ハノーファ医科大学短期留学を終えて

文・ 末永 貴美(Suenaga, Takami)
医学部医学科四年



 昨年の夏休暇中、私はドイツのハノーファ医科大学(Medizinische Hochschule Hannover; MHH)に留学する機会を与えていただきました。ハノーファ市は、ドイツのニーダーザクセン州の州都にもかかわら ず、たくさんの豊かな緑に囲まれた見渡す限り平野の美しい町です。
 MHHでの四週間の留学を、私は神経病理学と脳神経外科学を中心に勉強しました。神経病理学教室で、手術中のBiopsy、亡くなった患者の脳解剖、教室のRoutine activitiesといったことに携わり、一方、脳腫瘍細胞の培養実験や、マウスを使ったNeuro-transplantation、電子顕微鏡による実験などを、MHHの学生と共に脳神経外科学に通って実習することができました。一所懸命行った実験も、それについて議論を交わしたことも、非常に興味深く、自分にとって大変プラスだったと思います。
 最後の日には、これまでのプロジェクトの完了を祝って、教室でパーティーが開かれました。大勢の人に囲まれて、楽しい一時を過ごすことができました。
 また、生活面では、寮には世界各国から同世代の医学生たちが、同じように夏季のみの留学にきており、ここでも多くの友人を得ることができました。私が語学好きであったためか、寮で学生間の通訳を務めることが日課の一部となっていました。ドイツ語を習ってきて、英語を知らない東側出身(ポーランド、ロシアなど)の人たち。一方、ドイツ語をあまり勉強することのなかった西側の人たち。とりわけ、トラブルの際や、そうでない時にも両者の間に立って通訳していたことは、人間関係においても大変勉強になったとおもいます。また、一対一になった時は、それぞれ彼らの母国語で話しかけてみる良いチャンスでした。国内情勢の話や、 彼らの愛国心の強さに触れることができ、良い勉強になりました。
 日本という座標軸をずらし、ドイツという位置からグローバルな視点で物を見ることのできた今回の留学は、医学の分野を通じて各国の医学レベルや文化の違いなどを学び得たと思います。この貴重な体験ができたことに感謝しながら、そのエッセンスを自分だけのものにするのではなく、機会あるごとに各方面に還元 していきたいと思っています。

 本学医学部とMHHとは十年を超える交換留学の歴史を持ち、広大からは二十八名が留学し、MHH生は十七名来学していて、十年記念誌も発行されている。

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