発明・特許紹介

一粒で二度おいしい微生物
文・秋 庸裕
 (AKI, Tsunehiro)
大学院先端物質科学研究科助教授

 ドコサヘキサエン酸(DHA)は青魚などに多く含まれていて、食べると頭が良くなると言われている脂質成分です。動脈硬化、炎症やガンを抑える働きもあり、健康食品の素材として注目されています。しかし、魚から取り出して精製するのは効率が悪いなどの問題がありました。
フラスコで培養したところ
 そこで私たちはDHAをつくる微生物に着目し、培養することによって大量生産する方法を摸索してきました。生産性の高い微生物を求めて瀬戸内海を探索していたところ、ほとんどが白色であったのに、あるとき鮮やかなオレンジ色を呈するDHA生産微生物(写真)が得られたのです。調べてみると、その正体は
β―カロテンやアスタキサンチンなどのカロテノイド色素でした。
 特にアスタキサンチンは、生活習慣病やガンなどの原因になると考えられている活性酸素を除去する作用が極めて高く、「二十世紀最強の抗酸化物質」と呼ばれています。事実、DHAと同様に、様々な疾患に対する抑制効果があることが認められ、最近では、アスタキサンチンを含む飲料も販売されています。また、DHAが酸化されやすいことから、アスタキサンチンの共存による保護効果も期待されます。
 それぞれ単独で一世を風靡したDHAとアスタキサンチン。これらを同時につくる微生物で新たな食品の開発をめざしています。

公 開 番 号:2003―052357
発明の名称:海洋性微生物とこの微生物を用いたカロテノイド系色素および
      高度不飽和脂肪酸の製造方法
出 願 人:科学技術振興事業団
発 明 者:秋 庸裕、鈴木 修、小埜和久、重田征子、河本正次



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