広島大学から排出される固形廃棄物(ごみ)の管理・利用システム(提案)─1─

文・正藤英司


平成八年度教育研究学内特別研究費をいただき、広島大学東広島 キャンパス(以下、単に東広島キャンパスと言う)から排出されている固形 廃棄物(ごみ)管理利用システムの構築、と題する調査研究を実施した。そ の成果の一部、東広島キャンパスから排出された固形廃棄物(ごみ)の排出 量について述べる。


膨大なごみを排出するキャンパス

  東広島キャンパスから排出される各種固形廃棄物(ごみ) を、一定期間徹底的に分別収集・計量・調査し、その内容と量を算出、あるいは推 定した。その結果を図1に示す。
図1

 図1に燃えるごみがカウントされていないのにお気付きであろうか。燃えるごみ 量の調査はきわめて困難であり、推計すらできなかった。又、燃えるごみとしての 表示すら曖昧で、処理・処分が適切に実施されていないことからここでは省略した 。次号で適切な取り扱い法を紹介することとした。
 東広島キャンパスから平成八年度の一年間に排出された古紙(リサイクルシステ ム推進中)は百、金属は三七・七、ガラス類は一四・五 、不燃ごみは四八、焼却残灰は四七、合計二五〇 であった。読者諸氏はこのごみの排出量を知りいかが感じられたでしょ うか。
 ごみはごみとして集めて業者委託して他の場所に移送、又は廃棄させれば、確か にその周辺の環境は維持できるかもしれないが、それで業務終了ではない。業者委 託して埋立て処分させれば、埋立て処分場の容積を占有することになる。燃えるご みを焼却処分すれば、確かにごみは減容化あるいは減量化できるが、多量発生する 焼却残灰は業者委託して埋立て処分する必要がある。又、焼却排ガスは環境悪化の 一因となるであろう。
 実際には、東広島キャンパスから排出された燃えるごみ(紙類、木片及びプラス チック)の相当量は焼却施設で焼却処分されているようだ。又、金属、ガラス類、 不燃ごみ、焼却残灰等は業者委託して埋立て処分されてきているようだ。
 金属類、ガラス類、不燃ごみ、焼却残灰、大型ごみ等は少し気を付け、少し手を 加えて分別収集すれば、ごみは減量化でき、貴重な資源化物とすることができるが 、これまで、貴重な資源を捨てていたことになるであろう。
 霞キャンパスから排出されるごみはどれくらいであろうか。たぶん、東広島キャ ンパスから排出されたごみの量ぐらいはあろう。そして、広島大学全体では年間四 百近い貴重な資源化できる固形廃棄物を廃棄してきていると筆者は予想 している。ごみはそのまま廃棄すればごみである。ごみを分別収集するだけでも再資源化物とすること ができる。
 ごみの再資源化業務の事務的要素は、少し多くなるであろう。しかしながら、地 域の、地球規模の環境保全のためにも、限りある有効資源を保全するためにも、広 島大学全構成員が分別収集業務に取り組み、環境保全に寄与すべきと考える。
 そこで、本号では固形廃棄物(ごみ)の内容と発生量の現況と比較的簡単 にできる再資源化法について述べ、次号では、比較的再資源化困難な固形廃棄物( 不燃ごみ、焼却残灰)の再資源化・再使用法について、提案することとした。広島 大学全構成員の「廃棄物の排出ゼロを目指したごみの減量化・再資源化業務」に対 するご協力をお願いする。


固形廃棄物(ごみ)の内容と発生量の現況と比較的簡単 にできる再資源化法

 東広島キャンパスから平成八年度の一年間に排出された古紙類、 金属ごみ、ガラス類ごみ、不燃ごみ、焼却残灰の発生量の現況と比較的簡単にでき る古紙類、金属ごみ、ガラス類ごみの再資源化法について、以下に述べる。

古紙類

図2

 これまで、古紙ごみ類は学内のごみ焼却施設で焼却、あるいは埋 立て処分されてきた。東広島キャンパスでは平成七年十月から紙類の再資源化を目 的に、古紙類を上質古紙、古新聞、雑誌類、段ボール、そして生ごみ等の五分類法 による分別収集・再資源化試行を開始した。平成八年度には、紙の分別収集法ポス ターの作製、又、試験的に紙ごみの分別収集ボックスを設置するなどして全構成員 に対して周知徹底させて、試行を改め実行してきた。その結果、古紙類は平成八年 度の一年間に約百分別収集できた。そして、東広島キャンパスから排出 される古紙類の約五五%位(全国平均の再資源化率は約五五%である。)がリサイ クルできたと判断している。
 これまで、もみくしゃにした紙、メモ紙等は、そのまま多くは焼却されているよ うだが、集めればリサイクルできるので、分別収集すること、又、機密文書等は依 然として焼却処分されているが、裁断することにより機密の漏洩を防ぐ 事ができるので、その裁断物を集めて再資源化を推進させれば、これまで焼却処分 していた古紙はより一層低減できるであろう。そして、リサイクル率をより向上さ せることができるであろう。
 各種古紙類の再資源化工程を図2に示す。広島大学としては、平成八年度から実 施している分別収集までの工程を受け持ち、それ以後の工程は再資源化を目指した 業者に委託する方法がよかろう。


