発明・特許紹介

より小さくより高性能な
微粒子(ナノ粒子)を製造する技術
文・ウレット レンゴロ
 (Wuled Lenggoro)
大学院工学研究科化学工学講座助手

 電子材料、医薬・化粧品、触媒などの幅広い分野で、ナノ粒子を製造する技術へのニーズが高まっています。一ナノメートル(nm)は百万分の一ミリメートルであり、数nm〜百nmサイズの粒子がナノ粒子と呼ばれています。
 例えばプラズマディスプレイに使う赤・緑・青色の蛍光粒子の場合、現在、塊を砕く固相法で生産された直径数マイクロメートルサイズの蛍光粒子が使われています。もし、さらに小さい数十ナノメートルの蛍光体ナノ粒子を使えば、解像度は飛躍的に向上し、光の散乱が減るためエネルギー効率も高まることが見込まれます。しかし、固相法では粒子の微細化に限度があります。
 そこで私たちは、溶融塩を加えた原料溶液を霧状にし、その小さな粒の中で均一なナノ粒子を作る新手法(塩添加噴霧熱分解法)を開発しました。この手法では、溶融塩を原料溶液に混ぜ、超音波などを加えて微小な液滴群(霧)を発生させ、その霧を加熱します。この液滴の中では、成長するナノ粒子の周囲を溶融塩が取り囲み、粒子同士の凝集を阻むため、一つの液滴の中で多数のナノ粒子ができます。また、製造温度や溶融塩の量を変化させることで、粒子自体のサイズを変えることにも成功しました。
 私たちが開発したナノ粒子を用いることで、これまでとはまったく違うアプローチによる新技術の展開が期待されています。例えば、高機能化、高性能化、省エネルギー化が求められる、超薄型ディスプレイ、大容量ハードディスク、高性能太陽電池や長寿命電池、高速医療検査システム、自動車用軽量水素貯蔵システムなどの開発に貢献できると考えています。


異なる製造法により合成された粒子の電子顕微鏡写真

熱流体材料工学研究室のホームページ
http://home.hiroshima-u.ac.jp/aerosol/

 発明の名称:噴霧熱分解法による微粒子の製造方法
 発 明 者:奥山喜久夫、ウレット レンゴロ、夏 斌
 出 願 人:科学技術振興事業団
 特許願2003-019427


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