文・田邊 誠
( TANABE, Makoto)
大学院法務研究科長


看板除幕式
(平成16年4月1日。左が筆者。右は牟田学長)
 平成十六年四月より、東千田キャンパスに、法律家養成のためのプロフェッショナル・スクールである大学院法務研究科が設置されました。専任教員は十九名ですが、いわゆる研究者教員は十一名で、残り八名は弁護士・検察官のほか、銀行員、中央官庁の公務員といった実務家としての豊かな経験を持つ教員です。修了年限は、入試の際に法律科目試験を受験し法学既修者と認定された者は二年間、それ以外の法学未修者は三年間で、法科大学院修了(法務博士の学位取得)後に司法試験に合格して、一年間の司法修習を経て、法律家となります。
 広島大学法科大学院は全国六十八校の法科大学院の一つとして、本年四月、二年コース十四名、三年コース四十七名の入学者を迎えました。教員たちは、ソクラティック・メソッド(問答方式)という、これまで経験のない教育方法に戸惑いつつも、教員相互の研修会や授業の相互参観など様々な方法を活用して、法律家に必要な分析力・思考力を養うことができる教育の実現をめざして日々努力を重ねています。また、学生たちは、質疑応答を通じて積極的に講義に参加するほか、自習室や自宅において、朝早くから夜遅くまで講義の予習・復習あるいは自習に、寸暇を惜しんで頑張っています。来年には、一般市民を対象とする法律相談を中心とするリーガル・クリニックや、弁護士事務所や裁判所などで法律実務の実際を体験するエクスターンシップなど実践的な授業も実施されます。
 これまで、法律家の感覚あるいは常識は、一般人のそれとは異なるものであるといった批判を受けることがありました。広島大学法科大学院は、一般人の感覚を忘れることなく、人々が身近に感じて気軽に相談できる弁護士、人々から信頼され、頼りにされる裁判官・検察官、一言でいえば「良き隣人たる法律家」を養成することを目標にします。
 正式名称は、「大学院法務研究科」ですが、通称として「法科大学院」という名称を用いていく予定です。


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