海外の「協定大学」で学べる時代の到来
−留学のススメ−

文 二宮  皓(Ninomiya, Akira)(学校教育学部)
国際交流委員会学生交流専門委員会委員長
短期交換留学プログラム実施委員会委員長



海外の大学に留学しよう

 今年の九月と十月には、皆さんの九名の仲間が、アメリカやカナダの大学に一年間「短期交換留学生」として派遣されることになりました。総合科学部、文学部、教育学部、学校教育学部の皆さんです。この人たちは、昨年の秋の「広島大学短期交換留学生派遣」の公募に応募した人の中から学内の選考委員会(十二月二十四日開催)によって選考され、交換留学生として外国の受け入れ大学(協定校)に推薦されることになった人たちです。
 昨年の公募通知については、急遽行ったこともあり、知らなかったという人が少なくなかったようですので、本年は六月十一日、十三日に留学生センター・短期交換留学実施委員会の共催で全学の学生を対象として公開説明会を開催することにしました。平成十年度(秋)に留学しようと計画している人は、今年の秋の公募(各学部等の掲示板に掲示される~K~)に注意して、応募書類を準備し、期日までに申し込みを行ってください。学内選考(面接)試験は十二月に行われる予定です。
 ただし、提出書類にTOEFL(Test Of English as a Foreign Language)と呼称される英語能力試験の成績を提出してもらうことになっていますので、各自の責任と負担で受験することになりますが、期日までに何回か受験して、いつでも成績が提出できるように準備しておくことが大切です。
 もちろん英語能力試験の結果は重要です。原則としては、最低でも五百点以上をとっておくことが要求されることになります。なぜならばアメリカやオーストラリアの大学では、通常五五〇点以上ないと、正規の授業の受講制限がありますし、必要に応じて英語の集中訓練コースをこれまた自己負担で受講することが強くアドバイスされることになるからです。
 広島大学では協定大学の責任者と機会をとらえては、英語能力試験が一般的基準より低くても、交換留学生として受け入れてくれるよう協議をしてきているところです。その理由はさまざまな専門分野の学生が少しでも多く留学できるようなシステムを開発することが相互交流にとって緊要であるという確信からであります。多くの協定大学ではこうした申し入れを理解し、対処してくれることになりつつあります。しかし学生の皆さんは、国際化・情報化時代でもありますので、英語の勉強はしっかりしておいてください。もちろんドイツ語その他の言語も重要です。
 幸いにも本学に新設された外国語教育研究センターでは、TOEFL受験のための授業を開設するなど、一人でも多くの学生の皆さんが留学できるように、と支援してくれています。こうした支援体制を整備しようとする国立大学はほとんどありません。TOEFLは一回目よりは二回目の方が得点が上がる、という経験法則もあるそうですので、複数回挑戦してみるのも、有効な戦術だと思います。
 いずれにしても、他大学の学生と競争しているのではなく(学内選考であることもあり)、このシステムによる短期留学(派遣)は「自分との競争」であるとお考えいただいた方がより適当だと思います。



海外留学の複数チャンネル(多様な機会)の活用を

 さて海外留学を積極的に自己のキャリア形成に位置づけてもらい、留学してもらいたいと思っております。本学の学生(学部学生・大学院学生)が海外の大学に留学するチャンネル(プログラム)には多様なものがあ りますので、それぞれの特色を考慮して、その積極的利用・活用を図ってもらいたいと思います。ただ各種のプログラムに用いられる用語が類似したものであるため、どれがどれか分かり難いという難点がありますので、多くのことについてはすでにご承知のことではあるでしょうが、再度全体を説明したいと思います。「短期交換留学プログラム(派遣)」については詳細に説明することとします。


一.外国政府等の奨学金を得て留学するプログラム
 フルブライト奨学金(アメリカ)、ロータリー奨学金(アメリカ)、ブリティッシュカウンシル奨学金(イギリス)、フンボルト奨学金(ドイツ)、その他デンマーク政府、メキシコ政府奨学金など各国政府・財団が募集する奨学金を得て留学することができます。
 多くは大学院学生を対象とするものです。この場合一般には学生は休学して留学することになるようです。また奨学金はありますが、受け入れ大学には授業料を納入することになります。留学を終えると再度本学に復学することができますが、中にはそのまま外国の大学を卒業・修了する人もいます。二年以上の長期留学となれば、本学を退学することになります。


