君たちも良き「ネチズン」たれ!

─『ネットワーク市民の手引き』刊行によせて─

文・正法地 孝雄(shohoji, Takao)
総合科学部教授

 情報通信関連分野における著しい技術革新に伴い、本学にもこの種のイ ンフラ整備をもたらした。今や各キャンパスはコンピュータ・ネットワークにより 結ばれ、国内はもとより世界中とも手軽に情報交換を行うことができる。この、ま さに居ながらにしてグローバリゼーションへの道に踏み出さんとするネットワーク の利用者たち、すなわちサイバー空間を共有するネットワーク社会の市民 =「ネチズン」への贈り物、それが『ネットワーク市民の手引き|広島大 学コンピュータ及びコンピュータ・ネットワーク利用ガイドライン』である。
 情報化社会と言われる昨今、我々の周りでは多種多様な情報が飛び交っている。 しかも、興味を示すだけで、情報はサイバー空間を通じ、我々のお茶の間・研究室 ・教室にまで、たちどころに飛び込んで来る。そして、今後、ネットワーク上での サービスは種類・形態とも急速に増加し、コミュニケーションや情報収集の手段と して活用度が飛躍的に拡大することは確実だ。事実、本学でも、学生のレポート提 出や教官とのコミュニケーション、また教職員相互の連絡や会議の開催通知など、 活用の機会はますます増えている。
 ただ、その一方で、社会環境における情報過多の一層の進行も避けがたく、これ への対応が、我々の課題として大きく立ちはだかっていることは否めない。いった い、我々はどう取り組み、どう対処していくべきなのか。
 例えば、提供されるサービスを自らうまく選別し、情報を適切に取捨選択すべき は言うを待たないが、同時に自己防衛に走るあまり、気付かぬままに他を阻害する こともありうる、との認識を持つことも重要だ。それこそ、「ネチズン」たる者の 責務である。
 周知のとおり、本学では、今年から新入生全員にも、サイバー空間への扉を開け る「鍵」(アカウント)が配付され、全構成員が「ネチズン」あるいはその “予備群”となった。従って、本学における情報化はさらに進むことになるであろ う。それに伴ってネットワーク上でのトラブルの可能性も増えたということになる 。
 実際、学生が利用できる端末機はキャンパス内の至るところにあるが、そこが学 生の情報交換サロンともなることはむしろ歓迎だ。だが、やはりヒトの迷惑になる 行為などは慎しみたい。これは「ネチズン」たる以前の問題、マナーにおける基本 中の基本であろう。
 「いやはや、ネットワークに加わるのも大変だ。いっそネチズンになるのはやめ ようか」と、そんな声も聞こえてきそうだが、社会で暮らすとはそんなもの。市民 たる者、やはり一定のルールは守らねばならない。サイバー空間には便利な情報、 不可欠な情報や、魅力あるサービスが満載だというのに、それでも君たちは、本学 構成員にのみ許された「特典」を自ら放棄したいのか。もしも放棄したくないのな ら、やはり義務も履行すべきだろう。
 では、そのルールとはいかなるものか。それを教えてくれるのが、『ネットワ ーク市民の手引き』である。ネットワークの利用にあたって避けるべき法令 に違反する行為、公序良俗に反する行為、本学の教育・研究目的に反する行為と 、トラブル回避し、自分自身を守るための心得(付録)の四部からなっており、アカ ウントやパスワード保管の心得から、刑事罰への可能性、著作権・人権問題、快適 な「ネチズン」生のためのエチケット=「ネチケット」まで、現在 考え得ることのポイントはほぼきちんと押さえられている。いわば本学「ネチズン 」必携のハンドブックとも言うべきで、平易な解説ゆえに入門者にも最適であり、 コミカルなイラストを配した構成は、読み物としても楽しめる。
 とにかく、ホームページにネットサーフ(接続)したいのならば、まず 『ネットワーク市民の手引き』を開いてほしい。それが、良き「ネチズン」とな る第一歩である。
広大フォーラム29期1号 目次に戻る