たんぽぽ保育所は今
合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均)が
低下し続けている。八九年には一・五七と大きく落ち込み、「一・五七ショック」
なる流行語まで生まれた。その後も出生率の低下は続き、九四年には一時的に上昇
したものの、九五年には一・四三と過去最低記録を更新した。
平成元年にまとめられた「二十一世紀に向けての広島大学のあり方(将来構想
検討委員会答申)」によると、「女性の社会的進出の傾向は、今後も続くものと
思われる。大学は、人材の活用・登用、施設改善等の面でなお一層これに対応して
いくべきである」と述べている。
現在の状況は、さらに予想を超えている。安心して働くための保育所の意義を問いかける。
昭和四十六年四月一日、広大霞キャンパスに働く人たちの手で開
所されたたんぽぽ保育所は、この四月で二十七年目を迎えます。昭和六十三年一月
八日より広島大学医学部附属病院授乳所となり、現在に至っています。毎年、毎年
、赤字の自転車操業で経営は大変ですが、母乳で育てられる
、できる限り無害な手作りの食事、そして友だちを大切にする子ども、困難に負け
ず正しいことをやり通す子ども、物をよく見つめよく考える子ども、感情豊かな子
ども、健康な子ども、この五つのたんぽぽの目指す子ども像を目標とし、子どもと
父母と保育者が助け合い、育て合って来ました。
これらの「たんぽぽ」の保育が、霞キャンパスに働く人々に認められ、伝えられ
、支えられたおかげで、この三月の八名の卒園児を合わせると、今まで三百四十八
名の子どもたちを送り出すことができました。現在は零歳児から二歳児まで十八名
の子どもたちが在園しています。
たんぽぽの保育
一. 健康な子ども
- 授乳時間を利用し、母乳で育てる。
- 食事、おやつは市販品はほとんど使わず、離乳食も全て手作り。
- 薄着で育てる。
- 年間を通じて散歩をする。霞キャンパス内、段原公園、比治山などへ
出かける。
- 夏は手作りのプールで泳いで水と親しみ、身体を鍛える。
- 早寝、早起きの規則正しい生活をすることが身体のリズムに合い、意
欲的な子どもを育てる。そのために園と家庭を結ぶ連絡帳は、楽しみでもあり宝で
もあり重要。
二. 感情豊かな子ども
生後二〜三か月の子どもは、大人にしっかりあやされながら、友だち同士見つ
め合い、にっこり笑う。友だち同士ふれ合い、ぶつかり合いながら段々と相手も自
分と同じ要求があり、喜びや悲しみがあることを知る。
- 赤ちゃんの時より、目覚めている時は畳の上で積極的に友だちと交わ
り合うことを大切にする。
- 父母も授乳時間やクラス懇談会(二か月に一回)などを通じて仲間を
作り、他の子どもを見ながら我が子の発達の見通しを持ち、ゆったりとした気持ち
で育てることに確信が持てるよう努める。
- 誕生会、運動会、生活発表会などいろいろな行事を通じて発達の飛躍
を目指すとともに、豊かな体験を心に刻む。
三. 友だちを大切にする子ども
- 零歳児の時から身近に友だちがいることを意識させるために、「
○○ちゃんどこ?」「○○ちゃんおいで」「○○ちゃん笑っているね」など友だち
と一緒にいることを知らせたり、「呼んでこよう」「一緒にしよう」と行動するよ
うに働きかける。
- 二歳児頃になると、友だちのために順番に食事当番をする。みんな大
好きです。
- 子ども同士のけんかは、危険がなければお互いの力(要求)を
ぶつけ合い、お互いを知る場なので、保母はまわりで見ていて手を出さない。その
ことがここから先はしてはいけない、と手加減を覚えることにもつながります。
四. 物をよく見つめ、よく考える子ども
- 物を「見える」のではなく「見分けられる」よう、音が「聞こえ
る」のではなく「聞き分けられる」ように、そして自分の頭で、自分の言葉でよく
考えられるように、そのためにいろんな遊びや散歩の中で「これは何だろう」と疑
問を持つこと、仲間の中で考えたり絵本を見たりして話し合うことを大切にしてい
る。
- 話したいことは、絵に描いて自分の気持ちを素直に表現するよう、絵
は描きたいだけ何枚でも描かせる。
- 突き出た大脳とも言われる手を十分使う遊びをする。「これしたい」
という気持ちを大切にして、満足するまでやらせる。
五. 困難に負けず、正しいことをやり通す子ども
- 一人一人の要求を大切にして、やり通すことの経験をさせる。
- 自分でできることは自分でする。パンツ、パジャマのボタンかけ。
- 自分の要求をしっかり出せる。
保育時間と休園日
- 平日七時四十五分より十七時四十五分。
十七時四十五分より十九時まで、一歳児以上に限り父母会管理で延長保育を
行っています。
- 土曜日勤務のある者の子どもを対象に平日どおり(但し延長は行
わない)。
- 日曜日、祝祭日、勤務のない土曜日は休み。
- 年末年始十二月二十九日より一月三日まで休み。
終わりに
ヒトは、ヒトの中で育ち合い、発達し合い、ヒトへと成長するものです。「た
んぽぽ」は子どもと親の育ち合う場所です。その中で保育者も学んでいます。この
子育ての輪を霞キャンパスの隅々まで広げるため、これからも「たんぽぽ」をご支
援下さい。どうぞよろしくお願いいたします。
(大亀和枝)
園児募集
対象は霞キャンパスで働く者の零歳から三歳までの子ども
(詳しくは内線二八三一まで)
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