平成16年4月1日から、すべての国立大学は法人に移行し、広島大学も「国立大学法人広島大学」として新たなスタートを切りました。広島大学では、国立大学の法人化を、広島大学をより良い大学にするための大学改革の一環として捉え、法人化に向け様々な取り組みが進められてきました。そして、本年1月、国立大学法人としての広島大学の姿が「国立大学法人広島大学設立構想」としてまとめられています。牟田学長は、学長就任以来「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」という到達目標を掲げ、その目標に向けての行動計画として「広島大学の長期ビジョン」を提示されていますが、本構想は基本的にこれをベースにして具体化された内容となっています。
 「国立大学法人広島大学」としてのスタートを迎え、牟田学長から所信を述べていただきました。

 広島大学では、国立大学の法人化を、本学をより良い大学にするための大学改革の一環として捉え、本学の発展に資するものと位置づけてこれに対応したいと考えます。ところで、改革は、人々に夢と希望を与えるべきものであり、彼方にそれが見えるからこそ、改革によってもたらされる苦難も、人々が心を一つにして力を合わせ、勇気を持って乗り切ることが出来るのです。従って、法人化によって本学の構成員に夢と希望がもたらされるべきであると思います。私は全力を挙げてその実現を図りたいと思っています。
 この夢と希望とは、広島大学を「発展を続ける偉大な大学」へ飛躍させようという構成員共通の願いであると私は思います。私達が目指している大学は、

・学生が胸をわくわくさせながら勉学し研究できる大学
・卒業生が社会から高く評価される特色ある優れた教育をする大学
・独自の研究によって世界をリードする大学
・優れた教職員が世界中からこぞって集まってくるような大学
・教職員が未来に向かって意欲を持って働ける大学

です。そのような大学になるために、本学では「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」という到達目標を掲げており、その目標に向けての行動計画として「※長期ビジョン」を提示しました(平成十五年一月二十一日評議会)。また、法人化後を見据えた「※大学運営の基本方針」を示しました(平成十五年七月十五日評議会)。国立大学法人法に示されているような管理運営体制の下では、大学運営はトップダウン的傾向がより強まると考えられますが、本学では、トップダウン型運営を基本としながら、ボトムアップ型運営の長所も加味し、更に新しい機能を付加した運営形態、即ち「ビジョン共有型」運営を創造し実施したいと考えています。
 国立大学法人広島大学の設立に向けた準備作業では、「国立大学法人広島大学設立準備の基本方針」を策定しました。この基本方針を提示したのは、準備作業を進める人々が共通の理念の下に活動することによって、準備作業が統一的で釣り合いの取れたものとなるようにするためでした。この基本方針には下記のようなことが述べられています。

・「大学運営の基本方針」に示されている内容を尊重し法人化準備作業に反映させる。
・運営組織の策定に当たっては顧客第一主義に徹し、組織構成員の都合等をもとにした組織作りはしない。(「顧客」とは、当該業務によってサービスを提供する対象、例えば、教育業務の対象は学生、研究支援業務の対象は教員や学生)
・自ら学習し成長する活力ある組織を作り上げるために、各組織単位にはPlan(企画)― Do(実施) ― Check(点検評価)― Action(改善)の機能を組み込む。それと同時に、各組織への権限と責任の付与をする。
・組織の縦割り的構成を回避し、組織間の連携協力体制の整備に努める。
・適材の適所への配置を心がける。

 このようにして周到に準備した国立大学法人広島大学がいよいよ動き始めます。大学の運営が軌道に乗るまでは、戸惑うことなどもあるかもしれません。それらは、広島大学を「発展を続ける偉大な大学」へ飛躍させるための勉強だと考えてください。ここで述べたような夢と希望を本当に実現するように、大学構成員全員がしっかりとビジョンを共有して、手を取り合って到達目標「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」へ向かって進みましょう。皆さんのご協力とご健闘を願っています。

プロフィール 一九三七年福岡県生まれ。東京大学大学院数物系研究科博士課程修了。京都大学基礎物理学研究所助教授、広島大学理学部教授を経て、広島大学評議員、学長補佐、理学部長、副学長を歴任し、二〇〇一年五月広島大学長に就任、現在に至る。専門は素粒子論。理学博士。六十六歳。

※詳細は、本学ホームページ
http://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)→「大学紹介」→「理念・目標・行動計画・運営方針」をご覧ください。