二.日本政府の奨学金を得て留学するプログラム(「短期留学推進制度〈派遣〉」)
 文部省では大学間の国際学生交流を一層促進する目的で、「短期留学推進制度(派遣)」を設け(平成八年度)、大学の推薦に基づいて学生(学部・大学院)に一年間の海外留学のための奨学金と旅費を支給しています。派遣できる大学は、学生交流についての協定を結んでいる大学に(原則として)限定されており、どこの国のどの大学に留学できるかは、それぞれの大学によって異なっています。
 広島大学では、大学全体で締結している協定大学及び学部等で締結している協定大学に派遣することができる、という原則を確認していますので、かなり多様な国に留学できるようになっています。現在準備中のものも含め国名だけ列挙しておきますが。
 ドイツ、ニュージーランド、アメリカ合衆国、連合王国、フランス、オーストラリア、インドネシア、中国、タイ、マレーシア、スウェーデン、オランダ(以上が大学間で、いずれの学部等の学生でも応募できます)、インド、タイ、韓国、オーストリア、ブルガリア、スリランカなど(以上は各学部等での協定であるの で、当該学部等の学生が派遣されることになります)。
 平成九年度は、本学から七大学十名を文部省に推薦しました。その結果、フランス(文学部)、ドイツ(社会科学研究科)、アメリカ(社会科学研究科)、連合王国(文学研究科)、中国(文学研究科)及びニュージーランド(学校教育学部)への派遣(六名)が決定したところです。全国でおよそ三三五人(予算)のようですので、難しいことは確かですが、少なくとも本学から五〜七名の学生が留学できることも確かです。


三.「自費」で留学するプログラム

(1)「広島大学短期交換留学プログラム(派遣)」による留学(新規プログラム)  これは昨年度より新しく開発された学生交流プログラムで、特に紹介したいものです。海外の大学と短期(一年以内)に限って正規の学生(毎年度一定数以内)を相互に交換留学生として受け入れ、相互に単位取得と単位互換を認め、授業料等についても相互に徴収しない(学生はそれぞれ派遣元の大学に授業料等を納入するので、二重に徴収しないという意味になります)、といったことを協定でもって約束して、学生を受け入れたり、派遣したりするプログラムがこれです。
 したがってこのプログラムの特典は、本学に授業料を納入しているので、海外の大学に授業料を払う必要がないこと、受け入れ大学が責任をもって受け入れてくれるので、単位の互換、寮への入寮、ビザの取得などの点で便宜を図ってもらえること、本学が正規のプログラムとして派遣する責任体制がしっかりしていること、留学手続き等の世話を大学が行うこと、などをあげることができます。
 東広島市・広島市で支出している生活費を海外の大学でのそれにあてれば、旅費や支度経費を別にすれば、帰国後も単位互換に成功する可能性も高く、修業年数以内で卒業できることになり、大きな経済的負担にはならないかもしれません。
 ただし本学の学生をどこのどの大学に何名派遣できるかは、本学がそれぞれの大学から何名受け入れたかという実績に基づいていますので(相互交流という意味は授業料がからんでいますので厳密に解釈されることになります)、年度によって異なります。実績主義とでも言っていいでしょう。
 あまり知られていないことではありますが、本学(多くの学部)の何人かの先生には通常の授業(講義等)に加えて、さらに「英語による短期交換留学生のための特別プログラム(講義等)」を昨年度より開設していただき、熱心に授業を行っていただいております。(対象は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、マレーシア、その他の国の協定大学からの短期交換留学生)。また、留学生課をはじめ多くの事務の方々がこのプログラムの開設に尽くしていただいていることも事実であります。
 プログラムの実施委員長としては本当にありがたく感謝しておりますが、これも本学の学生の皆さんが一人でも多く海外の大学で学ぶことができるなら、という気持ちで行っていただいていることです。海外の短期換留学生を引き受けるからこそ、本学の学生を派遣できるのです。今や一年未満で再び自分の国の大学に「単位 」と「想い出」を土産に帰国するという新しいタイプの留学生が来ているのです。今はまだ人数が十七名とそれほど多くはないかもしれませんが、やがては増えることでしょう。
 ちなみに学生の皆さんにお願いですが、こうした短期留学生がクラブ活動やサークル活動に参加しようと思って行ったら、断られたと聞いております。彼らは正規の本学の学生ですし、皆さんとまったく同等・対等です(日本語ができないかもしれませんが)。どうぞ彼らもクラブやサークル活動に入って、皆さんと一緒に キャンパスライフを楽しむことができるようご配慮ください。
 平成十年度派遣予定の国・大学・人数は別表のとおりです。学部学生の皆さんはどの大学でも応募できますが、大学院生の皆さんは応募できる大学が限定されていますので、お問い合わせください(本学では大学院(国際協力研究科を除いて)での受け入れの特別プログラム(英語による)がまだ整備されていないため)。  繰り返しますが、これに応募するためにはTOEFLのスコアーが必須ですので、準備しておいてください。秋には公募を始める予定です。

