キャリア全体を考える中で就職活動を捉えなくちゃいけない…奥が深くて難しいわね。ところで田中先生、もう少し就職のことについて質問してもいいですか?やっぱり目の前の問題が気になって。
田中先生 もちろん、なんでも聞いてください。

◆就職に資格は有利?
 じゃあまず、資格取得が就職に有利だ、というのは本当ですか?先生が言われた「能力(八頁参照)」の証明にもなりそうですけど。

田中先生 まず、新卒採用の場合は、語学能力は別にして資格は決め手にはならないと考えてください。確かに取得している資格の内容や難易度は、個人の能力や実力を示す指標となりますが、単純に資格があれば内定が得やすいというのは安易な発想です。自分のキャリアビジョンを描いた上で、なりたい職業や、やりたいことに資格が必要なら、早めに取り組んでください。

◆自分の専門と就職に関連性が見いだせない…
 うーん、そうは言っても私の専門が直接仕事に活かせるとは思えないし、資格も何もないのは不安なのですが…。

田中先生 自分が取り組んできた活動と職業に関連性がないからと不安になる必要はありませんよ。学部や専門性を問わない会社や職種がほとんどです。

たけし 仕事との関連性ねぇ。ま、俺は理系だし、関連する研究職に就くつもりだから、もともとそんなこと考える必要はないんだけどね。

田中先生 たけしくん、自分の専門に関連する仕事に就くとしても、授業に出て単位を取得するだけで安心するのは問題ですよ。近年、就職試験やその面接では、机上の知識だけではなく、それをどのように企業や社会で活かしていくかが問われるようになっているんです。
 いずれにせよ、重要なのは学部や専門そのものではありません。多様な選択肢の中からなぜその研究テーマを選んだのかやその社会的意味、また、それに対してどのように取り組んだのかといった個人の課題解決能力が問われるのです。とっさに答えることはできませんから、早期から整理し、考えておく必要がありますね。
◆マニュアルがあれば就職なんて怖くない!?
 分かりました。確かにそれはエントリーシートに記入する段階から聞かれそうですしね。…そう言えば私、エントリーシートの書き方も全く分からないわ。

たけし もぉ、ずっと切りがないんだから。それはマニュアルとか見れば平気でしょ?生協にもたくさん売られているじゃない。

田中先生 確かに、マニュアルを信じる人は多いのですが、これにも弊害があるので注意してください。
 たとえば、多くのマニュアルが、「具体的に体験談を書くよう」勧めています。そして、それを読んだ学生の中には、具体例を書き回答欄を埋めるだけで満足してしまう人がいるようです。しかし、この場合「問いに対して簡明に答える」という根本的な条件が満たされていないものがほとんどです。体験談も「何をしたのか(内容)・なぜしたのか(理由・目的)・成果はどうだったか」という風に整理して答えなければ、いくら具体例を書きスペースを埋めても評価されません。つまり、便利なはずのマニュアルも、読み違えると就職活動がうまくいかない原因になります。不本意な結果が続くようであれば、ぜひ相談に来てください。

たけし はーい。

田中先生 自分の学生生活を充実させ、キャリアについて考えるといっても、実際にはどうすればいいのか戸惑うことが確かにあると思います。そんな時キャリアセンターに来て、資料を見たり、相談員と話したりすることは、新たな活動を起こすきっかけになるかもしれません。たけし君のような低学年次の学生さんでも、大いに歓迎しています。ぜひ、今度は友達と一緒に覗いてみてくださいね。

 はい。私も話を聞いてちょっと安心しました。

&たけし 田中先生、ありがとうございました。


〜田中先生からひとこと〜
愛さんもたけし君も「生き方が見えるいい顔」なので感心しました。悩み考え行動する「たくましい顔」ですね。社会や企業が求める学生の顔と言えるでしょう。生気が感じられない顔や、何がそんなに不満なの?という顔は歓迎されませんからね。

〈担当〉
 夫津木芳美(総合科学部三年)
 丸一 真実(総合科学部二年)


広大フォーラム2004年10月号 目次に戻る