廃金属(廃缶)類

図3

  廃金属ごみとしては、ビール缶、各種飲料水等の廃缶が主である 。廃缶の素材は大部分が鉄であり、一部は比較的高価なアルミニウムである。アル ミニウムと鉄の比率は季節による変動があり、冬季には約六%位がアルミニウムで 、夏季にはスポーツ飲料及びビールの需要が多くなるために約一〇%位となる。年間平均で八%位であ る。
 これまで、金属ごみ類は埋め立て処分、再資源化あるいは放棄されてきた。数年 前からは回収箱(一・五立方メートル)を四か所に設置し、廃金属ごみの 収集を開始してきた。回収箱二箱が満杯になったら回収、引き取らせ、処分させる 方法である。
 東広島キャンパスにおける金属ごみの回収実績は平成八年度の一年間に、アルミ 二・二、鉄三五・五の合計三七・七、回収箱( 一・五立方メートル)にして三一〇箱分の金属ごみ類を分別収集している。
 廃缶類はコンパクト化のために潰して排出することが望ましいが、現 状では潰して排出されているのは約一〇%程度である。再資源化のための移送費は 容積単位(三立方メートル)であり、移送経費とリサイクル経費の節減の 目的から、潰して排出することを推奨したい。
 廃金属(廃缶)類の再資源化工程を図3に示す。広島大学としては、収集 までの工程を受け持ち、それ以後の工程は再資源化を前提とした業者に委託する方 法がよかろう。


廃ガラス瓶類

図4

 ガラス瓶類としては、廃試薬瓶が約四〇%、ビール瓶、酒瓶及び 各種飲料水等の瓶が約四〇%、硝子器具などのパイレックスガラス片等が一五%そ して陶磁器類が約五%位であった。ガラス素材としては、硝子器具などのパイレッ クスガラス、透明ガラス瓶、着色ガラス瓶、濁りガラス瓶そして陶磁器片等が排出 されている。着色ガラスには茶色、緑色、青色等種々雑多であった。生き瓶の排出 量は種類により季節変動があり、冬季には酒瓶が、夏季にはビール瓶が多くなるが 、年間通じて約五%位含まれていた。
 これまで、瓶ごみ類は業者依託により埋め立て処分されている。現在の回収方法 は、回収箱(一・五立方メートル)を四か所に設置し、二箱が一杯になっ たら回収を指示し、引き取らせる容積単位(三立方メートル)での回収、 そして埋め立て処分する方法である。  ガラス瓶類は分別して再資源化するためには潰さないで排出することが望ましい が、現状では潰されているのが約一〇%程度あり、平成八年度の一年間に、八一立 方メートル、重量換算で約一四・五トンの瓶ごみ類を分別収集した。
 廃ガラス瓶類の再資源化工程を図4に示す。広島大学としては、そのまま再使用 できる生き瓶とその他の瓶類とに分別収集するまでの工程を受け持ち、それ以後の 工程は再資源化を目指した業者に委託する方法がよかろう。


不燃ごみ(廃プラスチック類)

図5

  不燃ごみとしては、大部分が廃プラスチック類である。又、これ まで、廃プラスチック類はほとんどが不燃物として分別されてきたのであろうか。 否、燃やせば燃えることから、燃えるごみに相当量は入れられているのではなかろ うか。
 不燃ごみとして、集められた大部分は包装用袋類及び容器類で、それに緩衝材、 加工用資材等 資材等のプラスチック類である。プラスチック素材としては大部分がポリエチレン であるが、ポリプロピレン、ポリスチレン(ポリエチレンテレフタレート( PET)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン 等である。
 回収方法は回収箱(一・五立方メートル)を設置し、二箱が一杯になっ たら回収を指示し引き取らせる、容積単位(三立方メートル)での回収方 法である。
 平成八年度の一年間の不燃ごみ類の収集量は、容積で六八二立方メートル、重 量換算で約四八分別収集し、業者委託処分した。
 廃棄プラスチック類(不燃ごみ)は容積が巨大であり、飛散する可能性が あるため移送はきわめて困難である。移送中の飛散防止の目的から圧密し、コンパ クト化して排出することが望ましいが、現状ではほとんどそのままで排出されてい る。これまで、プラごみ(不燃ごみ)類は焼却、埋め立て処分あるいは放棄 されている。又、プラごみ類は放棄による散乱、そして容積の大きいことから埋立 による埋立場の占有と散乱による環境破壊が大きい。

焼却残灰

   焼却残灰は産業廃棄物として法律に準拠した取り扱いを受けてい る。これまで、焼却残灰は埋立て処分を専門の業者に委託している。又、焼却残灰 は移送時の飛散防止の目的から、水撒きされている。回収方法は回収箱(一・五 立方メートル)を設置し、二箱が一杯になったら回収を指示し引き取らせる、 容積単位(三立方メートル)での回収・移送・処分方法である。平成八年 度の一年間に、約四七トンの焼却残灰を分別収集し、埋め立て処分した。

(以下次号に続く)



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