文・相原 玲二
(AIBARA Reiji)
情報メディア教育研究センター教授

HINETは縁の下の力持ち!
 HINET(Hiroshima university Information NETwork system)は、東広島地区、霞地区、東千田地区および附属学校など、広島大学の各キャンパスの内外を結ぶ情報通信ネットワークです。電子メールの送受信やインターネットの検索サーバの利用などは、今や誰もが毎日利用していると思いますが、その情報流通の広島大学部分をささえているのがHINETです。大学で提供しているサービスは世界中から利用できますので、HINETは二十四時間三百六十五日働き続ける、縁の下の力持ち的な存在となっています。
基幹ネットワーク接続装置 地下共同溝 キャンパス間接続
光ファイバー成端箱
 HINETの最初の導入は一九九三年でしたが、その後何度かの機能拡張や更新などを経て、現在は驚くほど機能が強化されています。導入当初はせいぜい電子メールやウェブサーバの閲覧利用程度しかできなかったのですが、最近では動画像の閲覧や、遠隔会議なども楽にできるようになってきています。二〇〇一年には、東広島地区、霞地区、東千田地区を結ぶ光ファイバ回線を設置することができ、これにより三キャンパス間の通信速度は、各キャンパス内とほぼ同じになりました。つまり、ネットワーク的な性能としては、別キャンパスにいることを意識する必要がなくなりました。さらに、テレビ放送とほぼ同じ、高品質のテレビ会議システムによる遠隔会議が、東広島・霞間で最大四組まで同時に利用できるようになり、全学委員会の会議などで大いに利用されています。また、同等のシステムを利用した遠隔講義も、東広島・東千田間で同時四組まで可能で、法学部・経済学部の講義を中心に、日常的に活用されています。
遠隔講義の様子(法学部・経済学部)

附属学校でもきれいな映像で遠隔授業!
 ネットワークの整備・充実は、三キャンパスに留まらず、附属学校などにも広がっています。附属学校四地区のうち、翠地区(附属中学校・高等学校)と福山地区(附属福山中学校・高等学校)については、平成十四年度学長裁量経費により遠隔授業システムを導入しました。本学主要三地区と附属学校を結ぶネットワーク回線はそれぞれ二Mbpsで、高品質な映像を送るには不十分でした。そのため、遠隔授業システムを導入した二地区について試行的に二十Mbpsまで増速し、東広島地区の教育学部との間で実際に遠隔授業を行いました。その結果、十分利用できることが分かりましたので、平成十五年度より本格的な遠隔授業システムの利活用を推進中です。このように、HINETは常に整備・充実を繰り返しています。
動画像伝送装置(教育学部) 教育学部と附属中・高(翠)
間の授業 平成15年3月3日
教育学部と附属福山中・高
間の授業 平成15年3月18日

新しいネットワークサービス
 本学のすべての構成員がHINETを有効に活用できるよう、情報メディア教育研究センターでは、新しいサービスの開発および提供を行っています。その中から、最近開始したサービスをいくつか紹介します。
 ウェブメールサービスは、NetscapeやInternet Explorerなどのウェブブラウザを使用して広大メールの送受信ができるサービスです。このサービスを利用すると、インターネットに接続されたウェブブラウザさえあれば、学内外を問わずいつでも広大メールの送受信を行うことができます。
詳細はhttp://www.media.hiroshima-u.ac.jp/mail/webmail/

 携帯メールサービスは、携帯電話各社のインターネット接続機能(ブラウザ機能)を使って広大メールの送受信ができるサービスです。このサービスを利用すると、学外も含め携帯電話の利用可能圏内ならどこでも広大メールの送受信が可能になります。
詳細はhttp://www.media.hiroshima-u.ac.jp/mail/k-tai/

 VPNサービスは、自宅や他大学などから、広大メールサーバなどに安全にアクセスし、学内コンピュータに限定したサービスを利用できるようにするサービスです。VPNは通信路を暗号化することにより、経由するネットワーク上での盗聴などによる情報漏洩の危険性を最小限に抑えることができます。
詳細はhttp://www.media.hiroshima-u.ac.jp/hinet/service/vpn/

学外ネットワークとの接続
 どんなにすばらしい学内ネットワークができたとしても、学外のネットワークとの接続がスムーズでなければ、その利用価値は半減します。HINETは最初の構築以来、学外との接続についても年々、変更・増強を繰り返しています。本学は、東広島地区に学術情報ネットワークSINETのノードが設置されており、SINETを経由した学外接続を行っていますが、より高速な接続およびSINETの障害対策等を目的として、NPO法人中国・四国インターネット協議会(CSI)を経由し、広島市内で複数の商用インターネットサービスとも接続しています。同時に、本学は多くの近隣大学、研究機関等と広島市内で相互に接続し、当地域の学術系情報通信基盤の整備・充実推進の中心的役割を果たしてきました。地域に根ざした基盤整備を進めた結果、先進的なインターネット技術の共同研究や、小中高校でのインターネット利活用の実証実験などを強力に推進することができ、インターネットの世界では全国的に注目を集める地域のひとつになりました。
 本年秋には、スーパーSINETノードの整備も予定されています。スーパーSINETは、先端的学術研究機関間の連携を強化して、日本の学術研究を飛躍的に発展・増進させることを目的とする超高速ネットワークです。毎秒十ギガビットの光通信技術を用いる世界最高速の研究用のインターネットで、国立情報学研究所が平成十四年一月から運用しています。本年秋には、本学を含め二十二の大学・研究機関等がスーパーSINETに接続され、それら機関の間は学内ネットワークと同等の速度で通信が可能になります。例えば、大量の計算結果を短時間で転送することや、ハイビジョン品質の動画像伝送をリアルタイムに行うことができます。これを有効活用することにより、本学での先端的学術研究が大きく推進することが期待されています。


広大フォーラム2003年8月号 目次に戻る