留学生の眼(95)

花見弁当の冷たいご飯
―食文化の違いについて

文・宋 暁非

( SONG, Xiaofei )
大学院国際協力研究科 教育文化専攻 博士課程前期2年
(中華人民共和国 出身)




中国留学生学友会岩国花見
(4月5日,筆者右から2人目)
 来日して四年間がたちました。今ではほとんど日本人と同じ食生活を行っていますが、来日した最初のことを思い出すといろいろ面白いことがありました。そこでこの場を借りて少し食文化の違いについて述べたいと思います。

冷たいご飯は食べられない
 四月、桜の季節がやってきました。綺麗な桜の下に皆が集まって、一緒に話しながら花見弁当を食べるのは、この季節に一番よく見られる光景でしょう。花見の時に弁当を食べるのは当たり前だと思っている日本人がほとんどと思いますが、実はこの小さな弁当に大きな文化の違いがあります。
 来日した時も桜が舞う春でした。桜の美しさに驚きながら、花見弁当にも驚きました。弁当の色が鮮やかで、とても美味しそうでした。しかし、一つおかしいことに気付きました。それはご飯が冷たかったことです。箸はすぐに止まっていました。結局なんとか食べ終えましたが、さすがに初めての冷たいご飯にちょっとがっかりでした。
 なぜそう思ったかというと、中国ではお米は日本と同様に主食ですが、基本的に冷たいご飯は食べないからです。いつからそういう習慣が生まれたかよくわかりませんが、電子レンジが無かった時代に冷たいご飯が食べたくないから、炒飯という料理が誕生したのではないでしょうか。中国人はとにかく温かいご飯が好きです。

味噌汁かスープか
 昼食はよく研究室の仲間と一緒に食堂で食べています。毎日ご飯を取った後、必ず味噌汁も取ります。いつの間にか味噌汁は私の食生活に欠かせないものとなりました。しかし四年前に初めて味噌汁を口にした時、「何?これ!」とびっくりしました。初めての味噌の味で、中国のスープとのギャップに驚きました。中国のスープは、大抵長い間じっくり煮込んでいるため、だしがいっぱい出ています。中国のスープは日本の味噌汁のように食事をしめるためのものではなく、食事の豊かさをさらに引き出すものと思っています(個人的な意見)。両方とも食事に欠かせないものですが、少し違います。

なんでも生で食べられる
 中国では生で食べる食材はめったにありません。煮るか、炒めるか、いずれにしても火を通してから食べるのが基本です。でも私は日本に来てから、いつも新しい発見の日々でした。まず、魚の刺身、そして白子、ナマコ、酢がき、また牛刺し、馬刺し。それだけではなく、日本では野菜もほとんど何でも生で食べられていますね。中国では空から海まで何でも食材になるという諺がありますが、それに対して、日本では本当に何でも生のままで食べられていることを実感しました。実は今では個人的に以上の生ものは大好きです。でも普通の中国人に対してはとんでもない話かもしれません。
 まだまだ、食生活の違いについてたくさん面白い話があると思います。中国と日本だけではなく、いろいろな国の留学生が日本に集まってきて、いろんな食文化があり、それに困ったり、びっくりしたり、目から鱗が落ちたり、日本では当たり前のことでも我々留学生にとって新鮮な面白い初体験かもしれません。これからもお互いの交流がもっと進むように祈っております。
(原文・日本語)



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