S―アデノシルメチオニン(AdoMet:図参照)は、あらゆる生物において、たんぱく質やDNAなど生体分子のメチル化反応のメチル基供与体として、細胞機能の調節に必須の役割を果たしています。大変興味深いことに、AdoMetには肝臓疾患(肝硬変)、うつ病、骨関節症、アルツハイマー病さらにはガン等の各種疾患治療への顕著な効果が示されています。そこで、AdoMetの大量生産が期待されています。これまで、AdoMetは酵母を用いて、培養条件の工夫により大量生産が行われてきました。最近、私達は酵母のCa2+情報伝達経路による細胞周期制御機構を研究する過程で、AdoMetを野生株の三十七倍量も高蓄積する変異株を分離することに成功しました。本発明は、AdoMet高生産株の育種および変異酵母菌を用いたAdoMetの細胞内における役割解明に応用する技術です。本変異株はAdoMetを高生産するだけでなく、AdoMetの細胞内における生理的役割を明らかにする基礎研究にも有用な株です。今後、AdoMet高生産株を用い、種々の疾患の病因解明やその治療薬の開発、治療改善に役立てていきたいと考えています。本研究成果は、米国科学アカデミー紀要に掲載されました(PNAS 101, 6086-6091(2004))。
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