PHOTO ESSAY -70-  アフリカの自然




1:アフリカ最高峰キリマンジェロ山(タンザニアへ向かう飛行機から)

2:タンザニア,ドドマ近郊の水源地調査地域(本人)

直面する環境問題 文/写真・小野寺 真一
(ONODERA, Shinichi)
総合科学部
自然環境科学講座助教授
Confronting Environmental Destruction


3:水源地斜面の上空からの写真
 東アフリカの赤道付近の国、タンザニアは、サバンナ、セレンゲティ国立公園、キリマンジェロ山(写真1)、ビクトリア湖などのイメージで有名です。まさに、自然の宝庫です。私は、大学院生時代の一時期(1989年10月から1991年3月)に、内陸の主要都市(当時の遷都予定都市)ドドマ近郊のサバンナの水源地において地下水研究を目的に歩き回っていました(写真2)。以下、その時の鮮烈な印象を写真とともにご紹介致します。
 写真3は水源地斜面の写真です。写真の下側から上側に向けて、台地、斜面、低地(季節的な湿地)と高度が30m程度低下し、それとともに土壌の色が明瞭に変化しています。それぞれ、灰褐色、赤色(ラテライト)、暗灰色です。この土壌の色の分布は、他の水源地でもみることができました。その当時、これは大きな発見だと思いましたが、実は1930年にドイツの大先生が発表していました。しかし、本当に面白いのはこのメカニズムだと思います。また、斜面上にある多数の筋はガリ(溝)で、土壌侵食の激しさを物語っています。この斜面における雨のときの様子が写真4です。このように雨は、植物直下を除くほとんどのところで、地表面にあふれて流下し、土壌を削り取っていきます。薪炭目的で過剰に森林伐採が進み、過放牧の続く本地域では、深刻な土壌浸食とそれにともなう土壌劣化により本来のサバンナの風景は失われつつあります。本来は、バオバブの木という高木が点在しています。写真5は、私の下宿していたところにあった、伐採を免れて1000年以上生き抜いてきたと思われる大木の様子です。まさにこの村のオアシスでした。ちなみに、私の長女の名前(沙樹)はこの木のイメージでつけました。
 人生にとっての大きな飛躍となったこの滞在は、体験したもの全てが私の宝のように思えます。タンザニア、サバンナ地域は、今では世界遺産となった国立公園を通して、世界中の人々にも大きな感動を与えています。しかし、今、失われていく自然を目の当たりにするとともに、マラリアやエイズで知人たちが亡くなる事態にも直面したことは、大きな衝撃でした。

4:降雨時の斜面の様子

5:バオバブの木(下宿先にて)


広大フォーラム2003年8月号 目次に戻る