学長インタビューNo.21
いかにして悲惨な交通事故を減らすか
日時:平成九年五月九日(金)午後一時三十分
場所:事務局学長室
学生の交通事故はどうしたら減らせるか。大学教員の任期制にど
う対応するか。
新緑が眼下に広がる事務局棟五階の新学長室に、春の嵐の過ぎた五月晴れの日の
午後、学長を訪ね学生の交通事故対策や大学教員の任期に関する法律案に対するお考えなどについて伺った。
広報委員=新入生の学長訓示に交通事故への注意の
喚起を加えられたにもかかわらず、新入生が死亡する痛ましい事故が起きましたが
、大学として何か対策を取られていますか。
学長=平成八年度は広大生の関わった交通事故が四十三件報告さ
れ、内七件が死亡事故で広大生が四人亡くなっている。同じような環境にある筑波
大学でも多いと聞くが、広大では多すぎる。死亡事故の多くは深夜に起きているこ
とが多いように思う。
反射神経が鈍る時間帯なのに、道路は空いていてスピードが出しやすいからだろ
うが、飲酒していることもあるかも知れない。とにかく零時から三時頃までは、原
付を含む車に乗らないことだ。
事故は被害者だけでなく加害者も大きな負担を背負わなければならないし、双方
とも後遺症に悩まされることもあり、事故後の人生を狂わせる。危険に対する普段
からの認識が必要だ。自己の過信は禁物だ。特に新入生の多くは、原付にしろ車を
運転し始めて間がなく、運転技術が未熟であることを自覚してもらいたい。
広報委員=市内の道路環境の改善についてはいかが対処されます
か。
学長=広大生の死亡事故の起きた場所の地図を作ってもらい、そ
の場を一つ一つ見て、なぜ起きたかを考えるつもりだ。道路が整備されたところと
されないところが市内に混在していることが、交通事故の多い一因かも知れない。
先日、市長、市議会議長と懇談した際、道路環境の点検をお願いした。早速、中
央分離帯の木を低くするなど見通しの悪いところの一部が改善された。これからも
市・県などに道路環境の整備を要望してゆきたい。
広報委員=これほど事故が多発するのであれば、学生に車に乗る
ことを禁じてはどうでしょうか。
学長=キャンパスへのアクセスが整備されていないので、車を持
たせないわけにはいかない。特に夜間はバスの便数が少ないうえ、暴力事件や痴漢
事件があるので、学生を歩いて帰宅させられない。少しでもアクセスの改善を図る
つもりであり、その一つとして、広島バスセンター・広大間の直通バスを出しても
らえるよう話が進んでいる。また、オリキャンの準備などで入学したばかりの学生があまりに遅い帰宅とな
らないように警告を出した。保護者からの心配の手紙もあったからだ。
少子化の中で、子女が事故に遭うことへの親の心配は察するに余り有る。構内で
の人身事故が起きないのが幸いだが、路上駐車は困る。緊急車両が最適な場所に入
れなかったり、運搬車両が立往生したこともあると聞く。不法駐車は取り締まるよ
う考えている。不法駐車を繰り返す者には車に乗ることを禁ずることも考えている
。
交通事故対策に特効薬はない。車を運転する者は常に事故の危険を認識してもら
いたい。
広報委員=大学教員の任期制についてどのようにお考えですか。
学長=まだ問題を計画委員会に投げかけている段階で、まとまっ
た考えはない。若手が自分の進路をさぐるために、大学間で同じ分野の助手を交換
するなどして、これを利用することはあるかもしれない。助教授・教授への任期制
の導入は考えにくい。また組織の活性化が目的であるから、制度の導入はその環境
が整うまでかなり時間を要するように思う。
今日、重い話題となったが、ここから眺めてもわかるように、キャンパスも年ご
とに整備され、公園の中の大学ができつつあり、大学構成員全員でこのキャンパス
をより美しいものにしたい。
広大フォーラム29期1号 目次に戻る