 広島大学には、国立大学法人法によって役員として理事7名と監事2名がおかれます。なお、本学の理事は全員、副学長を兼務し、また、理事ではない副学長を1名おきます。
副学長理事
(教育・学生担当)

高橋 超(たかはし すすむ)

プロフィール 一九四二年広島県生まれ。広島大学大学院教育学研究科修了。愛知教育大学教育学部教授を経て、八九年広島大学学校教育学部附属教育実践研究指導センター教授、〇二年大学院教育学研究科附属教育実践総合センター教授。広島大学評議員、学校教育学部長を歴任し、副学長を経て現在に至る。専門は教育社会心理学。文学博士。六十一歳。
副学長理事
(研究・国際担当)

吉里 勝利(よしざと かつとし)

プロフィール 一九四三年長崎県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。北里大学医学部助教授、都立大学理学部助教授を経て、九〇年広島大学理学部教授、〇〇年大学院理学研究科教授。広島大学評議員、大学院理学研究科長を歴任し、副学長を経て現在に至る。専門は発生生物学。理学博士。六十歳。
副学長理事
(社会連携担当)

興 直孝(おき なおたか)

プロフィール 一九四四年島根県生まれ。東北大学大学院理学研究科修了後、科学技術庁(現文部科学省)に入庁。同庁長官官房長、原子力局長、科学技術振興局長、内閣府政策統括官(科学技術政策担当)を歴任。科学技術振興事業団専務理事、静岡大学運営諮問会議委員を経て現在に至る。理学修士。五十九歳。
副学長理事
(情報担当)

椿 康和(つばき やすかず)

プロフィール 一九五三年山口県生まれ。広島大学大学院経済学研究科修了。広島大学経済学部助手、講師、助教授を経て、九七年経済学部教授。広島大学評議員、学長補佐を経て現在に至る。専門は情報資源管理。経済学修士。五十歳。
副学長理事
(医療担当)

弓削 孟文(ゆげ おさふみ)

プロフィール 一九四七年広島県生まれ。広島大学医学部卒業。広島大学医学部助教授を経て、九一年医学部教授、〇二年大学院医歯薬学総合研究科教授、〇三年医学部・歯学部附属病院教授。広島大学評議員、医学部附属病院長を歴任し、医学部・歯学部附属病院長を経て現在に至る。専門は麻酔・蘇生学。医学博士。五十六歳。
副学長理事
(財務担当)

前川 功一(まえかわ こういち)

プロフィール 一九四三年神奈川県生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了。広島大学政経学部助教授、経済学部助教授を経て、八五年経済学部教授。広島大学評議員、経済学部長、副学長を歴任し、現在に至る。専門は計量経済学。経済学博士。六十歳。
副学長理事
(人事・総務担当)

塩谷 幾雄(しおや いくお)

プロフィール 一九四八年山口県生まれ。東京大学法学部を卒業後、文部省(現文部科学省)に入省。国土庁(現国土交通省)計画調整局計画課専門調査官、千葉県教育委員会教育次長、初中局幼稚園課長、科学博物館次長、愛媛大学事務局長を歴任し、〇三年広島大学事務局長を経て現在に至る。五十六歳。
副学長
(附属学校担当)

間田 泰弘(まだ やすひろ)

プロフィール 一九四一年広島県生まれ。広島大学教育学部卒業。広島大学東雲分校助教授、学校教育学部助教授を経て、八九年学校教育学部教授、〇〇年教育学部教授、〇一年大学院教育学研究科教授。広島大学評議員、学校教育学部長を歴任し、附属学校部長を経て現在に至る。専門は技術教育学。工学博士。六十二歳。
監 事
溝上 泰(みぞうえ やすし)

プロフィール 一九三二年広島県生まれ。広島大学大学院文学研究科修了。長崎大学教育学部助教授、文部省初中局小学校教育課教科調査官、広島大学学校教育学部教授を経て、九五年鳴門教育大学学校教育学部教授に就任。鳴門教育大学副学長、同学長を経て現在に至る。専門は社会科教育学。文学修士。七十一歳。
監 事
長谷川 忠彦(はせがわ ただひこ)

プロフィール 一九四〇年広島県生まれ。広島大学工学部を卒業後、東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)に入社。取締役業務イノベーション統括室長、取締役情報システム本部長、取締役総務部長などを歴任。マツダエース株式会社代表取締役社長を経て、広島ガス株式会社顧問に就任、現在に至る。六十四歳。


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