(2)各学部等交流協定大学派遣プログラム(派遣)による留学
 各学部ではそれぞれ独自に海外の大学と協定を締結し、学生や先生の交流、共同研究活動を推進されていますが、学部によっては独自のプログラムを開発して学生を協定大学に派遣しているところもあります。たとえば教育学部では毎年アメリカのミネソタ大学に二名の学生(学部学生や大学院学生)を派遣しています。授業料不徴収の協定が締結されているので、学生はミネソタ大学に授業料を払う必要はありません。また生活は大学の寮です。経費はすべて自己負担ですし、授業料はこちらで払うことにはなります。各学部でお問い合わせください。

(3)各学部の「海外研修型留学」プログラムによる留学
 各学部では学科を単位として、海外の大学と交渉し、本学の学生のための特別コースを開設してもらうなどの協定を結び、二十名から三十名近い学生を一学期間派遣する、といった「スタディ・アブロード(海外で学ぶ)」プログラムを開発・実施しているところもあります。たとえば教育学部の英語教育専修の講座では、エディンバラ大学などと協定を締結し、毎年度専修の二年生を対象として派遣し、海外の大学で取得した単位の互換を行っています。
 留学に要する経費は学生の自己負担ですが、専門教育の観点から開発されたプログラムであります。もちろん他の学部・学科・研究科でもこうした短期の海外留学・学習プログラムを開発されたり、準備されたりしていますが。今後はこうした積極的な教育課程(海外での学習経験)の開発が求められることは間違いありません。

(4)自分の責任による海外の大学への留学
 最後は、伝統的な海外留学ですが、すべて学生の皆さんが自分の努力と責任において(もちろん指導教官の助言・支援はありますが)、海外の大学とコンタクトをとって、志願票を送付し、留学の準備を行うものです。この場合は授業料相互不徴収の協定があるわけではありませんので、多くの学生の皆さんは休学するな り、時には退学するなりして、留学するということになります。その意味では卒業が遅れるということが起こりますので、どうしても不利な条件になるかと思います。こうした留学をもう少し大学の正規の留学プログラムに組み込めるよう工夫する必要があると思っていますが、いい知恵があれば教えてください。
 以上のように本学においても国際化・情報化時代に相応しい教育態勢を整備してきているところですので、学生の皆さんも積極的に海外留学について考えてみてください。留学をすることは、異文化での体験をもつことでもあり、もう一つの自分を開発することにもなります。いずれの学部の人であれ、これからは各自の専門に加えてこうした異文化体験をもつことが有利でもありますし、求められていることでもあります。広い世界の中で自分を考え、専門的知識・技能あるいは態度を磨いていただければ、本学で学んでいただいている甲斐があるというものでしょう。
 東広島市・広島市だけが広島大学のキャンパスではありません。今やグローバル・キャンパスが本格的に用意されているのです。世界の多くの国の大学のキャンパスは、皆さんのキャンパスなのです。どこでも学べる時代なのです。挑戦してみてはどうですか。
(詳細のお問い合わせは各学部の教務係、あるいは本部の留学生課に。)



広島大学短期交換留学プログラムによる協定大学一覧(平成10年度派遣予定)

国名

大学名

対象学生

協定人数

授業料免除

アメリカ合衆国 フロリダ州立大学 学部生

3

メリーランド大学 学部生

3

ミネソタ大学 学部生

5

カナダ カルガリー大学 学部生

5

オーストラリア ニューイングランド大学 学部生

5

マレーシア マラヤ大学 学部生、大学院生

3

※ドイツ チュービンゲン大学 学部生、大学院生

2

※オランダ アムステルダム大学 学部生、大学院生

3

※スウェーデン リンシューピン大学 学部生、大学院生

2

※連合王国 リーズメトロポリタン大学 学部生、大学院生

2

※印については、現在準備中の大学


「ハノーファ医科大学短期留学を終えて」を読む
広大フォーラム29期2号 目次に戻る