「大事なのは、選択した結果ではなくて、選択したところで
        精一杯楽しんだり、頑張ることだと思うんです。」

選択を迫られた時
 ピアノ教室に通い始めたのは四歳の時です。その頃からピアノが大好きで、大学も音大に進みたいと考えていました。でも、高二の冬に、父が病気で他界し、志望校を広大の教音(教育学部音楽文化コース)に変更することになったんです。最初は、戸惑いました。父の死は、現実として受け入れがたかったし、自分の将来に対する不安もなかなか拭い去ることができませんでした。ピアノは続けていきたい、でも、広大の教音に行けば、ピアノと接する時間は絶対的に減るし、深くピアノについて勉強出来ないのではと思いました。これまでの人生の中で一番大きな選択を迫られて、前に踏み出せずにいたんです。でも、母やピアノ教室の先生から、「広大だからできることもある」というアドバイスを受け、気持ちを切り替えました。とにかく、音大受験を考えていた分、他の受験生から出遅れていたので、残された短い時間、集中して勉強しました。もちろん、受験までは、自分の選択は間違っているかもしれないと不安に思う時もありました。けれど、そう感じるたびに、決めたからには、自分を信じてやるべきことをやるだけと言い聞かせるようにしました。無理かな…、絶対無理だろうな…と思っていたので、無事合格した時は本当に信じられなかったですね。

時間を止めたい…
 とにかく今は、ハードな日々を送っています。大学の授業が終わると、バイト、勉強、ピアノの練習。時間がない中、集中してやっています。ただ、あまり気合いを入れすぎてもいけないので、クラシック以外の音楽(ソフィア、矢井田瞳など)を聞いたり、オンエアバトルをみて大笑いしながら、息抜きをしています(笑)。

めったにないチャンスを楽しもう
 アカデミーは、教室の先生に紹介してもらいました。海外でのレッスン、しかも国際的なコンクールで審査員を務めているような先生に師事するわけですから、不安でしたが、こんな機会はめったにない、楽しんでこようと思いました。プラハでは、インディーチ先生とラプシャンスキー先生に交互にレッスンしてもらいました。どちらの先生も、「あなたは、ここをどうやって弾く?」と尋ねてこられました。日本人に必要なのは、こういった自主性なのだなと痛感しました。アカデミー参加当初から、ファイナルコンサートに出たいと思っていたので、出場が決定した時は、本当に嬉しかったですね。本番までは、緊張するというわけでもなく、ただレッスンを集中して受けました。当日は、自分自身が出せる精一杯の力を出せたと思います。演奏後、先生が私の肩を抱えて「エクセレント!」と言ってくださった時は、自分が選んだ道で頑張ってきてよかったなと思いました。

大事なのは自分を信じること
 受験やアカデミーでの経験は、私に、大事なのは、選択した結果ではなくて、選択したところで精一杯楽しんだり、頑張ることだということを気づかせてくれました。そして、たとえ選んだ道が、自分の希望通りではなくても、自信を持って歩んでいけば道が開ける―そう思いますね

 記事  筒井 志歩
(総合科学部二年)


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