『PELAPISAN GIGITIRUAN (Denture Lining)』

大学院医歯薬学総合研究科
浜田 泰三
広島大学病院
村田比呂司
アイルランガ大学歯学部
アリフザン ラザック 著
Airlangga University Press/2003年/17,000ルピア
 本書は2001年刊『デンチャーライニング』のインドネシア語版です。内容は義歯裏装に関する基礎編と臨床編より構成されています。基礎編は本研究室で取り組んでいるレオロジーを中心とした材料の評価や義歯裏装の機能的効果について、臨床編は種々の材料を用いた臨床応用について記載しています。本書の編集手順は、まずこちらが日本語から英語への、Razak教授が英語からインドネシア語への翻訳を行いました。その間、数回内容確認のためお互いの国を訪れました。今回は二度目のインドネシア語版の翻訳であり(一回目の翻訳は一九九八年刊の『複製義歯』)、お互い翻訳、出版の手順もよくなりました。本書の出版を記念し、八月にインドネシア歯科大会において招待講演およびテーブルクリニックを行いました。
 インドネシアではここ数年少しずつ関連の製品が輸入され、臨床の場で使用されていますが、この分野の理論と術式はまだこの国の歯科医師には十分理解されているとは言えません(日本でもそうかも知れませんが)。本書がインドネシアでもっとも指導的立場にある大学歯学部の大学出版局より出版されたことはインドネシア歯科界への多大なる貢献に値するものでしょう。



『EPR of Free Radicals in Solids
 -Trends in Methods and Applications』


リンシューピン大学
アンダース ルンド
広島大学名誉教授
塩谷 優 編著
Kluwer Academic Publishers/2003年/$145
 現代の先端科学・技術では、原子・分子レベルでの量子機能の発現が追及されています。常磁性共鳴(※EPR)は不対電子を有するラジカル種(常磁性種)を選択的かつ高感度で観測する方法です。この本はEPRを用いた固体中でのラジカル種の物理および化学過程の研究の最新成果をまとめたものです。定常波EPR及びパルスEPRの進歩、ミューオン及び光検出磁気共鳴、超微細結合及びg-テンソルの計算、分子運動によるEPRスペクトル線形変化、極低温での有機・無機ラジカルの生成と量子効果、分子磁石の開発を目指した高スピン分子・クラスター等、EPRの最新の実験方法と応用例を紹介しています。固体中でのラジカルの量子機能に興味をもつ材料科学や固体化学の研究者及び大学院学生のみならず、生物科学、放射線化学、物理化学、触媒化学、計算化学に興味をもつ学生・研究者向きの電子スピン共鳴のテキストとして推薦します。

※EPR: Electron Paramagnetic Resonance (常磁性共鳴)。ESR (Electron Spin Resonance -電子スピン共鳴)とも言う。



『中世ヨーロッパに見る異文化接触』(※1)
溪水社/2000年/2,500円
『中世ヨーロッパ文化における多元性』(※2)
溪水社/2002年/2,000円
『中世ヨーロッパと多文化共生』(※3)
溪水社/2003年/2,200円

大学院文学研究科
原野 昇/水田英実/山代宏道/地村彰之/四反田想 ほか著
 表記の著者五名は、文学部の公開講座「2000年から見るヨーロッパ中世―異文化接触の視点から―」のために集まりました。第一書(※1)はそのテキストです。2001年大学院文学研究科の改組は、従来の学問分野の研究をいっそう深化させるとともに、総合的な新しい人文学の構築をめざしました。五名は文学研究科の専攻共通の授業科目「ヨーロッパ中世文化論」を担当することになりました。その内容を広く公開したのが第二書(※2)です。2002年12月には日本中世英語英文学会で「ヨーロッパ中世文化の多元性―特にイギリスとの関連において―」と題してシンポジウムを行いました。その成果が第三書(※3)です。一貫したテーマは多文化社会の考究です。グローバリゼーションがあらゆる分野で進むなか、多様性への視点、相対的価値システムの確立、多文化共存の裏づけが重要です。めざすは「文明の衝突」ではなく「多文化共生」。著者たちは中世ヨーロッパから現代の問題へアプローチします。2003年9〜10月には公開講座「旅と巡礼―中世ヨーロッパの時空間移動―」を担当しました。


広大フォーラム2004年4月号 目次に戻る