全体のスポーツ振興を望んだもので、それにより構成員の共通理念や、社会からの評価を確立することを含ませていました。
 しかし近年の学生の体育会離れを受けて、各団体は恒常的な部員不足に悩まされています。「学風の樹立」をめざして体育会の創設に携わった人々はこれをどう見るでしょうか。最近の学生気質の変容を受けて、いわゆるステレオタイプの体育会系団体は存在しません。少しでも興味の湧くスポーツがあれば、この機会に挑戦してみては如何でしょうか。

(小宮山道夫)

 平成十年に五年計画で開設された当編集室は、計画期間の満了にともない、平成十四年度末をもって閉室いたしました。「編集室だより」は今回が最終回です。長らくのご愛顧ありがとうございました。
 『広島大学五十年史』は、現在資料編の配布に向けて活動中です。のこる通史編は平成十五年度中の刊行を予定しています。今後の編纂事務および提供いただきました資料は、編集室を改組して発足した広島大学文書館設置準備室が引き継ぎます。準備室は平成十六年四月の文書館設置に向けた業務を担当します。


<連絡先>広島大学文書館設置準備室 電話 0824(24)6050 FAX 0824(24)6049


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